「小学校のときはスカートが嫌いだった」。冨永愛さんが気づいた、自らを縛る”当たり前のこと”

冨永愛さん、が語る「みんなちがって、みんないい」。絵本「女の子はなんでもできる!」を翻訳した冨永愛さんが絵本に込めた思いを語りました。
冨永愛さん
冨永愛さん
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

モデルの冨永愛さんは、小学校のときはスカートが嫌いだった。なぜ中学に入るとスカートを履かなければいけないのか、と思ってきたという。
「こういった不思議に思っていない”当たり前とされる”ことに立ち止まって考えたい」と語る。

そう改めて思うのは、イギリスの「女の子はなんでもできる!」(早川書房)を自身の手で翻訳したからだ。12月3日に出版された。

この本は、女の子のためだけではない。人が気づいていない「思い込み」に向かい合うためのものだ、という。「男の子、お父さん、お母さんをはじめ、いろいろな人がハッとする言葉がちりばめられている」と冨永さんは話す。

「女の子はなんでもできる!」
「女の子はなんでもできる!」
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

自身も翻訳しながら、疑問に思っていなかったことに気づいた。女の子はスカートで、長い髪の毛ーー。そんな風になんとなく思っていませんか、と呼びかける。

例えば、泥んこになっちゃだめだよ、といってしまうことも考えることの一つだ。本の中に「プンプンに臭くなってもいい」といった言葉がある。「おんなのこは、どろだらけになって、プンプンに、くさ〜くなったり」という箇所だ。

「『こうあるべき』について、考えてみるきっかけになればいいと思います。よく考えると偏見かもしれないし、『なんだってあなたはできるよ』ということに制限をかけていないか考えたい。お母さんも、お父さんもそんな『偏見』を持ってしまっていたな、言ってしまっていたなという気づきになるといいなと思う」と話す。

ある文章が本の中にある。
「み〜んな ちがって み〜んないい」

詩人・金子みすずを彷彿とさせる言葉。
聞いてみると、冨永さんはこう言った。「みんな違って、みんないいーー。原本(の直訳)ではないのですが、(原文を補足する形で)金子みすずさんが好きでこの言葉を入れたかった」。「金子みすずさんの詩の中には、『自分は自分でいいじゃないか』『自分がどこにも属せないような、特別な存在でいいんじゃないか』といった問題提起を感じたのです。その金子みすずさんの詩がこの本にすごくあっていた」という。

その詩が「わたしと小鳥とすず」とだ。
わたしが両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、
地面(じべた)をはやくは走れない。

わたしがからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴るすずはわたしのように
たくさんのうたは知らないよ。

すずと、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。
(抜粋)

この詩には10年ほど前に出会ったという。
「(自分が)人と変わっている自分に悩んでいたのかなと思うこともあるけれど、心に響きました」。

Jun Tsuboike / HuffPost Japan

絵本には、自分の中で育まれてきた”自らの言葉”にこだわった。
「わたしが生きてきた人生の言葉しか出せない」と冨永さん。

冨永さん自身は、日本から海外に活躍の場を移して初めて、これまで自らを縛っていた「呪縛」に気づいたという。「海外では、肌の色が違うし、ジェンダーの問題にも直面しました」。自分とは何か、当たり前から離れて自分を見つめる機会だった。

今、日本の子供たちの自己肯定感が低いことを心配する。
「私のインスタグラムでも『自分を好きになるにはどうしたらいいか』『自分が自信を持つにはどうしたらいいか』と書いている子供が多い。日本のティーンエイジャーたちは、「自分なんて」という思いが強いように思います。それはちょっと問題だなと。これは絵本なので小さい子供むけですが、自分自身が自信を持てるような「環境」作りをしていく、マインド作りをしていくことが大事だと思っています」と話す。

Jun Tsuboike / HuffPost Japan

また、人々のマインドセットを変えるだけではなく、女性がやりたいことを実現するためには、社会的な環境整備も必要だと指摘する。

女性が自然に社会進出していくことを待つだけではなくて、女性議員の増加などジェンダーギャップを解消するためには、待機児童問題なども全てひっくるめて、社会整備もやらなければ、と語る。

「小さい子供たちがこういう本で気づくだけではなく、それに付随する社会の仕組みを考え直さないといけないと思う」。

「女の子はなんでもできる!」は、絵本の形をしているが、自分たちの心を縛っているものから解き放たれるための最初の扉となるような存在になるのかもしれない。

【ハフポスト日本版・井上未雪 / 写真・坪池順】

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