PRESENTED BY PANTENE

就活では、黒髪が当たり前。そんな社会を変えたい。令和を機に、あるブランドがキャンペーンを仕掛ける理由

約3割が就活で「黒染め」を経験。それでも「日本社会の空気が変わってきている手応えは感じています」

就職活動を迎えると、それまで茶髪だった学生たちが続々と髪を黒く染めていく。「日本人は黒髪」というステレオタイプな考え方に合わせて、面接などで好印象を与えたいという思いからだが、そんな風潮に疑問を投げかける声も少なくない。

そこでハフポスト日本版は、就活のために髪を黒く染めたことがあるかどうかをTwitterでアンケートした。その結果、回答者の約3割が「ある」と答えた。一方で、黒髪以外で就活をした人は1割弱で、日本の就活時における「黒髪圧力」の実態が浮き彫りになった。

黒髪をめぐっては、就活だけでなく、各地の高校が、地毛の茶髪を黒染めさせたり、地毛証明書を提出させたりしていることも大きな波紋を呼び、「#就活をもっと自由に」「#この髪どうしてダメですか」といったハッシュタグが盛り上がった。

これらを仕掛けたのは、ヘアケアブランドの「PANTENE(パンテーン)」。中心人物は、P&Gで日本のヘアケア事業部のアソシエイト・ブランド・ディレクターを務める大倉佳晃さんだ。

きっかけは、自らの就職活動での違和感や海外勤務だったという。ハッシュタグキャンペーンから、社会に対話を促すパンテーンの狙いを聞いた。

大倉佳晃(おおくら・よしあき)さん P&Gインターナショナル オペレーションズ シンガポール APAC フォーカス・マーケット、ヘアケア アソシエイト・ブランド・ディレクター。2008年、P&G Japan入社。入社3年目からシンガポールに着任、現在までシンガポールにて勤務。グローバル・リージョン・ローカルビジネスを、h&s、SK-II、ファブリーズ、パンテーンなどにて経験。現在は、日本のヘアケア事業部全体のマーケティングを統括している。
大倉佳晃(おおくら・よしあき)さん P&Gインターナショナル オペレーションズ シンガポール APAC フォーカス・マーケット、ヘアケア アソシエイト・ブランド・ディレクター。2008年、P&G Japan入社。入社3年目からシンガポールに着任、現在までシンガポールにて勤務。グローバル・リージョン・ローカルビジネスを、h&s、SK-II、ファブリーズ、パンテーンなどにて経験。現在は、日本のヘアケア事業部全体のマーケティングを統括している。
Kazuhiro Sekine

■茶髪に穴あきジーンズは自分だけ。就職活動での違和感から社会貢献へ

―― まずは、これまでのご活動について教えてください。

ヘアケア事業部でパンテーンのブランドマネージャーに就任した当時、パンテーンのブランド理念「あなたらしい髪の美しさを通して、すべての人の前向きな一歩をサポートする」を社会課題とリンクさせて、世の中に貢献できないかとチームで模索していました。

「髪の質や色は人によって違っていい。自分の好きな髪型で楽しんでいこう」。そんなポジティブな発信をしたいと思い、「さあ、いくぞ」という意味の「Here we go」をもじった「#HairWeGo さあ、この髪でいこう。」というキャンペーンが生まれました。

その第1弾として、個人的な思い入れもあり、多くの人が経験する就活をテーマとした「#就活をもっと自由に」というキャンペーンを2018年にスタートしたんです。

日本の就職活動って、ほとんどの人が黒髪で、さらに髪の長い人は後ろで結んでひっつめ髪にしていますよね。画一的、没個性だなんてよく言われているけど、もう何十年も変わっていない。それ自体が悪いわけじゃないけど、もっと選択肢や自由があってもいいのではないかと思ったんです。

―― 「個人的な思い入れ」というお話がありましたが、大倉さんのどんな経験や思いが、このキャンペーンに込められていますか。

私は学生時代からファッションが好きで、髪の毛もよく染めていたんです。就職活動でも自分らしさを表現できるファッションに身を包み、髪の毛も茶色のままでしたね。

でも、いざ説明会や面接に足を運ぶと、ほとんどの人が黒髪にリクルートスーツでした。「好きな格好で来てください」と企業から言われている場合でさえもですよ。茶髪で穴あきジーンズを履いているのは、僕くらいでしたね(笑)。

「就活では、生意気、チャラいとも言われた」と話す大倉さん。いまも、ファッションやヘアスタイルを楽しんでいる。
「就活では、生意気、チャラいとも言われた」と話す大倉さん。いまも、ファッションやヘアスタイルを楽しんでいる。
Kazuhiro Sekine

でも、僕自身、途中で軌道修正しちゃったんです。ある面接に落ちた時、髪型や服装がネックだったというフィードバックを耳にして。仕方なく、会社によって抑え目な髪型や服装に変えるようになりました。

