平和維持が直面する課題にどう対応できるか - ジャン=ピエール・ラクロワ 平和維持担当事務次長

まだ多くの作業が残っているものの、私たちの集団的取り組みの効果はすでに現れてきています。
PKOのための行動(Action for Peacekeeping: A4P)
PKOのための行動(Action for Peacekeeping: A4P)
UNDPKO

国連の平和維持は、今日のグローバルな平和と安全の課題に対応するうえで最も効果的な手段の1つです。来る日も来る日も、国連の旗のもとに奉仕する女性と男性がその命を懸けながら、危険にさらされた人々を守り、脆弱な政治プロセスを支援し、平和を持続させています。また、リベリアやコートジボワールのような国々が平和を取り戻すことにも貢献してきました。

国連の平和維持は、平和維持要員に対する攻撃や複合的なマンデート、温度差のある政治的支援など、ますます難しい課題に直面しています。平和維持はつまるところ、一致団結した取り組み、すなわちパートナーシップだと言うことができます。

安全保障理事会、兵員・警察官提供国、国連事務局、地域機関や受入国を含め、すべてのパートナーが積極的にそれぞれの役割を果たして初めて、平和維持は機能します。私たちがこうした課題への取り組みを成功させるためには、強力な集団行動が必要です。

事務総長はこうした理由から、3月28日に「PKOのための行動(Action for Peacekeeping: A4P)」イニシアティブを立ち上げ、これら課題に取り組む決意をさらに強化するとともに、私たちにとって最も重要な現地での活動の成功を支援しようとしています。

すべての加盟国や政府間機関との集中的な協議を受け、事務総長は全加盟国に「共同コミットメント(Shared Commitments)」宣言を提示し、その支持を求めました。9月25日現在、146カ国がこの文書に対する支持を表明しましたが、その中には日本も含まれています。

この宣言は、政治的取り組みに対する支援強化、訓練や機材、実績の改善に向けた取り組みの強化、パートナーシップの強化をはじめ、私たちの活動のインパクトと効果を具体的に向上させることをねらいとする相互のコミットメントを数多く定めています。

一方、私たちとしても、多くの対策に着手しています。その中には、国連平和維持要員の安全と安心に関するアクションプランの実施により、平和維持要員の実績や思考回路、支援を改善することが含まれています。

まだ多くの作業が残っているものの、私たちの集団的取り組みの効果はすでに現れてきています。

今年に入ってから、17人の平和維持要員が暴力行為により命を失っていますが、昨年の同時期に、その数は26人に上っていました。これだけでも大幅な減少と言えますが、私たちは継続的な脅威に対する警戒を解いてはなりません。1人の平和維持要員が殺されただけでも、それは大きすぎる犠牲だからです。

私たちのミッションの多くで、平和維持要員は脅威や攻撃にさらに効果的に対応できるようになっています。

最近、マリを訪問した私は、国連マリ多面的統合安定化ミッション(MINUSMA)が遂げたプラスの変化を目の当たりにしました。脅威を察知するシステムの高度化で、私たちのキャンプの保護は改善されています。アゲルホックやテッサリトをはじめとする各地で展開されている平和維持要員は、大きな脅威を受けながらも、住民保護のためのパトロールを強化しています。兵員の思考回路の変化や備えの強化は、攻撃を受けた際の人的被害の抑制に大きく貢献しています。例えば、4月に私たちのトンブクトゥ基地を攻撃した武装勢力には、強力な反撃が加えられました。

国連マリ多面的統合安定化ミッション(MINUSMA)を視察するジャン=ピエール・ラクロワ 平和維持担当事務次長
国連マリ多面的統合安定化ミッション(MINUSMA)を視察するジャン=ピエール・ラクロワ 平和維持担当事務次長
UN Photo/Manuel Elias

また、私たちはマンデートを評価し、目的の達成に向けた適切な戦略と資源が備わっているかどうかを判定するため、平和維持ミッションについて一連の独自の審査も行っています。

私たちは、アフリカ連合(AU)や欧州連合(EU)をはじめとする重要なパートナーとの協力を強化しています。私たちがこれらの取り組みを全力で進めていることはもちろんですが、あらゆるパートナーの参画がない限り、国連の平和維持の成功はありません。

平和維持の強化には、兵員や警察官の提供国への支援も欠かせません。その中には、訓練ニーズの充足を支援し、それぞれの任務を遂行するための装備と準備を整えた要員の展開を確保できるようにすることが含まれます。

同様に加盟国も、あらゆるレベルで女性平和維持要員を増やそうという私たちの取り組みの鍵を握っています。平和維持要員に女性が増えれば、平和維持の効果も上がります。現時点で、平和維持要員に女性が占める割合は21%にすぎないため、私たちはこの状況を一致団結して改善していかねばなりません。

私たちの集団的な努力の中心には、すべての国連要員に最高の行動基準を遵守させることを据えなければなりません。私たちは近年、説明責任と透明性を強化し、認識を高め、被害者によりよい支援を提供するための取り組みを拡充してきました。しかし私たちは、あらゆる種類の要員に犯罪行為の責任を問える権限を有する加盟国との連携を引き続き強化、緊密化しなければなりません。

私たちは平和維持の強化に向け、自らの役割を果たす決意を固めています。すでに146カ国が署名している(また、さらに支持表明を受け付けている)共同コミットメント宣言は、重要かつ有意義な第一歩となります。しかし、私たちは今、最も重要性が高く、人々の期待も最も大きい現地の活動で、一丸となってこれを履行する必要があります。

平和維持要員は最も複雑かつ困難な場所のいくつかに展開され、最も脆弱な立場に置かれた人々を守っています。数百万の人々にとって、それは最後にして最大の望みです。私たちに必要なのは、これを全力で支援することなのです。

安保理で発言するジャン=ピエール・ラクロワ 平和維持担当事務次長
安保理で発言するジャン=ピエール・ラクロワ 平和維持担当事務次長
UN Photo/Manuel Elias

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