2020年12月24日 12時00分 JST | 更新 2020年12月24日 15時25分 JST

出社したがる上司、どうする?リモートワーク導入が企業の生き残りを左右する理由

柔軟な働き方を認めることが、これからの人材獲得の決め手。人材不足に陥らないための改革のポイントを白河桃子さんが提示します

全国で急速に普及したリモートワーク。あなたの会社ではうまくいっていますか?
ハフポストで実施した事前アンケートによると、約8割が「リモートワーク をしたい(続けたい)」という回答が。 

 しかし、実は企業がさまざまな課題を抱えていることが独自取材でわかりました。より快適な働き方を実現するためにはどうしたらいいのか、ジャーナリストの白河桃子さんにお話を伺います。

白河桃子(しらかわ・とうこ)住友商事、リーマンブラザースなどを 経て執筆活動に入る。2008 年中央大学教授山田昌弘氏と『「婚活」時代』を上梓、婚活ブームの火付け役に。内閣官房「働き方改革実現会議」「男女共同参画重点方針調査会」など政府の委員を歴任。働き方改革、ダイバーシティ、女性活躍、ワークライフ・バランス、ジェンダーなどをテーマとする。講演、テレビ出演多数。著書『ハラスメントの境界線 セクハラ・パワハラに戸惑う男たち』『御社の働き方改革、ここが間違ってます!』。相模女子大学大学院特任教授、昭和女子大学客員教授。

「うちの仕事ではできない」と食わず嫌いが多かった

──新型コロナ対策のため、日本企業の多くがリモートワークを導入しました。白河さんは現況をどのようにご覧になっていますか?

白河桃子(以下、白河):日本では初の残業上限の法制化など、働き方改革により、時間効率への意識はすでに変わってきていました。「もう長時間労働の時代ではない」は多くの人が持っている認識だと思います。でも、場所の柔軟化は実現できていなかったんですね。

ところがオリパラのためにテレワークをこれから拡充というタイミングで、新型コロナで急に対応する必要が出てきたわけです。コロナ禍以前にテレワーク(*1)を導入していた企業は19.1%で、月1回など制限があったり、介護や育児がある人に限定的に使われるものでした。

それが緊急事態宣言下ではテレワーク経験者が34.6%、東京23区では55.5%(*2)にまで増えています。

新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(内閣府、令和2年6月21日)より作成
名古屋圏は愛知県、三重県、岐⾩県。⼤阪圏:⼤阪府、京都府、兵庫県、奈良県。地⽅圏は三⼤都市圏以外の北海道と36県。

これまでテレワークは「食わず嫌い」されやすく、「うちの仕事ではできない」と思い込んでいる人が多かった。それが、今回、緊急事態のためいきなり実証実験ができ、働く場所の柔軟化の大きな進展となったと考えています。

ただ、テレワークは本来、サテライトオフィスなどの活用も含めた、場所や時間を限定されない柔軟な働き方です。今回は「自宅限定」という特殊な状況なので、この段階でテレワークの良し悪しを決めるのはまだ早いですね。自社の、チームの業務に最適な形態が選べるように、各社検証中というところです。

*1 「テレワーク」は、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと。主に行政ではこの言葉が浸透しているが、現在「リモートワーク 」も同様の意味で使われている。
*2新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(内閣府、令和2年6月21日)

どうする?「出社したがる上司」問題

──リモートワークを導入しにくい会社もありますよね。ハフポストの取材では、このような声を聞きました。

(Nさん・製造業・技術職・20代)

自動車パーツを製造するレガシー企業。社員数約5,000人

リモートワークが進まないのは業種的に仕方ないと思っています。僕は製品設計の中で解析に携わっていますが、会社のパソコンはデスクトップですし、セキュリティ上、仕事を持ち帰ったことはありません。緊急事態宣言下では時差出勤しました」

「社内にいくつものサーバーがあり、みんな勝手にファイルを作るので情報共有がうまくできません。最近IT部門がやっと立ち上がって、業務効率化を検討中です」

Trevor Williams via Getty Images

白河:工場勤務など、現場にいないと働けないというケースはあります。でも、サーバー管理やリモートデスクトップの導入は会社が予算を投入することで解決できますよね。

重要なのはハードとソフトの問題を分けることです。ハードの問題は会社がお金で解決できる。ソフト面についてはマネジメント、評価設計など、リノベーションが重要です。

会社の中で共通のプラットフォームがなく、データ共有やタスク管理ができていないなど、ノウハウが属人化しているような場合はまずは業務効率改革をしましょう。リモートワーク以前の問題です。

──次は、リモートワークを導入したものの、あまりうまくいっていないというケースです。

(Fさん・旅行ツアーの企画販売・40代)社員数約2,000人。

「個人情報を扱う職業柄、セキュリティの問題でこれまで会社のパソコンは社外持ち出しできませんでした。新型コロナの影響でリモートワークになり、パソコンを自宅に持ち帰って、セキュリティを外部で解除できるようになりました」

