Netflix従業員ら、番組内のトランスジェンダーへの差別的発言に抗議。解雇や停職にも発展

問題の発言があったのは、デイヴ・シャペル氏が出演するコメディ番組。Netflix従業員によるボイコットも計画されています

Netflixが配信しているコメディ番組で、出演者がトランスジェンダーの人たちに対する差別的な発言をし、人権団体や従業員が抗議する事態となっている。

問題を巡っては、従業員の解雇や停職処分にも発展している。

デイヴ・シャペル氏
デイヴ・シャペル氏
via Associated Press

トランスジェンダーの人たちへのバッシング

問題の発言があったのは、コメディアンのデイヴ・シャペル氏が出演する「デイヴ・シャペルのこれでお開き」。10月に配信スタートしたシャペル氏のスタンダップコメディだ。

約1時間10分の番組の中で、シャペル氏はLGBTQの当事者を侮辱するような発言を繰り返している。

特に大きな批判を招いているのがトランスジェンダーの人たちに対するバッシングで、トランスジェンダー女性の容姿を馬鹿にするようなコメントのほか、「人は性別を変えられない」という趣旨の発言をしたJ.K.ローリング氏を擁護した。

他にも、トランスジェンダー女性のケイトリン・ジェンナー氏がウーマン・オブ・ザ・イヤーを受賞したことについて「生理を経験したこともないのに凄くないか」と揶揄している。

番組はトランスコミュニティを危険にさらすと批判

番組が配信された後、クィアでトランスジェンダーであることを公表しているNetflixのシニアソフトウェアエンジニア、テラ・フィールド氏はSNSで番組を批判。

「シャペル氏はトランスジェンダーコミュニティとトランスジェンダーであることの正当性を攻撃している」と憤りをつづった。

フィールド氏は、スレッド投稿の中で「『デイヴ・シャペルのこれでお開き』のようなコンテンツが生み出す偏見が、トランスコミュニティ、特に黒人のトランス女性を危険にさらす」とも指摘している。

黒人のLGBTQ当事者のための人権団体「アメリカ黒人正義連合」も、配信停止を求める声明を発表

「アメリカでは2021年、トランスジェンダーの人たちがかつてないほど殺害されており、そのほとんどが黒人のトランスジェンダーです。Netflixは現状をもっとよく知るべきです。トランス嫌悪は暴力を生む」と述べ、『デイヴ・シャペルのこれでお開き』の配信中止と、トランスジェンダーのコミュニティへの謝罪を求めた。

従業員の解雇や停職処分も

フィールド氏の投稿は拡散し、シャペル氏の発言に注目が集まった一方で、投稿後にフィールド氏と他の2人の従業員が停職処分を受けた。

ただ、Netflixは停職理由はTwitterでの抗議ではなく、フィールド氏らが招かれなかった管理職のミーティングに参加したことだと発表し、The Vergeに「ツイートが原因で停職したというのは事実ではありません」「私たちは、従業員が公に反対する権利を支持します」と述べている。

その後、フィールド氏らの停職処分は解かれたものの、新たにトランスジェンダー従業員リソースグループのリーダーだった従業員が解雇された

The Vergeによると、解雇理由は会社の機密情報を社外流出させたことで、流出した内部資料には、シャペル氏の番組だけでなく、大ヒットドラマ「イカゲーム」などのコンテンツ価値を伝える情報が含まれていた。このコンテンツ価値について、ブルームバーグが内部資料による情報として報じている。

Netflixは解雇について「従業員の行動は、Netflixに失望して傷ついたことが動機になっている可能性があると理解していますが、信頼と透明性は私たちの会社の中核です」という声明を発表している。

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職場ボイコットを計画

「クイア・アイ」など、LGBTQコミュニティをサポートするコンテンツを多数配信してきたNetflixだが、今回の件についてはシャペル氏の番組を擁護しており、今のところ配信中止の意向は示していない。

Varietyによると、Netflixのテッド・サランドス共同最高経営責任者は、従業員宛のメールの中で「我々は、コンテンツが実際の危険には結びつくことはないと確信している」と述べ、配信を続ける意思を示している。

一方、Netflixのトランスジェンダー当事者や従業員とアライたちは、抗議のための職場ボイコットを10月20日に計画しているという

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