2021年06月30日 14時00分 JST | 更新 2021年06月30日 14時00分 JST

不安を抱えていた車いすの少年が、テニス界のレジェンドに。国枝慎吾選手が子どもたちに伝えたいこと

車いすテニスのレジェンド・国枝慎吾選手。コート内外で活躍する彼の強さを支える意志とは? パラスポーツを通じてどんな未来を描いているのか話を聞きました。

Kazufumi Shimoyashiki

「車いすテニスのレベルの高さを知ってもらうことは、健常者と障がい者の垣根を超えることにもつながる」

そう力強く語るのは、10年以上にわたり世界王者に君臨し続ける車いすテニスのレジェンド・国枝慎吾選手だ。6月1日から放映されているP&GのTVCMでは、子どもたちと交流する姿が話題を呼んでいる。

これまでオリンピックやパラリンピックの出場選手とその家族を応援するさまざまな活動をしてきたP&Gは、キャンペーン「Lead with Love」を開始。

国枝選手は「Lead with Love」に込められた同社の思い「一人ひとりが互いに思いやりのある行動をすることで世界はもっと良くなる」に賛同し、TVCMに出演している。

 

コート内外で活躍し、グランドスラム車いす部門でシングルス、ダブルス合わせて歴代最多となる45回の優勝を誇る絶対王者・国枝慎吾選手の強さを支える意志とは? 車いすテニス、そしてパラスポーツを通じてどんな未来を描いているのか聞きました。

Kazufumi Shimoyashiki
国枝慎吾(くにえだ・しんご):プロ車いすテニスプレーヤー。車いすテニス史上初となる年間グランドスラム(当時の4大大会制覇)を達成。現在までに、歴代最多となるグランドスラム45勝の記録を誇る。

 

「健常者と同じように生活できる」スラムダンクに憧れた少年時代

僕は9歳の時に脊椎腫瘍を発病し、車いす生活を送るようになりました。車いすテニスを始めたのは11歳。きっかけは母のすすめでした。スラムダンクが流行っていた当時、車いす生活になった後も復学して、放課後は友達と3on3をしていました。僕だけが車いすで、友達はみんな健常者。バスケットボールをみんなで楽しむ様子を見た母が、車いすのスポーツもやらせてみようと思い立ち、家の近所にある吉田記念テニス研修センターに通い始めました。

当時、僕自身も車いすだったけど、他の車いすの人がどんな生活をしているのか知りませんでした。なので、車いすテニスの先輩が自分で車を運転しているのを見て、運転できることを知った。車いすでも一人暮らしをして、仕事をちゃんとして、テニスを楽しんでいる。そういう先輩方の姿を見て、普通に健常者の人と同じような生活ができるんだ、と子どながらにすごく感じました。不安がなくなったという感じでしたね。

P&G
中学一年生の頃の国枝選手。テニスが趣味だった母のすすめで車いすテニスを始めたそう

 

「車いすテニス選手になりたい」子どもたちに言ってもらえるように

子ども時代の経験が原体験となり、プロ転向を決める一番の理由にもなりました。先輩のように「普通に生きられるんだ」「健常者の人と同じように生きられるんだ」という姿を子どもたちに見せたい。そして、世界一位になれば、車いすテニス選手を職業としてプロ活動できることを見せられる。それは自分にしかできないことなんじゃないか、そう思いプロ転向を決意しました。

Kazufumi Shimoyashiki

子どもたちが「野球選手になりたい」「サッカー選手になりたい」と同じように、「車いすテニス選手になりたい」と言ってくれるような活動を目指す。それは非常に大きな意志として僕の中にあります。最近もジュニアで強い子が出てきて、そういった子が僕のプレーを見て車いすテニスを始めたと言ってくれる。すごく嬉しいことですよね。やろうとしていたことが、ちょっとずつ形になってきたのかなと思います。

 

テニスは「ダイバーシティなスポーツ」。国枝選手とP&Gの共通点

P&GのTVCM出演に至ったのも、僕の意志とP&Gの理念が重なると感じたことが大きい。P&Gはダイバーシティや社会貢献への意識が強い企業というイメージがあります。一方、僕は車いすテニス選手として活動する中で、障がいのある子どもたちが僕に憧れてテニスを始めたという話を聞く機会も多い。それは僕をやる気にさせますし、自分の活動が間接的に社会貢献につながっているのは嬉しいことでもあります。そういった意味で、理念として一致する部分があると考えています。

