ルノーのCM、感動を呼ぶ。女性カップルの数十年の大恋愛を凝縮しているから(動画)

2人の女性の同性愛を描いた感動作。実は車のCMだった。

女の子が他の女の子と出会い、恋に落ちる。告白し、疎遠になり、親にカミングアウトし、再会する... なんとも素敵なストーリー。

でも、実は車のCMだった。

フランスの自動車会社、ルノーのイギリス支社の広告動画が今話題になっている。

私はメディアで働くクィアな女性として、このような描写を待っていた。

交換留学プログラムのようなものに参加していると見られる少女が、現地の女の子と出会い、一緒に遊び、仲を深める。次の場面では成長した若者として再会し、海ではしゃぎ、ずぶ濡れのまま車内でキスを交わす。

しかし終盤、輝くオレンジの新車のバックシートに可愛い娘を乗せ、空っぽの道を運転する幸せな2人の場面に差し掛かる頃には、これが何なのかに気づいた。クィアの私の存在を認めてくれたと感じさせ、カフェにいるにも関わらず見ながら大泣きしたこの動画は、私に車を売るための資本主義の手法だったのだ。

そして広告らしく、「The All-NEW RENAULT CLIO (全く新しい ルノー クリオ)」の文字が、「30 YEARS IN THE MAKING(30年の年月を経て)」というメッセージと共に現れた。そのメッセージは、ルノー・クリオ(日本名はルノー・ルーテシア)の歴史のことだと思われるが、それと同時に、この動画で描かれた数十年に渡る大恋愛を意味し、もしかしたらイギリス最大のLGBTQ支援団体Stonewall U.K.の創立30年を示唆しているかもしれない。

もちろん、どれだけ感動的だとはいえ、これはあくまで広告だ、という冷静な見方の人も多い。

私自身クィアな女性として、自分の経験を映画で見ることはスペシャルなものがある。たとえそれが車の広告だとしても。だからといってこの車を買いたい?答えは「ノー」。

この広告が、私が中1のときのサマーキャンプで一緒に歌い恋した子と、いつか再会して一緒に夕暮れをドライブすることへの望みをくれる?これに対しての答えは「もちろんイエス!」だ。

他にも、この広告は、中心となるカップルのエンディングが、他の多くの映画やテレビが描くレズビアンカップルへの描写と比べ良かった、と多くの人々は指摘した。2016年に発表されたLGBTQ支援団体GLAADのレポートでは、2016〜2017年で25人のクィアな女性のキャラクターがテレビ番組の中で死を迎えている。2019〜2020年のレポートでは、改善はしているものの、クィアな女性キャラクターはテレビ上で過度に亡くなっているという。

そのため、このレズビアンの車広告で誰も亡くならなかったことは、多くの人にとっては「勝利」を意味する。それくらいで「勝利」と感じる状況にあるということは、どれだけLGBTQコミュニティの描写が不平等かが分かるだろう。

いずれにせよ、この広告はTwitterで広く拡散され、多くの人が感動し、涙を流しているようだ。

ハフポスト・カナダ版の記事を翻訳・編集しました。

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