パリの路上から、20年以上前に生産された古いクルマが消える?

この条例は、フランスの首都における温室効果ガスの排気量を2025年までに75%削減することを目的とした大規模なプロジェクトの一環として施行されるものだ。

今年7月、パリの路上を走るクルマの景観が大きく変わりそうだ。パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏は、1997年より前に製造された全ての自動車を対象に、7月1日からパリ市内への乗り入れを禁止する条例を発表し、現在これが大きな議論を呼んでいる。

この条例は、フランスの首都における温室効果ガスの排気量を2025年までに75%削減することを目的とした大規模なプロジェクトの一環として施行されるものだ。

今後1カ月も経たないうちに、パリで登録されたクルマは小さな円いステッカー(公式には"air quality certificate"〈空気品質証明〉と呼ばれる)をフロントガラスに張り付けなければならなくなる。

ステッカーは車両の排出ガス量をユーロ規定に基づいてクラス分けし、どのクラスに分類されているかを色別で示すものだが、そのステッカーにより取締官は、クルマの年式やパリ市内に乗り入れが許可されているかどうかを識別しやすくなる。ちなみに規制が実施されるのは平日の午前8時~午後8時までとなる。

この規制は、街中のあちらこちらに検問所を設置するという昔ながらの方法で実施されるようだ。違反したドライバーには、当初は35ユーロ(約4,300円)の罰金が科せられ、2017年1月より68ユーロ(約8,300円)に値上げされる。

これに違反することは、駐車違反とほぼ同程度の比較的軽犯罪とみなされる。シトロエン「BX」でペリフェリック(都市高速道路)を走り回ったからといって、監獄で一夜を過ごす羽目になるわけではないのでご安心を。

また、パリ市当局によって、大気汚染のピーク時に新しい車両も対象にした市内への乗り入れ規制が行われる際にも、このステッカーは役立つ。ロンドンや北京、ミラノなどの大都市でも近年、大気汚染を抑制するという試みで同様の規制が行われている。また、ローマ及びミラノでは昨年末、全ての自動車とオートバイの市内への乗り入れを朝から夕方まで6時間禁止するという規制も行われた。

この条例の制定についてはパリ市議会により1年以上議論されてきた。多くの市民が、イダルゴ市長をトップとする議員たちに、クラシックカーとして登録されている車については規制対象から除外することを期待したが、最終的な条例は、コンクール・デレガンスに出品できそうな1962年型ポルシェ「356」も、走行距離計に天文学的な数字が並んだディーゼルの1994年型プジョー「205」も、区別なく同様に扱うものだった。

これに対し、フランスのクラシックカー・オーナーと熱心なファンを代表するクラシックカー連盟(FFVE)は、ビンテージ車を規制対象から外すよう引き続き議会に働きかけるつもりだ。

つまり、パリの街には今もたくさんのクラシックカーが走っているということだ。殊にオリジナルのMINIやフィアット「126」などの小型車が多く、ルノー「4」、シトロエン「2CV」を見かけることも珍しくない。観光客向けに2CV専門のレンタカー会社も存在するほどだ。さらにパリは、英国製、ドイツ製、イタリア製の高級クラシックカーの宝庫であり、毎年恒例のビンテージカーのイベント「レトロモビル」もこの街で開催される。

あと数週間すると、少なくとも50万台のクルマがパリ市内で走れなくなることになるが、当然ながら気を揉んでいるのはクラシックカーのオーナーだけではない。

今後数週間のうちに数回の抗議行動が計画されており、また、1997年以降に製造されたクルマを購入するためにパリ市が補助すべきだとするドライバーたちが、既にパリ市を相手取った集団訴訟を起こしている。

起訴の背景の一つにあるのが、古いクルマとはいってもまだクラシックカーとは呼べない初代ルノー「クリオ」のようなクルマは、禁止条例が発効すると、パリ市以外の居住者に売却されない限り、価値がなくなってしまうという懸念だ。

パリ市はこの訴訟に対するコメントをまだ出していない。しかし、市当局は「パリ市民はきれいな空気を吸ってしかるべきだ」と指摘し、この条例に前向きに取り組んでいくことを改めて表明している。

この禁止条例は1999年6月1日より前に製造されたスクーターやオートバイにも適用され、今後は段階的に厳しくなっていく。そして2020年には、パリ市中心部に入るのを許されるのは2010年より後に製造されたクルマだけになるのだ。

注:この記事は寄稿者ネットワーク「オープンロード」に投稿されたものです。内容については筆者が単独で責を負い、どのような意見もAutoblog編集部の意見を反映するものではありません。

翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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