NFT(非代替性トークン)とは?大坂なおみ選手と姉のまりさんも、NFT作品の販売に参入。

大阪なおみ選手も参入したNFTのデジタルアート作品。デジタル資産NFTとは?
オンラインショッピングサービスで、NFTのデジタルアート作品を販売する大坂姉妹。
オンラインショッピングサービスで、NFTのデジタルアート作品を販売する大坂姉妹。
Basic.Spaceより

大坂なおみ選手が、姉のまりさんと共にデジタルアート作品を販売している。全6作品のうち5作品が、オークション形式になっており、現時点で約13.5万ドル(約1460万円)の値が付けられているものもある。

6つのデジタルアート作品は、いずれも姉のまりさんが大坂選手を描いたもの。

6作品のうち5つの作品は、4月23日まで行われるオークション形式で販売される。残りの1作品は、1口5ドル(約550円)でクジ引きに参加し、クジで当選した人が購入できる。さらに、大坂選手とまりさんのサインなどがついたナイキの製品もつくという。

オンラインショッピングサービス「Basic.Space」上で4月23日まで限定販売されている。

収益は、より多くの女の子がスポーツに参加できるよう支援するプログラム「プレー・アカデミー」に寄付される。このプログラムは、大坂選手がナイキとローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団が連携して支援するものだ。



NFT(非代替性トークン)とは?

今回のアート作品は、NFT(非代替性トークン)というブロックチェーン技術を使って、所有者の権利を明確にする。今にわかに注目を集めるNFTとは何か。

NFTで注目されたものの一つは、ツイッター創業者の最初のツイートが販売されたことだ。2021年3月、ジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)のツイッターでの初投稿 “just setting up my twttr” (Twitterをたった今、設定した) が291万ドル(約3億1500万円)で落札された。

高額な落札額と、ツイッターの投稿が販売されたことに注目が集まった。

約3億円で販売されたこのツイートは、販売されてもなお、誰でもいつでもみることができる。しかし、他のツイッター投稿と違うのは、所有者がいるということだ。

NFTは、例えば、デジタルアート作品、動画、音楽からツイッターへの投稿まであらゆる種類のデジタルコンテンツが対象となりうる。

ブロックチェーン技術を使って、誰のものか明らかにするため「署名」をつける。所有者が誰かわかるNFTにより、複製できるデジタル上のコンテンツでも、固有の価値を作り、販売することができるようになった。

NFTは、これまでにも技術的に存在していたものの、2021年2月に潮目が変わった。

NBAトップショットで取引されるデジタルトレーディングカード
NBAトップショットで取引されるデジタルトレーディングカード
NBAトップショット

2月22日、プロバスケットボールのスーパースター、レブロン・ジェームズ選手がスラムダンクを決めるビデオクリップが約20万8000ドル(約2300万円)で売られたのだ。これは、アメリカ・プロバスケットボールNBAのトッププレーヤーの名プレーシーンを、NFTを使ってトレーディングカードのように販売する「NBAトップショット」で売買された。同サイトは、80万人以上の利用者がいるという。

八村塁選手のビデオクリップもある。

3月11日には、老舗オークションハウスのクリスティーズもNFTによるデジタルアートのオークションに初めて乗り出した。

デジタルアート作家Beeple(ビープル)の作品“Everydays:The First 5000 Days”は、約6930万ドル(約75億円)もの高値で落札された。この作品は、ツイッターで毎日共有した作品5000点をまとめたものだ。

オークションハウス「クリスティーズ」で販売された初のNFT作品
オークションハウス「クリスティーズ」で販売された初のNFT作品
オークションハウス「クリスティーズ」で販売された初のNFT作品

NFTの将来性は?

しかし、ツイッターの投稿内容もデジタルアート作品も、ネット上で、誰でもみられる。こうした公のデジタルコンテンツに、値段がつく。何が購入者のモチベーションになっているのだろうか。

NFTに詳しい京都大学大学院特任准教授の山本康正氏は、「人々の所有欲を満たすためのものだ」と話す。

例えば、理論上は、フォートナイトなどの仮想空間に、デジタルアート作品を「自分の所有物」として「正当な形」で展示することができる。

「この資産は私のものだ」ということを示すための証なのだという。

一連の高額取引が続く”熱狂”が一時的なものか、これからも続くのかについては、「消費者の反応次第だ」とする。欲しいと思う人が存在し続けることが前提だ。

NFTについて語る、京都大学大学院特任准教授の山本康正氏=2021年4月、東京都内
NFTについて語る、京都大学大学院特任准教授の山本康正氏=2021年4月、東京都内
山本康正氏

先の例のNBAトップショットは、2021年2月には売り上げが250億円、3月には400億円を超えており、熱狂的な現象に発展している。このトップショットは、野球のトレーディングカードのようなものだ。伝説的なプレイ場面をNFTを使ってトレーディングカードのように販売し、転売もできる。

山本氏は、熱狂的な状態の中で、高値づかみをするリスクがあると指摘する。
また、金融庁や消費者庁などに投機対象とみなされて、NFT市場が一気に縮小する可能性も否定できないという。

ただ、NFTの意義は大きいとする。
「NFTによってデジタル作品が『正統性』や『希少性』を持てるようになりました。NFTで、『唯一の本物』が証明され、コピーと区別できるのです」。


広がる可能性

「音楽などファンビジネスの領域でも、可能性は広がります。今は、YouTubeなどプラットフォームでデジタルコンテンツを無料で見ることが可能ですが、NFTで所有者としてのステータスを購入する仕組みを作ることができます。

デジタル署名を備えたNFTは唯一の存在であるため、NFTを買った人々に対してのみ、限定版のコンテンツやコンサートの限定席を提供するといったサービスも可能になります。

現在のデジタル資産は、ほとんどが複製可能ですが、NFTにより固有のデジタル署名を持ち『唯一無二』がわかる方法が確立されたわけですから、新しい収益源を生む可能性が広がったのは確かです」
【ハフポスト日本版・井上未雪】

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