外では優しいのに家では不機嫌な夫。「フキハラ」には声をあげて、夫婦で話し合おう。

彼が不機嫌なのは私のせい…?と、自分を責めないで。声をあげて、話し合ってみませんか。 #いい夫婦の日
夫と息子と娘と。(撮影:佐藤健介)
夫と息子と娘と。(撮影:佐藤健介)
伊是名夏子

11月22日はいい夫婦の日。私は今のパートナーと付き合いはじめて16年、結婚式を挙げて11年が経ちました。キュンキュン、ラブラブ楽しいこともたくさんあったし、喧嘩が続くこともありました。そして実を言うと、子どもが生まれてからのこの7年は、とても大変でした。なぜなら、彼の不機嫌さのハラスメント、名付けて「フキハラ」に振り回されていたからです。

同じようなことに苦しむ人がいるかもしれない、と思い、彼の「フキハラ」とそれに対して夫婦がどう話し合い、改善してきたかを綴りたいと思います。

いつも嫌な顔をされ、だんだんこちらも口を閉ざしてしまう

彼の「フキハラ」はこういう具合でした。

朝起きると開口一番「疲れた、眠れなかった」と体調が悪いアピールを始める。私が高いところにある届かない物をとってほしいとお願いすると「今やらなきゃだめ?」と嫌な顔をする。

お願いしていたごみ捨てを忘れてしまい、私が怒ると「仕方ないじゃん、忘れていたんだから」と開き直る。家族で「〇〇に行こう!」と提案しても、一言目に「遠い」と言う。私がお願いする理由や、出かけた先でどんな楽しいことがあるかを追加で説明したら、しぶしぶ動いて、やってくれます。しかし、気持ちを切り替えてお出かけをしても、道を間違えたり、渋滞に巻き込まれたりすると「もう二度と車で来たくない」と言います。彼のフキハラが、生活のあちらこちらでありました。

ささいなことばかりですが、何かあるたびに嫌な顔をされると、気持ちがよくありません。私はお願いするのが億劫になり、時には怖くもなってきました。話しかけようとしても、「どうせまた聞かないだろうし、疲れたアピールをするのだろうな」と思うと、コミュニケーションをとるのすら面倒になってしまったのです。深い話や相談事はしたいとは思わなくなってしまいました。そう、どんどん亀裂が深まっていったのです。

イメージ写真
イメージ写真
Mimi Van Praagh via Getty Images

彼が不機嫌なのは、私のせい? 自分を責めた日々

彼のフキハラが顕著になったのは7年前、香川県から東京に転勤してからでした。ちょうど二人目の子どもができ、私も余裕がなくなった時です。はじめのうちは「彼は仕事が大変だから仕方ない、疲れているのだから仕方ない」と私も怒らずにいることができました。でも私も疲れてイライラし、喧嘩をすることも…。話し合って改善を求めた時もありましたが、「お互いに忙しいし、疲れているから仕方ないじゃん」と言われ、終わってしまうことばかりでした。

このままではいけない、と思っていた私は、友だちや知人に相談をしました。「夫婦ではよくあることだよ。うちも同じだよ。放っておけばいいよ」と軽く流されることがよくありました。また、私がヒートアップして彼の愚痴を話すと「言い過ぎだよ、彼も頑張っていると思うよ」「あなたはちゃんと彼に優しくしてる?」と言われることもあったのです。

パートナーシップに関する本を読むと、「夫婦は鏡なのだから、まずはあなたが気持ちを切り替え、笑っていると彼も変わるでしょう」と言うものばかり。私も楽しい提案をしたり、彼の嫌なところにはなるべく目を向けないようにしたりと、いろいろ試してみました。でも結局彼の不機嫌具合は変わらず、私は疲れるばかりでした。

イメージ
イメージ
Ponomariova_Maria via Getty Images

これはハラスメント。泣きながら夫にぶつけてみた

そして最近、私はやっと気付いたのです!これは家庭内のハラスメントだと。これはやっている本人に自覚がないケースも多いと聞きます。被害を受けている方も、「これくらいは仕方がない」「我慢できる」、と思いがちです。

さらには、上に書いたように、友人のたしなめや本の知識などで、「この関係がよくないのは私のせいだ」と思ってしまうこともあります。まわりから「よくあることだから」と言われ続け、ハラスメントがある状態を当たり前のものだと感じてしまうのも怖いところです。

そしてある日ついに私は泣きながら彼に伝えました。

「不機嫌な態度をされることが苦しく、怖いと感じることもある。そして、この関係はハラスメントの加害者と被害者と同じだ」と。

彼も初めて自覚したようで、びっくりしていましたが、まず朝の疲れたアピールはなくなりました。お願いしたことを忘れたら謝ってくれ、ドライブ中に道を間違えても怒ることはなくなりました。安心できる関係が少しずつ戻ってきました。彼にもともとハラスメントに関する知識があったのも、言動の改善につながったと思います。本当によかったです。

家族4人で。(撮影:佐藤健介)
家族4人で。(撮影:佐藤健介)
伊是名夏子

家庭内のハラスメントは、家庭内暴力と同じで、加害者が外で見せる顔と、内で見せる顔が違うので、第三者やまわりは気づきにくいのがやっかいなところ。誰も問題に気づかないままに、深刻になっていくことも多いでしょう。私の場合、彼の機嫌がよくて優しい時もあったので、彼が不機嫌な時には「本当はいい人だけれど、今は疲れのせいだから仕方ない」と思いやりのような、現実逃避のような気持ちを持ってしまっていました。でも彼の機嫌に左右されるのはおかしいし、苦しいですよね。

我慢せず、おかしい、と声をあげていこう

職場にも、家庭にも、フキハラ男性はいるのではないでしょうか?もちろん女性がフキハラをしてしまうこともあると思います。

本来ハラスメントに性別は関係ありませんが、男性による「フキハラ」は女性にとって深刻だと感じます。なぜ私がそう思うかというと、男性が上下関係を作っている気はなくても、男性の方が女性よりも声が低かったり、体も大きかったりということが、威圧的に感じられることがあるからです。

もしもフキハラに悩む人がいたら、「『小さなことだから仕方がない』『よくあることだから仕方がない』と、我慢し続けないで」と伝えたいです。この状態はおかしいと声を上げ、フキハラの認識を広めていきましょう。一見、パートナーの愚痴を話しているだけに見える友だちにも、「それはもしかしたらフキハラじゃない?」と伝えてみませんか?私もずっと気づかなかったので、なかなか難しいこともありますが…。

思い切って一言口に出すことが、いいパートナーシップを目指すための第一歩につながるかもしれません。

注目記事