花粉症による労働力低下… 経済的損失は一日あたりいくら?(調査結果)

どれほどの経済的損失があるのか、いくつかの試算が行われています。
ウェザーニュース

花粉症の人は年々増加していて、東京都の場合、およそ半数が花粉症の有病者といいます。花粉症は身体的なダメージになるだけでなく、仕事のパフォーマンス低下などから経済的な損失をもたらします。どれほどの経済的損失があるのか、いくつかの試算が行われています。


1〜3月だけで5691億円の家計消費低下

東京都は1983年から継続的にスギ花粉症の有病率調査を行っています。アンケート調査と花粉症検診で割り出したものです。第1回(1983〜87年)が10.0%、第2回(1996年)が19.4%、第3回(2006年)が28.2%、第4回(2016年)が48.8%です。東京都の場合は住民の約半分が花粉症なのです。

花粉症は健康被害だけでなく、経済的被害をもたらします。2019年3月の第一生命経済研究所による試算によると、2019年1月から3月までの3ヵ月の間に外出を控えたことにより、家計消費が5691億円下がったといいます。

1日あたり2215億円の経済的損失の推計

パナソニックは2020年1月に「社会人の花粉症に関する調査」を行いました(回答者1324人)。その結果、79%の人が花粉症の症状が自分のコンディションに影響を与えていると回答し、仕事のパフォーマンスが低下していると感じる時間は1日あたり平均2.8時間でした。これらから社会人の労働力低下による経済的損失は、1日あたり約2215億円と推計しています。

花粉シーズンは地域によって違いますが、たとえば2月中旬〜4月中旬の60日間とすると、経済的損失は13兆2900億円、日本のGDPの2.4%に相当する数字になります。

労働生産性の低下は5兆円という推計も

日本アレルギー学会顧問で福岡病院名誉院長の西間三馨さんは、花粉症などアレルギー性鼻炎患者の経済的損失を試算しています。その試算によると、欠勤や労働生産性の低下で、年間12.74日の労働時間の損失があり、1人あたり年間19万1783円の経済的損失が生じるとされます(2018年発表)。

日本において花粉症を有する人の数は、正確なところは分かっていませんが、全国的な調査としては、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国疫学調査があります(2008年1月~4月)。それによるとアレルギー性鼻炎全体の有病率は39.4%です。

西間さんは総額を出していませんが、就業者総数6700万人の39.4%が花粉症とすると、花粉症の就業者は2639万8000人。それに1人あたりの経済的損失を掛け合わせると約5兆円ということになります。

花粉症の経済的損失は調査方法によって幅がありますが、生産性に少なからず影響を及ぼすことにも間違いありません。これからの時季は花粉症をしっかり対策して、経済的な損失を減らしたいですね。

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