地震直後も訪問、ネパールでの植林活動/自由学園が四半世紀にわたる交流

四半世紀にわたり、ネパールで植林活動を続けている学校法人自由学園。震災後の2015 年には同国を地震が襲ったが、計20人が例年と変わらず現地を訪れた。

森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化の話題を幅広く発信しています。2月号では「編集部発」の欄で、ネパールでの植林活動を続けている学校法人自由学園(東京都東久留米市)を紹介しました。

四半世紀にわたり、ネパールで植林活動を続けている学校法人自由学園(東京都東久留米市)。昨年の2015 年には同国をマグニチュード7. 8 の地震が襲ったため実施が危ぶまれたが、「こんな時こそ」と最高学部(大学部)の学生17 人と教員3人の計20 人が例年と変わらず現地を訪れた。

団長を務めた専任教員の神(じん)明久さん(48)によると、自由学園は高等部の授業の中で1950 年以来、埼玉県飯能市などにおける植林活動を続けてきた。その経験を生かして海外でも活動できないかと考え、卒業生の縁を通してネパールを対象地に選び、1990 年に植林を始めた。

●ある場所の植林前(上、2004年)と植林後(下、2010年)の比較

持続的な利用のために

対象地は、首都カトマンズから東へ約30km、標高1500mを越す高地にあるカブレ地区だ。木々は燃料などに利用され、当初は荒廃した土地も目立った。これまでに5カ所の荒れ地に植林し、森がよみがえった場所もある。政府が、国有林の管理を地元に任せつつ、そこの人々が持続的に利用する仕組み(コミュニティ林業)を導入しようとした時期と重なり、地区営林署、村人の森林管理グループ、地元の学校に自由学園も加わった4者で植林を進める形が整ったという。

自由学園では例年4月に派遣メンバーを決め、5~6月は毎週のように会議を開いて準備を進める。7月中〜下旬頃に約3週間のネパールワークキャンプを実施し、植林の他、学校への訪問授業などで現地との交流を続けてきた。

●木のない斜面での植林作業

2015 年には新メンバーが決まったばかりの4月25 日に地震が起こった。学生リーダーを務めた本田光平さん(21)によると、現地の状況はなかなかつかめなかったが、情報収集の上で安全性は確保できると学園が判断し、実施することにした。行ってみるとカブレ地区にも倒壊した建物はあったが、日常生活はほぼ普通に営まれていた。支援のために日本で集めた募金から、いつも訪ねている学校へ設備の補修費を寄付し、子ども一人ずつにはノートとペンを贈った。

7月12 ~ 30 日の滞在中は、9日間に及ぶ植林を実施。2カ所に約2000 本の苗木を植え、1.7kg の種子もまいた。3回目の参加だった本田さんは「これまでにも植えた場所だが、苗木の活着率は良くない。試験的な取り組みも含めて、森を増やす方法を考えながら進めている。次の新しい植林予定地を視察する機会もあった」と説明する。

「また来てくれた」

●苗木を1本ずつ植えていく=写真はいずれも自由学園提供

訪問授業は4校で7日間にわたって実施した。学生たちは科学、体操、植林、芸術文化の4グループに分かれて、英語とネパール語でコミュニケーションをとりながら、実験や実技を中心に授業を進めた。2度目の参加となった櫻井真帆さん(19)は「続けて行くと、子どもたちは覚えていて『また来てくれた』と声をかけてくる。私たちが行けるのは1年のうちの3週間だけ。村の人たちと一緒に森を育てていくためにも、いろんな交流を重ねる意味は大きい」と言う。

ネパールワークキャンプは、第31 回(2015 年度)東京キワニスクラブ青少年教育賞最優秀賞を受けた。今後も最高学部の取り組みとして続ける予定だ。団長の神さんは「村の人たちも私たちも、植林によって土地が変わっていくことをお互いに学び合っている。今では、このワークキャンプに参加したいからと進学してくる学生もいます」と話している。

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