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2019年10月20日 10時59分 JST | 更新 2019年10月20日 11時06分 JST

【ラグビーワールドカップ】「超初心者はどう楽しんだら...?」ラグビー協会理事・中竹竜二さんに、魅力と楽しむコツを聞いてみた

「ルールが分からないと楽しめないのでは?」という心配も無用です。

日本が予選4試合を全勝し、史上初のベスト8入りしたラグビーワールドカップ。日本の大躍進で人気に火がつき、「ラグビーの試合をフルで観るのは初めて」という人たちを巻き込んで、日本中が熱狂している。

実は私も、そんな“にわかファン”のひとり。

でも、ワールドカップから興味を持った人からは、「ルールが複雑で分からない」「盛り上がっているけれど…」という声も漏れてくる。

そこで、「にわかファン歓迎」を公言する元U20日本代表監督で、現在日本ラグビーフットボール協会理事の中竹竜二さんに、ラグビーの魅力と初心者が楽しめるポイントを直球質問。10月20日午後7時15分から南アフリカ戦の前に要チェック!

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中竹竜二さん

質問1「ルールがよく分からないのですが

 (中竹さんの答え)

分からなくても大丈夫です。今回のワールドカップに限らず、「ラグビーのルールは分かりづらい」「だから近寄りがたい」という声はたくさん聞いてきました。ご安心ください、ハッキリ言って、理解する必要はありません。正直、競技団体関係者でさえもすべてを正確に説明できる人はいないと思います(笑)。時代に応じてラグビーの公式ルールは変化してきた歴史があり、判定基準も日々更新されていくので、追いつくのは大変です。例えばここ最近では、特に「安全性」への配慮に力を入れていて、危険なタックルへの厳罰化が進んでいます。

ということで「ルールが分からないと楽しめないのでは?」という心配も無用です。ラグビーは、ルールが分からなくても十分に楽しめるくらいの魅力を備えています。実際、「まったく知識がない状態で予選リーグを観たけれど面白かった。感動した」という人は多いのではないでしょうか。

時事通信社
1次リーグ・日本-アイルランド。前半、ラインアウトからボールを出す日本代表の姫野和樹(上)=9月28日、静岡・エコパスタジアム 

質問2「ラグビーならではの魅力って何ですか?」

(中竹さんの答え)

3つあります。一つは、「多様性」。これこそが、ラグビーが他の団体スポーツと差別化されているポイントだと思います。

どのような点が多様性なのかというと、勝利をつかむために必要な役割、そのために必要となる資質のバリエーションの豊かさです。

例えば、スクラムをがっちりと組める体重の重い選手、ラインアウト(ボールがコートの外に出た際に、ボールを投げ入れて再開するセットプレー)で優位となる身長の高い選手、パス回しのうまい選手、足の速い選手と、15人の選手それぞれが“自分の得意を発揮できる”競技です。

また、代表選手になる資格についても国籍よりも「その国に根付いてプレーを続けてきた」ことを重視するので、選手の人種も多様です。これはもともとラグビー発祥のイギリスが、自国の植民地での競技に参加しやすい条件を整えた歴史に起因しますが、結果として、今の時代の最先端の組織編成になっています。

二つ目は「競い合い」の奨励。ラグビーのセットプレーを見ていると、ラインアウト では、両チームが向かい合った間(1メートル幅)にボールを投げ入れなければいけなかったりと、“両者イーブン”の条件で再開されます。味方の選手を目がけて投げるサッカーのスローインとは大きく違う点です。つまり、試合を通じて「圧倒的な優位差」は生まれにくい。ボールを奪い合う頻度が高くなり、それが観る人を飽きさせないポイントになっています。

三つ目は「選手のオーナーシップ」。ラグビーは、団体スポーツの中でも最もコーチの介入度が低い競技です。(試合中もベンチには入れず、観客席にいます。) コーチが指示できるのはハーフタイムだけで、前半後半各40分を、選手たちだけでゲームメイクしなければならない。

つまりキャプテンには強い権限が与えられていて、選手の中でも審判と直接話せるのはキャプテンだけ。象徴的な慣習が、「キャプテンズ・ラン」。これは試合前日の最終調整の練習を指すラグビー用語なのですが、その呼び名どおり「コーチが介入せず、キャプテンの指揮に任せる」のを原則にしているんです。

審判もまた同じ。強い立場で介入せずに、選手同士の話し合いを尊重するシーンは、今回の試合中にも何度も見られました。他の競技には見られる、抗議のシーンもほとんどない。とにかく試合前からコミュニケーションを丁寧にとって、人としての信頼関係を築くことが重視されます。

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1次リーグ・日本-スコットランド。試合後、チームメートに語り掛ける日本代表のリーチマイケル(左から2人目)=13日、横浜国際総合競技場 

質問3「今回の日本代表はなぜこんなに強いのですか?」

(中竹さんの答え)

いろいろな理由はありますが、一番大きいのはマインドの成長でしょう。「One Team」というスローガンのとおり、選手一人ひとりがオーナーシップをもって試合をつくっていく姿勢が揃ってきました。選手が語る言葉からも、「誰の目も気にせず、勝利のために集中して挑む」という強いチャレンジ精神が伝わってきます。

