自然エネルギーの大量導入を可能にする固定価格買取制度の改善を!

一つ一つステップを踏んで進めていくならば、技術大国日本において、変動する自然エネルギーを制御しながら大量導入してくことは、必ず実現できるとWWFは考えます。

2014年9月に、九州電力をはじめとする電力会社5社が、自然エネルギーによる発電設備の接続申し込みを保留すると発表した問題を受け、資源エネルギー庁の委員会では、その検証が行なわれてきました。その中で、各電力会社は2014年12月、自然エネルギーによる発電設備の接続可能量の算定結果を発表。この内容についてWWFジャパンは声明を発表し、試算内容の注意点を指摘するとともに、この算定結果に基づいた固定価格買取制度の改善のあり方について、新たな提案を行ないました。

九州電力による「接続申し込み保留」問題

「固定価格買取制度」は、国内で自然エネルギー(再生可能エネルギー)を普及させるため、風力や太陽光などによる発電電力量を、採算の合う「固定価格」で20年間、電力会社に買い取ることを義務付けた制度です。

この制度が2012年7月に施行されて以来、日本でも太陽光発電を中心に、自然エネルギーが急速な伸びを見せてきました。

ところが2014年9月、九州電力をはじめとする電力会社5社が、「電力の需給バランスが崩れる可能性が生じた」ことを理由に、自然エネルギーによる発電設備の接続申し込みを保留すると発表。大きな問題となりました。

自然エネルギーの普及には、発電した電気を送電網に接続して、消費者まで届けられる道(系統)を確保することが欠かせません。

ところが、その系統は、9つの大手電力会社がそれぞれ所有しているため、自然エネルギーを含めた新規の発電事業者は、その電力会社に接続を申し込む必要があります。

そして、もし接続が認められないとなれば、自然エネルギー発電設備そのものが成り立たないことになります。

電力各社による接続可能量の検証

この問題を受け、経済産業省の新エネルギー小委員会の下に設けられた「系統ワーキンググループ(以下、系統WG)」において、それぞれの電力会社が、接続可能量の検証に取り組むことになりました。

そして2014年12月、7つの電力会社が、自然エネルギーによる発電設備の接続可能量を発表。しかし、そこで示された可能量は、いずれも現在申込みがある発電設備量に比べて大幅に小さいか、新規申し込みの余地がほとんどないものでした。

また、この算定された接続可能量に基づき、資源エネルギー庁・総合資源エネルギー調査会の新エネルギー小委員会では、固定価格買取制度の運用ルールの一部を改正が議論されてきました。

しかしWWFジャパンは、今回電力会社が発表した接続可能量のみを基に、固定価格買取制度を改正することには、大きな懸念を持っています。

理由は、WWFジャパンが2014年11月に発表した、九州電力管内における再生可能エネルギー導入についてのシミュレーションの結果、揚水発電や地域間連系線などを活用すれば、現状の系統システムでも、大量の再生可能エネルギーの導入が可能であることが、明らかになったためです。

そこで今回、WWFは、電力各社が発表した接続可能量について分析し、その懸念点を示すとともに、固定価格買取制度の改正の方向性について、声明を発表しました。

そのポイントは、以下の通りです。

(1)電力会社の接続可能量の試算についての注意点

- 地域間連系線がほとんど使えない前提の試算であるため、接続可能量が低く見積もられている

- 原発に関する非現実的な想定が自然エネルギーの導入量の制約となっていること

- 自然エネルギーの発電出力が過大に見積もられる試算であること

(2)固定価格買取制度の改善および今後の自然エネルギー導入へ向けたWWF提案

- 電力会社による出力抑制の指令が、相応な理由によるものかを監視する仕組みの強化

- 接続可能量の定期的な見直しを実施すること

- 合理的な出力抑制を可能とするシステムの構築

- 各発電設備に蓄電池などを推奨する前に、コスト最適性を考えた手法を採用していくべき

今回の系統WGにおける電力会社の接続可能量の検証と発表は、まだ課題が多いとはいえ、従来では考えられない画期的な取り組みであったとWWFジャパンは評価しています。

今回の検討のように、一つ一つステップを踏んで進めていくならば、技術大国日本において、変動する自然エネルギーを制御しながら大量導入してくことは、必ず実現できるとWWFは考えます。

声明の内容について、くわしくは下記をご覧ください。

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