アルピーヌからフェラーリまで、各国の警察で実際に使われていた珍しいパトカーをご紹介!

昔からヨーロッパあたりでは、高性能なスポーツカーが「速いパトカー」として活躍している例もよくあるらしい。今日は各国で実際に使われていたスポーツカー・ベースのパトカーをまとめてご紹介しよう。

昔からヨーロッパあたりでは、高性能なスポーツカーが「速いパトカー」として活躍している例もよくあるらしい。今日は各国で実際に使われていたスポーツカー・ベースのパトカーをまとめてご紹介しよう。

高性能スポーツカーのパトカーは1960年代あたりから活躍!

まずはイギリスから。現在でも「BMW 5シリーズ」や「三菱 ランサー エボリューション X」が配備されているこの国では、1962年にサウスエンド・オン・シー地方の警察が写真のような「トライアンフ TR4」を導入。これは当時、銀行強盗の逃走用車としてよく使われていた「ジャガー Mk II」を追走するためだったとか。その後、「フォード カプリ」のパトカーもあったそうだが、これは主に広報活動用だったらしい。

ドイツ語圏ではやっぱりポルシェ!

アウトバーンの国、ドイツではやっぱりポルシェ、それも「356」の昔から、現代の「911」そして「924」「944」あたりもあったという。ドイツの警察は高速追走用に自国製のクルマを採用するのが常となっているとか。

オーストリアでもポルシェの356は警察で使われていた。というのもそもそも、初期の356はドイツではなくオーストリアのグミュントで製造されていたという縁がある。ポルシェから複数台の356がオーストラリア警察に寄贈されたそうだ。写真のクルマはカブリオレだから、主にパレード用だったのだろうか。お巡りさんの表情も誇らしげ。

フランスの警察は一味違う...

フランスの国家憲兵隊では1960年代にアルピーヌから「A110」が寄贈され、その後も「A310」などが使われていた。また、最近では我が国の「スバル インプレッサ WRX」69台が配備され、3週間ですでにその内2台がクラッシュしたなんてことも。フランスの警察は「プジョー 309」ディーゼルの廉価グレードに、高性能グレード「GTI」のサスペンションとDOHCエンジンにターボを追加して搭載した車両を使用していたこともあったとか。

伝説的な警察官と黒いフェラーリ

イタリア警察では臓器輸送も行うという「ランボルギーニ ガヤルド」のパトカーがよく知られているが、1960年代にはフェラーリも実際に警察で使われていた。当時の交通機動隊が採用する黒いボディ・カラーに塗られた写真の「250 GTE2+2」は通称「パンテーラ・ネロ(黒豹)」と呼ばれ、伝説的な英雄であるローマ警察官アルマンド・スパタフォーラのエピソードとともに大変有名だ。

1960年代はじめのローマでは治安が悪く、改造車を使った犯罪や高級車を狙った自動車泥棒が頻発。これを追走するためのクルマとして、ローマ警察には「アルファ ロメオ 1900TI」しかなかったという。ある日、警察署の中でこれらの犯罪に対抗する措置を話し合う会議が開かれていた。「ローマの治安を守るために必要な物は何か?」という上官の質問に、部屋の後方で一人の警察官が立ち上がり、こう答えた。「何が必要か申し上げます、それはフェラーリです!」その言葉を発したのは、優秀な警察官として署内で名前が知られるアルマンド・スパタフォーラ。しばらくの沈黙の後、上官は短くこう答えたという「よし、用意しよう」。

マラネロから2台が届いた黒いフェラーリには、スパタフォーラを含む数名の警察官しか使用が許可されていなかったそうだが、1週間も経たない間に1台が運転ミスによりクラッシュ。残る1台はフェラーリのテスト・ドライバーから運転技術の講習を受けたスパタフォーラのみ(彼のチーム3名という説もあり)が運転を許されていたという。

ローマを舞台にスパタフォーラと彼が乗るフェラーリは多くの活躍を見せ、中でも伝説として語り継がれているのは、ギャングの運転するクルマを追い掛けてトリニタ・ディ・モンティ教会前のスペイン広場に続く大階段を駆け下りた(もちろんフェラーを運転したまま)というエピソード。有名な観光名所だからどんな所かご存じの方も多いだろう。勇敢で運転が上手く、正義とローマ市民を守るために漆黒のフェラーリに乗って日夜働く警察官。人気者にならないわけがない。

ロータリー・エンジンを積む日本のパトカー

最後に我が日本から、マツダのロータリー4シーター・クーペ「RX-8」のパトカーをご紹介。担当されている警察官のお話によると、この車両は市販車同様の速度リミッターが付いているそうだが「高速隊には180km/h以上出る仕様もあると聞いている」そうである。「まあ、一般道で使うには、不便ですよ」。後部座席に人を乗せることもあるのですか? 「取り締まりの時には乗せなきゃしょうがないですから」。そんな業務にも使うんですね。「イベント用という訳じゃありませんからね」。東京都の多摩地区には、これを含めて2台あるそうだ。

スポーツカーをパトカーとして採用することには、どちらかと言えば警察のイメージ向上・広報的な意味合いが大きいのかと思っていたが、少なくともヨーロッパでは昔から意外と"本気で"使われているらしい。実際にカー・チェイスを演じるだけでなく、ルームミラーに映っただけで逃走者に「逃げられそうもない」と思わせ、戦意喪失させることが大事なのだと、あるヨーロッパの警察ではコメントしている。あちらを旅行される際には、珍しいパトカーを見付けても喜んで追い掛けてトラブルにならないようご注意を。

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