2019年04月09日 12時00分 JST | 更新 2019年04月09日 12時00分 JST

途上国の経済発展を止めていたのは、幼すぎる花嫁だった

児童婚から女の子を救う、プラン・インターナショナルの取り組み

3月に開催された国際女性会議にて、女子教育の大切さを訴えノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんから「世界中の女の子が中等教育を修了できたとしたら、その経済効果は30兆ドル」という、インパクトの大きい試算が紹介された。

女の子が学校に通い、社会参加すれば、経済にもポジティブな影響を与えられる。しかし、世界には10代で結婚させられる女の子たちが後を絶たない。開発途上国では、3人に1人の女の子が18歳未満、9人に1人の女の子は15歳未満で結婚している(※1)。

早すぎる結婚は、女子生徒の中途退学の原因のひとつとなっている。十分な教育を受けられないと、経済的自立は難しい。さらに、早すぎる出産は命を落とすことにも繋がる。

女の子の地位向上と自立のために、アフリカの貧困地域で、児童婚を防止するプロジェクトを実施しているプラン・インターナショナル・ジャパンの道山さんに、現地の状況と活動を通して感じた変化について聞いた。

 

法律で禁じても、児童婚がなくならない背景

MASANORI SUGIURA
プラン・インターナショナル・ジャパン 道山さん

児童婚とは「18歳未満での結婚、またはそれに相当する状態にあること」をさす。18歳になる前に結婚した女性は世界で7.2億人(※2)。体が未熟な段階での早すぎる結婚・出産により、毎年15~19歳の女の子が約5万人亡くなっている(※3)。

ーー児童婚は、どのエリアで多いのでしょうか。

道山さん
遠い国の問題に感じますが、6割以上がアジア・太平洋地域で発生しています。アフリカでとくに多いのは、西のエリアです。昨年末、ナイジェリアで「70歳の男性が15歳の女の子と結婚した」というFacebook投稿がされて、大きな話題になりました。SNSをきっかけに、昔からあった現地の慣習が、世界の注目を集めるようになっています。

ーーSNSに普通にアップするということは、当事者は児童婚=悪いことだと思っていないですね。

道山さん
「俺の嫁さんは15歳!」という、自慢の要素もあると思います。若い花嫁を迎えることを、正しいことだと思っているのかもしれません。

ーーそんな現状から、児童婚を防ぐためにどんな働きかけをしているのでしょうか。国家レベルだと、法律を変えることになりますよね。

道山さん
実は、法律を変えるだけでは防止を徹底できません。インドにも18歳未満の結婚を禁じる法律があるけれど、実際は遵守されていません。ナイジェリアも同じ状況です。非合法化すると児童婚の事実が隠されてしまうので、防止の働きかけもしづらくなってしまう。国家に働きかけるだけでなく、同時並行で現場コミュニティへの働きかけが必要です。

 

必要なのは女の子本人だけでなく、コミュニティへのアクション

WHOは「早すぎる結婚を10%減らせば、妊産婦死亡率は70%減る(※4)」と調査結果を発表している。さらに、世界銀行の資料では、「早すぎる結婚を終わらせることで、国の総所得は平均1%向上する(※5)」というデータが紹介されている。

ーー途上国では「女の子に教育はいらない」「早く結婚するべき」という思考が強いエリアもあります。どうやって地域の人の理解を得ていったのでしょうか。

道山さん
まずは、女の子自身が学んで、「こんなに早く結婚をしなくてもいい」「他の国では、結婚しない子どももいる」と思えるように働きかけています。10代での出産や家庭内暴力など、児童婚に付随するリスクについて知識がなかったら「こんなものなのかな」と結婚を受け入れてしまう。でも、女の子が知識を身につけて、自分の意志で「いつ結婚するか」「パートナーとどう向き合うか」などを決めることができれば、社会は変わり始めると思います。

