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2019年02月23日 09時47分 JST | 更新 2019年02月23日 10時32分 JST

沖縄県民投票、最大のポイントは「意思表示」 注目が得票数になる理由

辺野古埋め立ての是非をめぐる沖縄県民投票に、「注目点はない。やる意味がない」という声がある。本当に意味がないのか?

時事通信社
米軍普天間飛行場の移設に向け、埋め立て工事が進む名護市辺野古沿岸部。中央は米軍キャンプ・シュワブ=12日、沖縄県名護市(小型無人機で撮影)

ニューズウィーク日本版「沖縄ラプソディ」の取材で、2月3日から沖縄に入った。今回の県民投票の取材だ。最大の注目点はどこか教えてほしい。そう聞くと「投票数」という声が上がる一方で、「注目点はない。やる意味がない」という声も聞いた。その理由はどこにあるのか?

最大の注目は?

2月24日、沖縄県名護市の辺野古新基地建設による、埋め立ての是非をめぐる県民投票がある。当初は「賛成」「反対」の二択だったが、5つの自治体が「二者択一では民意を示せない」などと最後まで反発し、県民投票不参加を表明。最終的に、県議会で2択で不参加なら3択にすれば良いという声があがり、「どちらでもない」を加えた政治的な妥協で決着した。

県民投票に法的拘束力はない。県民投票でもっとも多く票をあつめた「答え」が投票資格者総数の4分の1に達すれば、玉城デニー知事は安倍首相とトランプ大統領に通知する。

「辺野古に新基地を作らせない」ことを公約に掲げ、当選を果たした玉城デニー県知事を支える県政与党は反対への投票を呼びかける。ここで浮上するのが「40万票」という数字だ。

これは玉城知事が獲得した沖縄県知事選史上、最多得票数にあたる「39万6632票」を超えるという意味がある。

沖縄県政を取材する地元紙記者はこう語る。「争点は得票数です。反対が40万を超えたら、これは文句なしに民意を示したと言えるでしょう。沖縄県民が反対だという意思表示をした。ここが重要です。あとは国がどう受け止めるのかという問題になりますからね」

事前の世論調査を見ても、まず反対が少数になるということは考えにくい。あとはどこまで票を伸ばせるかが鍵になる。投票率が低調ならば票数にも影響する。

「国は何があっても作るんだろうという声があるのは事実。これが投票率にどこまで影響するかも争点。そして、賛成派は沈黙し、あえて反論をしない作戦で臨んでいる。知事選は各政党が動員をかけたことで盛り上がったが、今回はそれがない」(別の地元紙記者)

 何もしない、静観するという「戦略」

この記者が指摘するように、反対側は精力的に動く一方で県政野党になる自民党、そして国政で連立を組む公明党の動きは低調だ。

公明党の支持母体である創価学会はただでさえ、辺野古問題には反対の声が多い。現に昨年の県知事選でも支持者をまとめきれず、一定数が玉城側に流れた。国政ではまず見られない動きだ。

そして、自民党は「不戦敗」を受け入れるというのが作戦になっている。その理由は「やる意味がない」というものだ。

自民党沖縄県連の幹部は「我々の世論調査でも、辺野古については地元の名護市も含めて、ずっと多数派は反対。それは動かない。全県的にも反対が8割前後といったところ。内心はみんな反対だが、国は辺野古に作ると決めているから仕方ないという声もある。民意は県知事選で出ている。これ以上やる意味はない」と明かす。

沖縄選出の国会議員はこう語る。

「支持者の中にも辺野古は反対という方はいる。しかし、辺野古は普天間基地の代替施設だ。普天間が世界一危険な基地であるのは周知の事実。危険性の除去のために何が必要なのかが問われない投票はおかしい」

よって「何もしない」のが最良なのだという。

再び、県連幹部の証言。「我々はそもそも県民投票そのものに反対している。だから何もしない。賛成に入れろと呼びかければ、盛り上がってしまう。戦わないで、個人の選択に任せるのが一番だ」

本当に意味がないのか?

あえて構図を描けば、反対派は盛んに反対への投票を呼びかけ、投票率を上げることで票の掘り起こしを狙う。賛成派は沈黙を貫くことで、県民投票の意義そのものに揺さぶりをかける。反対が多くても政府は「粛々と」工事を進めるだろう。

前述のように県民投票そのものに法的拘束力はなく、どの選択が多くなったとしてもすぐに何かが動くことはない。では、どのような意味があるのか。慶応大教授の坂井豊貴さんが朝日新聞のインタビューに語っていることが重要だ。

《もし私が誰かに殴られ続け、そのまま無抵抗でいれば「あいつは喜んで殴られていた」と言われるかも知れない。しかし、殴られつつでも抵抗したならば、そうは言えなくなる。その抵抗は記録されて歴史になり、後世に必ず影響を与える、と。》

今回も意味のない投票ではないだろう。意思表示の機会を軽く見て、何もしないのが最良という選択もまた記録され、歴史に残っていく。