NORADがサンタ追跡65周年。「間違い電話がきっかけ」の伝説は一部ウソだった

間違い電話は殺到していなかった。「ユーモアあふれる」とされた大佐の反応も、割とマジレスでした。
コロラド州コロラド・スプリングス近くのピーターソン空軍基地にあるNORADのサンタ追跡作戦センターでは、ボランティアが電話を受けたり、電子メールに返信したりしている。2010年12月24日撮影
コロラド州コロラド・スプリングス近くのピーターソン空軍基地にあるNORADのサンタ追跡作戦センターでは、ボランティアが電話を受けたり、電子メールに返信したりしている。2010年12月24日撮影
ASSOCIATED PRESS

アメリカ軍とカナダ軍が共同運営する北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD:ノーラッド)は12月24日午後6時(日本時間)から、公式サイト「ノーラッド・トラックス・サンタ」で、毎年恒例のサンタクロースの追跡をする。

サイトを見れば、何十億ものプレゼントが、どのようにして遠くまで運ばれるのか、そしてサンタが次にどの街に向かうのかを知ることができるという。

2020年は、最初のサンタ追跡から65年目を迎える。そもそもNORADとは何なのか?そしてなぜ、サンタ追跡を続けているのか?

■なぜNORADがサンタを追跡するの?

2020年の「ノーラッド・トラックス・サンタ」の公式サイト
2020年の「ノーラッド・トラックス・サンタ」の公式サイト
noradsanta.org

NORADは爆撃機や核ミサイルなどの航空攻撃に対して、北米の防衛を行っている軍事組織だ。まじめでお堅いイメージのあるNORADだが、トナカイと空飛ぶそりを追いかける伝統は、実は1955年から続いている由緒あるものだ。当時のこんなエピソードが伝えられている。

1955年、アメリカのコロラド・スプリングスに拠点を置く通販企業、シアーズ・ローバックが、「サンタに電話しよう」と広告を出した。しかし、その広告に掲載された電話番号は間違ったもので、サンタにつながるはずの電話番号は、NORADの前身機関である大陸防空司令部(CONAD)につながるものだった。

しかも、その番号はソ連(当時)から爆撃機が飛来した場合に鳴るような、極秘「ホットライン」作戦の番号。電話に出たのは司令長官、ハリー・シャウプ大佐だった。

初めてサンタへの電話が鳴ったときの司令部の張り詰めた状況をシャウプ大佐の娘が振り返っている。ファクトチェックサイト「Snopes」は以下のように伝えている。

<12月のある朝、危機の場合にのみ鳴るはずのCONAD内の極秘回線の1つに着信した。シャウプ大佐は最悪の事態を予想していたに違いなかった。

しかし、子どもの声が「あなたはサンタクロースですか?」と尋ねた。 シャウプ大佐の娘であるテリー・ヴァン・クーレンは、1955年のその日の伝説を思い出し、「お父さんはかなりイライラしていた」と語った。

サンタに関する電話はこれ終わりではなかった。その日、地元の新聞は、サンタが「昼夜を問わずいつでも個人的にお話しします」と広告が出ていた。 しかし、広告の電話番号は1桁ずれていた。発信者はサンタと接続する代わりに、ソ連が攻撃してきた場合に鳴る回線にダイヤルインしていた。

まもなく電話が止まらなくなり、諦めたシャウプ大佐は近くの空軍兵に「サンタのふりをしろ」と電話に出るように言った。>

サンタ追跡の公式サイトによると、シャウプ大佐はこのとき、サンタが北極点から南に向かっている兆候がないかレーダーをチェックするようにスタッフに指示したという。

こうして伝統が生まれ、1958年にNORADが結成されて以来、NORADは毎年12月24日にサンタの位置を世界中の何百万人もの子どもと家族に忠実に報告してきたのだという。

■という話だったが、近年の調査では部分的にウソだったと判明

すごくよくできた話だが、近年の調査では部分的にウソであることが判明している。

ギズモードの2014年12月23日の記事によると、実際には電話番号が間違って印刷されたわけではなく、ある子供が電話番号を間違えただけで、電話が殺到した形跡はなかった。

また、電話がかかってきたのも12月ではなく、11月30日だった。そして、シャウプ大佐はウィットの利いた対応をする代わりに、子どもにマジレスしてたという。

1955年12月1日の地方紙「パサデナ・インディペンデント」は、「サンタのルートより大事なものがあると子どもは学んだ」という見出しで、以下のように報じていた。

<コロラドスプリングスに住む、ある子どもが昨日、サンタクロースに関する質問に答える番号に電話するつもりが、電話番号を二ケタ逆にする間違い電話をしてしまった。

この子の電話はCONADの作戦指揮所に繋がった。そこは士官たちが、北アメリカの地図の上にある巨大な透明板を緊迫した様子で監視している場所だった。特に注意を払っていたのは、ソビエト連邦が北アメリカに爆撃する可能性があるルートだった。

子どもの声が、作戦指揮所の司令官であるハリー・シャウプ大佐に繋がり「北極にサンタクロースはいるの?」と尋ねた。

シャウプ大佐はクリスマスが近いという時期を考慮して、本来の業務よりは砕けた様子で答えた。

「北極には、君が言うようなサンタクロースがいるかもしれない。しかし、私がその方向から飛来するのを危惧しているのは彼じゃないよ」>

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