ーー本人が抵抗しても、周囲のプレッシャーから逃れられない現状もあるのでは。

道山さん
女の子の人生を左右するのは、父親、地域・宗教的リーダーたちです。まず彼らの認識を変えないと、子どもたちを守ることはできません。なので、家族や学校、地域の人々にも「若いうちの妊娠出産はリスクが高いし、赤ちゃんが健康的に育たないことも多いですよ」と、児童婚のデメリットをきちんと伝えるようにしています。

プラン・インターナショナル
女の子が自分の身を守り、経済的に自立できるよう、トレーニングを実施

女の子の支援に注力する理由

早すぎる結婚を終わらせることによる福祉への効果は、2014~2030年で4兆ドル以上だ(※6)。世界銀行は「女の子が1年長く初等教育を受けると、将来の収入が約11%向上。1年長く中等教育を受けると、将来の収入は約9%向上する」と調査結果を発表している(※7)。しかし、現実的には「女の子が学校に行く必要はない」とされる風潮がある。

道山さん
早すぎる結婚を防ぐためには、男の子側の意識も変えなければなりません。現地の調査では「女の子は何歳で結婚するべきだと思う?」という質問に対し、女の子は「16-17歳くらい」、男の子は「11-12歳くらい」と答えることが多かったのです(※8)。

プラン・インターナショナル
児童婚の危険を伝える劇には、男の子も参加

ーー身の回りで児童婚がたくさん起きているから、それが常識として刷り込まれてしまうのでしょうか。

道山さん
そうです。その背景として、うまく就業できないと、家族を持つことでしか「大人」として認めてもらえないプレッシャーもあります。しかし、早すぎる結婚は、結局男の子も家族を養うために学校を辞めて働き始めることになります。きちんと教育を受ければ、収入が上がるので、危険な労働にも従事しなくて済みます。男の子も、1年長く初等教育を受けると約10%、1年長く中等教育を受けると約7%、将来の収入が増えると言われています(※9)。児童婚を防げば、女の子だけでなく、男の子の負担も軽減できるんです。

ーー男の子への働きかけも必要ななかで、なぜプラン・インターナショナルは女の子の支援に注力しているのでしょうか。

道山さん
実際に現地で支援をしていくと、データにも反映されない男女格差があったんです。たとえば、就学率。数値上は男女で大きな差はありませんでしたが、女の子は入学式後にどんどん中途退学していく実情がありました。中等教育だと、さらに差がついてしまいます。

ーー早すぎる結婚により、学校に通えなくなってしまう子が多いのでしょうね……。

道山さん
妊産婦の死亡率や、HIVの感染率などを加味しても、男女のギャップはとても大きいです。開発途上国では、「女の子は稼ぎ手にならず価値が低い」とされる国々も多く、普通に支援すると、男の子ばかり優先されてしまう現状があります。我々が女の子の支援に注力しないと、子どもたち全体の状況が良くなりません。女の子を支援すれば、経済も上向くし、本人の健康も守られるし、次の世代も育つ。多くの人を救う、近道になるのではないかと考えました。

 

内側から変革を担う、現地スタッフの努力とロールモデルの育成

世界銀行の調査によると、世界143カ国のうち、90%に女性の経済的機会を制限する法律が存在した。そのうちの79カ国では、女性が従事できる職種を制限している。15カ国では、夫が妻の就労をやめさせることが合法だった(※10)。

ーー地域のカルチャーについて働きかけるのは、スタッフも相当な苦労があると思います。コミュニケーションにおいて、どんなことを意識していますか?

