これからの経済
2019年03月12日 09時10分 JST

春、出会いの季節になる前に。人脈を広げるための「勝利の方程式」を知っておきたい

名刺⇨共有⇨ホッピングの「勝利の方程式」で人脈を広げる

入社や人事異動など、社会人にとっても春は新しい出会いのある季節だ。

このタイミングに「人脈を広げよう」と一念発起して名刺交換に勤しむものの、貰った名刺はファイルに綴じてそのまま陽の目を見ない...そんな経験はないだろうか。

Getty Images
イメージ写真

人脈を効果的に広げられる「勝利の方程式」はないものか...研究データと専門家の提言から探ることにした。

■ファイルにしまった名刺を生かせ

クラウド名刺管理サービスを提供している「Sansan」は、貰ったまま名刺ファイルで眠っている名刺に注目。「冬眠人脈」と定義した。

この冬眠人脈を社内の同僚と共有した場合とそうでない場合で、仕事の成果にどの程度差が生じるのかを調べた。

その結果、名刺を共有した場合、一ヶ月の新しいアポイントの件数は1.1倍、その後の成約率も1.3倍上昇したという。

さらに、受注までの期間も短くなるなどの結果が出たとして、「生産性が2.6倍高くなった」と結論づけている。

自分が受け取った名刺を、みすみす社内のライバルに渡すのには抵抗があるかもしれないが、その分自分が恩恵を受けることもあるということだ。

■「使える人脈」を手にするためには

名刺交換をしたり、仲間とシェアするなどして手にした大量の名刺。

しかし、そこからどのように意中の相手と関係を深めていけばいいのか。

投資銀行勤務を経て、ネットワークについて研究をしている法政大学経営大学院の高田朝子教授を訪ねた。

Fumiya Takahashi
法政大学経営大学院の高田朝子教授

■「知り合い」と「人脈」のカベ

「日本人って『人脈』という言葉を嫌がる人が多いと思うんです」と高田教授。

言葉に付いてまわるビジネスライクなイメージから、「何かしてもらったからお返しする」というプレッシャーを感じ易いという。

しかしここに、「ただの知り合い」と「人脈と呼べる人間」の違いがあるという。高田教授は「自分が何かをしてあげたら、何か帰ってくるだろう、と思える相手が人脈。『一肌脱げる』相手とも言えます。長い時間軸で、『今は受け取ってばかりですが将来必ず恩を返します』という関係も当てはまると思います」と話す。

■「オウムの寿命50年」でも相手に刺さる

名刺に顔写真を載せてみたり、会った日の晩にお礼のメールを送ってみたり...こうした細かいアピールよりも、相手にいかに上手く自分の「価値」を伝えられるかが信頼を得る鍵だという。

「食事に誘われていっても、『仲良くしたいです!』という話に終始されても困るだけではないでしょうか。相手に求めるだけではなく、自分に利用価値があることを提示する必要があります」と高田教授。

といっても、常にビジネスの話や自己アピールをする必要はない。「この前、人に会ったら『オウムって50年生きるんですよ。もう自分の年じゃ飼えませんね、先に死ぬから』と言われて異様に記憶に残りました。利益に繋がる話じゃなくても良いんです。自分の感じたことを相手に分け与えられる巧さが大事だと思います」という。

Fumiya Takahashi
無理に利益につながる話をしなくても良いという

■「ホッピング型」の時代がくる

意中の相手を食事に誘えなくても、自分を意識してもらう方法がある。それが「ホッピング型」と呼ばれるコミュニケーション法だ。

例えば昼休みの短い時間を利用して、会いたい相手の仕事場を訪ねる。大義名分は不要だ。

「近くに来たので、挨拶に来ました!」「急に顔が浮かんだので」などと切り出し、あとは近況報告でOK。その時間、1人あたりものの5分程度という短さだ。

これを、複数の相手にどんどん仕掛ける。短時間で転々と場所を移動することから「ホッピング型」だ。

高田教授は「こちらは自己アピールはいりません。会うだけでも自分の情報が相手の頭の中で強化されます。仕事のパートナーを誰にしようか考えたとき、浮かんでくるのは記憶にある人です。名刺の束からは出てきません」と解説する。

かつての営業担当者はこうした手法を好まなかった。がっつり夜遅くまで飲みにいく、飲みニケーションと呼ばれるヤツが主流だった。

実際、飲みの席では、仕事中には見えない相手の一面を知ることができるなどプラスの面もある。

Getty Images
イメージ写真。こんな感じでぴょんぴょんと挨拶に...

しかし、高田教授は、古いタイプのコミュニケーションも「ホッピング型」への移行を余儀なくされると考えている。働き方改革で労働時間が短縮され、男性の家事や育児への参加も進んでいくと見られているからだ。

■蘇る新人記者時代のトラウマ

しかし、ただ相手の元へ訪ねていればそれで良いのだろうか。

ここまで聞いて、私は自分が駆け出しの記者だったころのトラウマが蘇ってきた。ある警察幹部と懇意になりたくて、警察署を頻繁に訪れた。

だが、間が悪かったのか顔を出す度に態度が硬くなっていき、終いには面会すら許されないようになってしまった。振り返れば、ただ迷惑をかけただけだった。

なぜこうなったのか、高田教授に聞いた。

「上手に相手に同期できるか。要は観察力が大事なんです。子どもと同じで、相手が嫌なことはしない。そのためには相手がどういう状態なのか見極めることです。例えば、レストランの予約を取る時も、ランチタイムに電話しても店が忙しくて出てくれないでしょう。相手を観察するには想像力がセットです」とのことだった。

相手の業務形態や忙しい時間帯を予習しておき、戦略的に顔出しをする必要がありそうだ。

■殻を破る心の準備を

特にこれといった理由もないのに、他社の人間を訪ねるのにはやや抵抗がある。しかし高田教授は、殻を破ることで名刺の価値が大きく変えられるという。

「やはり名刺から一歩進めるにはフットワークの軽さが鍵。対面で話すのが一番ですが、無理でも何かのきっかけでメールを送るだけで違います。逆に言えば『私は貝になりたい』というスタンスでは辛いでしょう。向こうから何かをしてくれると思ったら大間違いです」

春は新しい出会いのある季節だ。人脈を広げたいと思うのならば、まずは自分の働き方にあった開拓法を考え、意識を変えておく必要があるのかもしれない。