最終的には、髪型も服装も自由でいいという方針を明確に打ち出していたP&Gを選んだのですが、日本の就職活動って、どうして同じ髪型やリクルートスーツがよしとされるんだろうって、違和感はずっと持ち続けていました。

■「同じような見た目」なんてない。日本を離れて気づいたこと

―― シンガポールでのご勤務経験も、キャンペーンに影響を与えていますか。

そうですね。外国に来て、日本の素晴らしさを実感すると同時に、やっぱり独特の同調圧力というか、個性を出しにくい雰囲気は、より実感するようになりました。

シンガポールは、中華系、マレー系、インド系はもちろん、他の国から来ている人もいっぱいいて、多様な人たちであふれているんです。だから、そもそも「同じような見た目」というのがない。

さらに、もとの髪が暗めの人も、明るい髪色で面接に来ますし、そこを気にする人はほとんどいません。みんな好きな髪型や服装を楽しんで、仕事の評価は外見以外のところで受けていているように思います。

■「黒髪」が悪いんじゃない。自分で意思決定できることが大切

Getty Commercial

―― 「#就活をもっと自由に」のキャンペーンに対して、学生たちの反応はいかがでしたか?

P&Gの面接現場で言えば、もともとダイバーシティ(多様性)を尊重する会社であることを学生にアピールしてきたので、大きな変化はなかったそうです。私のように、自由な髪型や服装で来る人もいるんです。

一方、Twitter上などでは、「就活の時に画一的な就活ヘアをすることに対し、疑問を感じていた」という賛同意見だけでなく、「就職活動に集中できるから画一的なほうが楽」「髪型が理由で面接に落ちるのがこわい」といった意見も寄せられました。

―― 「就職活動に集中できるから画一的なほうが楽」「髪型が理由で面接に落ちるのがこわい」といった意見については、どう思われますか。

黒髪やリクルートスーツに対して、例えば「そういう方が合理的だ、楽だ」という考え方も、もちろんいいと思っています。

けれども、「なんとなくみんなに合わせなくてはいけない」とか、「本当はもっと自分の個性を表現したいのに、怖いからできない」という状況は、変わっていくべきだし、多くの選択肢があってもいいと思います。

Kazuhiro Sekine

中には、「生まれつき髪が黒ではない人が、就職活動で失敗を恐れて黒染めしたら、地肌がかぶれて、気分も落ち込んでしまった」というケースもあります。

大切なのは、自分で考えて意思決定できること、個人の選択の自由が尊重されることではないでしょうか。

■「地毛証明書」「黒髪強制」は廃止の動きへ。キャンペーンが世の中を動かす

―― 就活以外のテーマでもキャンペーンを展開されています。それらの狙いを教えてください。

第2弾では、黒染めしない“グレーヘア”が話題を呼んだ近藤サトさんと、“爆毛赤ちゃん”としてSNSで人気のbabychancoちゃんを起用し、「生まれながらの個性のある髪で、前を向いて行こう」というメッセージを発信しました。

P&G

第3弾では、「#この髪どうしてダメですか」というテーマで、「地毛証明書」を提出させたり、黒髪を強制したりする髪型校則に疑問を投げかけました。これをきっかけとして、ついに先日、東京都教育委員会が全ての都立中学校と高校に対し、生来の頭髪を黒染めさせる指導をしないように求める、という動きがありました。ブランド広告が、社会に前向きな影響を与えることができたと思います。

■一企業だけでは現状を変えられないからこそ…。再び「就活」に挑む理由

――最新の第4弾では、「#令和の就活ヘアをもっと自由に」として、再び就職活動の髪型をテーマにしています。その理由を教えてください。

このテーマに関しては、私たち一社が声を発するだけでは、社会全体を変えられないと実感したんです。だからこそ今年は一歩前進させて、他企業と一緒にアクションを起こそうと思いました。

賛同企業を募ったところ、スタートアップから大企業まで、すでに139の企業などが手をあげてくれました。これから本格的に展開をしていく予定で、今年の各社の内定式には、自由な髪型や服装で参加する人が増えればいいと思っています。

Kazuhiro Sekine

■「周りと合わせる」時代はもう終わり。日本社会の空気が変わってきている

―― 今後の目標や課題を教えてください。

髪型校則や画一的な就活ヘアには、共通して「周りと合わせることが正しい」というこれまでの教育的な背景があると感じています。でも、「周りと合わせる」のではなく、人々の多様性が尊重される社会づくりを、パンテーンとしてもサポートしていきたいです。

日本社会の空気が変わってきている手応えは、キャンペーンの広がりから強く感じています。特定の人、組織だけではなく、社会全体で一つの問題に取り組めるよう、新たなメッセージを発信し続けていきたいと思います。

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「#令和の就活ヘアをもっと自由に」の動画。ひとりひとりの就活生の個性が尊重される前向きな就職活動を応援している。
「#この髪どうしてダメですか」の動画。「地毛証明書」について、生徒と先生の対話を試みた。
「#さあこの髪で行こう」の動画。babaychancoちゃんと近藤サトさんがコラボレーションしている。

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