道山さん
プラン・インターナショナルは、98%が現地採用のスタッフです。みんな、当事者意識があります。ローカル言語やカルチャーできちんと伝えるからこそ、受け入れてもらいやすい。数字やロジックだけでは伝わらないことは、劇やラジオ放送などわかりやすい手段を使い、寄り添っていきます。

MICHIYAMA MEGUMI
プラン・インターナショナルのウガンダ現地スタッフと道山さん

ーー識字率が高くないエリアでも、現地の方々が工夫されているんですね。実際に、活動の効果と手応えを感じたエピソードはありますか。

道山さん
パキスタンの非公式教育プロジェクトです。学校に行けないスラムの女の子に、非公式だけれど、高校卒業の資格を得る試験のための教育を行いました。みんな「女の子=家の中にいるもの」という思考を持っていましたが、収入を得るためには教育が必要です。周囲から反対されながらも勉強し、試験に合格した女の子たちは、ショッピングセンターに販売員として就職することができました。

ーー「女の子への教育がお金をうむ」という実例を作ったのはすごいことです。

道山さん
コミュニティの意識改革にもつながりましたね。スラム内で結婚したら、ほとんど家から出ることなく人生を終えていたかもしれない。教育を受けた女の子が働いて、外から収入を持って帰ってくるとなれば、家族も幼いうちに結婚させず、きちんと学校に通わせるようになります。こうしたロールモデルを生み出していくことが、児童婚をなくすための近道なのです。

ーー最後に、救済した女の子からの印象的だった言葉を教えてください。

道山さん
去年ネパールに出張したスタッフが、児童婚を免れた女の子と会ってきました。彼女は、親から結婚の話をされたときに、「結婚は嫌。私はまだ学校に通って、きちんと勉強する」と断ったのです。

ーー力強いです。

道山さん
彼女は当時、8歳でした。早すぎる結婚は慣習だけど、「この現状を、私たちが変えていく」と語ってくれました。私たちは児童婚を防ぐ働きかけをしているけれど、彼女を救ったのは、教育を受けた彼女自身の力です。女の子のロールモデルを、たくさんつくることが大切です。

 

女の子の力で、世界を変える

世界の女の子の可能性を阻むのは、早すぎる結婚だけではない。水汲みなどの家事労働の負担や暴力、女子教育が軽視されている現状など、世界の女の子が抱える問題はたくさんある。

1937年の創立以来、70カ国以上で女の子を救うための活動をしているのが、国際NGOのプラン・インターナショナルだ。彼らは、女の子の自立の過程をサポートする支援者を『親』と称したキャンペーンを開始した。

プラン・インターナショナル

1日100円からの支援が可能だ。寄付金は、早すぎる結婚の防止や教育のため、女の子自身だけでなく地域を巻き込んだ啓発活動のために利用される。

世界の女の子たちの『親』となり、女の子の力と可能性を育もう。

<参考データ>
(※1)Marrying Too Young (UNFPA, 2013)
(※2)UNICEF global databases, 2014, based on DHS, MICS and other nationally representative surveys, 2005-2013

(※3)UNICEF Inputs to Secretary-General’s Report in Response to HRC Resolution A/HRC/RES/24/23 (UNICEF, 2014)
(※4)“Adolescent pregnancy” Media centre, WHO, 15 Feb. 2018.
(※5)Impact of Child Marriage on Women’s Earnings across Multiple Countries. Education Global Practice (Savadogo. A. and Q. Wodon, 2017)
(※6)https://www.icrw.org/wp-content/uploads/2017/06/EICM-Global-Conference-Edition-June-27-FINAL.pdf
(※7,9)Comparable Estimates of Returns to Schooling Around the World (World Bank Group, 2014)
(※8)Girls, Child Marriage, and Education in Red Sea State, Sudan: Perspectives on Girls’ Freedom to Choose. Sudan report number 3, September 2017 (CMI, 2017)
(※9)Addressing Social Norms that Underpin Violence Against Children in Zimbabwe: Findings and Strategic Planning Document. Harare: Ministry of Public Services, Labour and Social Welfare (Fry, D., Hodzi, C. and T. Nhenga, 2016)
(※10)Women, Business and the Law 2014: Removing Restrictions to Enhance Gender Equality (International Bank for Reconstruction and Development/The World Bank, 2013)

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