P&G

「より良い世界の実現のために、行動を起こすこと」を称賛するP&Gのメッセージ「Your Goodness Is Your Greatness. あなたの善さが、あなたの良さ」に関しても、共感する部分が大きい。それぞれの違いを認め合うことでより良い社会になっていくと考えています。また、テニス自体がすごくダイバーシティなスポーツだと普段から感じています。

Kazufumi Shimoyashiki

 例えばグランドスラムは、同じ大会の中に車いすテニス部門があります。男子の錦織くんが出場するクラス、女子の大坂さんが出場するクラス、車いすの僕が出場するクラス。それらが同じ場所、同じ時に行われる。ロッカールームもシェアしますし、同じテニスコートを使う。ある意味、一番の垣根の低いスポーツだと思うんですよね、テニスって。そういったところも含めて、テニスというスポーツの素晴らしさを感じます。

 

「後悔なく生きてきた」世界一位に君臨し続ける理由

僕の「善さ/良さ」は、諦めない姿勢。試合もそうですし、自分自身の可能性も諦めない。例えば、人生には分岐点がある。こっちを選ぼうか、あっちを選ぼうかと。その時に必ずやりがいのある方を選んできたし、諦めずに努力し続ける方を選んできた。そこに対しては「本当に後悔なく生きてきた」と胸を張って言えます。

Kazufumi Shimoyashiki

 テニスは「今のままでいいや」だとやられてしまうスポーツでもあるんです。成長を止めてしまわないよう、常に自分自身に問いかけ、一つでも改善できるところを見つけてチャレンジする。10年以上にわたり世界一位でいられる理由はそこにあると思います。

実際、何かにチャレンジして変わろうとしている時は、一番楽しい瞬間でもあるんですよ。逆にずっと勝ち続けている時ほど、難しいところはあります。負ける試合があって、なぜ負けたのか分析して、「ここだ!」とわかった瞬間のモチベーションの高さが自分のテニスを支えていると思います。

 

「人間の強さを見た」東北復興支援に賛同し、地元の子どもたちと交流

一方でテニスコート外での活動もしています。例えば、子どもたちにテニスを教えるクリニック。それをきっかけに車いすテニスを始めてくれる子もいるので、積極的に行っていきたい。

Kazufumi Shimoyashiki

 東北大震災の際には、復興支援の企画に賛同し、被災から半年ほど経った頃に東北の子どもたちと交流しました。みんな悲しいことがあったにも関わらず、すごく元気で。逆にこちらが元気をもらったくらいでした。人間の強さを見た瞬間だった、と鮮明に覚えています。当時の街並みはまだ仮設住宅で、震災を想起させるような感じで生々しくて…その光景は今も目に焼き付いています。

 

「健常者と障がい者の垣根を超える」パラスポーツの普及が起こす、社会の変化

これから初めて車いすテニスを観る人には、「車いすで、ここまでできるんだ!」という印象を持ってもらえるようにプレーしたい。「車いすテニスって、こんなもんかな」と思っている一歩二歩上をいくことができたら、それは衝撃として伝わるし、印象に残ると思う。

Kazufumi Shimoyashiki

 そうやって車いすテニスのレベルの高さを知ってもらうことは、健常者と障がい者の垣根を超えることにもつながると思う。テニスの世界では、グランドスラムはもちろん、楽天オープンでも2019年から車いすテニス部門ができて、垣根は益々低くなっています。 

テニスに限らず、他のスポーツにもそれが広がっていってほしい。ゆくゆくは、もしかしたらオリンピックとパラリンピックが同時開催になるかもしれないし、そういう社会に近づくことがダイバーシティの実現になると思っています。

多様性を認め合い、互いを思いやる行動でより良い世界の実現を目指すP&G。同社の思いが詰まった「Lead with Love」に共鳴するように、キャンペーンに参画した国枝慎吾選手。理念を共にするアスリートと企業の連携が、社会に前向きな変化を起こしてくれると期待したい。

P&Gの「Lead with Love」に関する情報はこちらから。

 

※P&Gは、2020年7月、国際オリンピック委員会(IOC)とのオリンピックのワールドワイドパートナーシップを2028年まで延長し、さらに国際パラリンピック委員会(IPC)と2021年以降のワールドワイドパラリンピックパートナーに関して同意しました。