頼もしいのは、それがチーム全員、どの選手にも見られること。実は今回の予選が始まった段階では、キャプテンのリーチ・マイケル選手は不調で、アイルランド戦では控えとして途中出場しています。キャプテンがスタメンから外れるというのは、普通ならネガティブ要因になりがちですが、今回は、逆にチームワークが機能した。リーチ選手にとっても、キャプテンのプレッシャーから一時解き放たれて、一選手としてパフォーマンスを回復することに集中できたのはよかったと思います。実際、この試合以後、彼の調子は上がってきています。

日本チームが強いマインドを育てた背景には、フィジカル(身体)の強化もあります。体格が小さな日本チームがずっと課題としてきたスクラムが、今回は崩れません。「外国人とは体格が違う」という長年の言い訳を捨てさせたのが、前ヘッドコーチのエディー・ジョーンズで、彼は「体格が違っても勝てる鍛え方がある。個々のトレーニングと組み方のスキルで、チームの力を最大化することはできる」と粘り強い指導を続けていました。

例えば、フィジカルの強さで知られる姫野和樹選手がボールを持ち込むと、必ずその後ろに他の選手が付きます。しっかりと結束して体重を加えることで、姫野選手のパワーを1.5倍、2倍へと高めているのです。

世界と互角に戦えるフィジカルを手に入れたことで強気な戦略が可能になりましたし、選手たちには「どこの国よりも自分たちは練習してきた」という自負が相当あるはずです。マインドとフィジカル、両面の成長が日本の強さを本物にしたのだと思います。 

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1次リーグ・日本-スコットランド。決勝トーナメント進出を決め、記念撮影する日本代表ら=13日、横浜国際総合競技場   

質問4「観戦のポイント、見所は?」

(中竹さんの答え)

ラグビーは「自己犠牲のスポーツ」だとよく言われます。俊足の福岡堅樹選手がトライを決めるまでに、どれだけの選手がそれを支え、つないでいるか。「ボールを前に投げてはいけない」という究極の制約の中、危険を恐れず相手にぶつかり、仲間を信じてボールを託していく。よく見ると選手たちは絶えずサインを送り合っていて、緻密なシナリオをいくつも用意しています。

15人の選手の中では試合を通して一度もボールを触らない選手もいますが、全員の貢献がなければ勝利はつかめない。だから、試合が終わった後にはお互いに「お前のおかげで勝てた」と称え合えるのです。たった1人のスーパープレイではなく、“チームがどうつながっていくのか”を注意深く観ると、よりラグビーを楽しめると思います。

ワールドカップを主催するワールドラグビーが掲げる「5つのバリュー」には、ラグビーを楽しむための視点がよく表れています。すなわち、「規律(discipline)」、「情熱(passion)」、「結束(solidarity)」、「尊重(respect)」、「誠実さ(integrity)」。

体格の優れた選手たちがあれだけ激しいぶつかり合いをしながら、反則をしないように規律を守って試合を進行する。相手より体が小さくても、結束し合うことで力を増し、スコアを重ねる。そして、試合が終わればノーサイド。お互いに素晴らしい試合を果たした功績に敬意を払って抱き合う姿には胸を打たれます。

この「ノーサイド」の精神は観客席にも表れていて、両チームのファンが混ざってランダムに座って応援するのが、ラグビーの特徴です。感動的なプレーには敵味方関係なく拍手を送り合う。どちらかのチームのサポーターというより、“ラグビーファン”として両チームのファインプレーを探す気持ちで応援すれば、2倍楽しめます。先入観なく両チームを観られる、にわかファンの皆さんだからこそ勧めたい楽しみ方です。

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1次リーグ・日本-スコットランド。スコットランドに勝利してベスト8進出を決め、盛り上がる観客=13日、横浜国際総合競技場 

質問5「今からラグビーロスが心配です」

(中竹さんの答え)

ワールドカップが終わると、今度は国内リーグが始まりますので、ぜひスタジアムに足を運んでみてください。ただし、レベルはワールドカップとは少々違いますので(笑)、どうか温かく見守ってください。高田馬場の「ノーサイドクラブ」など、ラグビーを楽しめるスポーツバーもありますので、気軽にぜひ足を運んでください。

最後に、にわかファンの皆さんにお願いが一つあります。ラグビーを観ながら「あれ?どうしてこうなの」「もっとこうしたら応援しやすいのに」と感じたら、遠慮なくTwitterなどSNSでどんどんつぶやいてください。ビギナーの第一印象にこそ、日本のラグビー界がもっと進化できる可能性の種があるはずなので、改善のためにどんどん聞かせていただきたいのです。皆さんの期待に応えられるよう、我々も頑張ります。

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1次リーグ・日本-スコットランド。日本代表がスコットランド戦に勝利し、史上初のベスト8進出を果たしたことを知らせる号外を手に取り喜ぶ人たち=10月13日、東京都中央区