「40後半〜50代の上司は部下を見て管理したい、若い社員も会社のほうがプリンターがあって便利だからという理由で出社を希望する人が多いです」

「会社ではペーパーレス化を進めていますが、パンフレットの校正など紙を使った作業が多かったり、ツアー協力先の寺社仏閣との連絡手段がFAXだったりして、なかなかIT化が進みません」

wakila via Getty Images
いまだにファックスでの対応が必要という場合も……

白河:こちらもプリンターといったハードの問題と、部下の管理というソフトの問題ですね。「出社したがる上司」問題は他でも聞きますが、そばにいればマネジメントがうまくいくかというと、そうではありません。

ふだんからコミュニケーションがうまい上司はリモートでも問題ないという事例があります。日本ではマネジメントのスキルがないまま、プレイヤーとして優秀だった人がマネジメント職についていることが多いんです。

「霞ヶ関深夜閉庁要求運動」で署名を持参した際に河野大臣も「人事院でマネジメント研修を進めます」と言っていたほどで、日本企業はマネジメント業務を再設計したり研修する必要もあるでしょう。

FAXが未だに使われていることには私も驚くことがありますが、田舎の小さな施設の方も、皆さん今はスマホを持っていますよね。無理してそのために出社するより「FAXではなく画像を撮って送ってください」みたいな提案をしてもいいんじゃないでしょうか。今ならコロナ禍ですから、前例がなくても許容されやすい。効率化を進めるチャンスでもあります。

仕事が長引く人は、切り上げる必要がないだけかも

──課題はありつつも、前向きにリモートワークを進めているケースも取材しました。

(Kさん・IT企業・代表・30代)社員数約100名。

「3月から全社フルリモートです。トップダウンではなくボトムアップ型の社風で、今回はそれに助けられました。社内のいろんなチームがオンライン朝礼やマインクラフト上で社屋建設など独自に企画し、社員のモチベーション維持に貢献してくれています。

今回は、特に意識して若い社員の意見を聞くようにしました。パンデミックのような未曾有の事態に対応する中で、改めて若い価値観の大切さを感じました」

白河:これは「ダイバーシティ」「心理的な安全性」の賜物です。年齢や性別のダイバーシティが実現していたとしても、心理的な安全性がないと意見が言えません。この2つがあることで、フルリモートという新しい形態にうまく移行できたんですね。そして働き方を変えようとする本当の目的は、このような一人ひとりの内発的な行動を引き出すことです。良い成功事例ですね。

monzenmachi via Getty Images

──しかし、リモートワークに慣れている人ほど長時間労働になる傾向があったそうです。それはどうやってマネジメントするべきでしょうか。

白河:「見える化」が必要です。共有して、仕事の量やクオリティが適切かなどを検討します。個人のこだわりで必要以上に時間をかけているようであれば、「社内資料なのでテキストのみで作成。クオリティにこだわる必要はない」などとルール化し、その仕事のパーパス(目的)を明確にすると良いです。

また、仕事を長く続けてしまう人は、「切り上げる必要がない」ことも一因となっています。子どものお迎えといった時間的制約がある人は時間のマネジメントに長けています。まずは業務の設計や時間効率化を改革して、リモートワークに生かせるとベストですね。

旧態依然の会社は今、本気で変わるチャンス

──白河さんは大学で教えていますが、学生たちの様子はいかがでしょうか。企業選びの目線も変わってきましたか?

白河:「入学以来、校舎に来ていない」「留学がオンラインになって落ち込んでいる」という声も聞きます。大変なときですが、今大学の1年生、社会人1年目として過ごすことで、変化対応能力は上がっていくはず。オンライン授業で私が操作がうまくできないと、学生たちは臨機応変に対応してくれるので、頼りがいがあるんですね。

そんなデジタルネイティブ世代は、今どこの企業でも欲している人材です。もともと若い世代は「在宅勤務」や「フレックスタイム」がある企業がいいと思っています。そこにアピールするためには、ワークスタイルの柔軟化は必須。「デジタル化が遅れている」「強制的な転勤がある」といった旧態依然の会社は、人材集めに苦戦してしまいます。

d3sign via Getty Images

新型コロナのワクチンが普及したとしても、すぐに社会が元に戻ることはありません。今回は意識変容が起きたので、働き方の変化は不可逆的なものです。

コロナ禍で一時的に働き方を変えるのではなく、先を見ている企業はリモートワーク導入や、時間効率の向上、デジタル化で成果を出している。

柔軟な働き方は、利益や人材獲得などにつながる経営戦略なのです。今は、本気で変わるチャンスのときと考えてください。

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リモートワークはこれまでの働き方の「延長」や「代替」ではなく、組織の風土を変え、イノベーティブな環境を構築するもの──。私たちは働き方そのものに対する意識を、大きく変えるタイミングに来ているのかもしれません。
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(執筆:樋口かおる、編集:清藤千秋)