「結婚は子を作って育てるため」。国の主張に同性婚訴訟の原告が反発「こういう時代を終わらせたい」

原告は、都合のいい部分の「つまみ食い」で「説得力に欠ける」と強く反論した。
東京地裁に向かう原告と弁護団
東京地裁に向かう原告と弁護団
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

同性同士の結婚を認めないのは、「婚姻が子を作って育てるためのものであるから」。

10月16日に開かれた同性婚の法制化を求める東京地裁の裁判で、国側が同性婚を認めない理由をそう説明し、原告らが反発した。

原告の弁護士たちはこの見解を「過去の文献の自らに都合のいい部分だけを抜き出したものであり、説得力に欠ける」と反論する

■国の主張:結婚は伝統的に、子作りと子育てを目的としている。同性婚は想定されていない

この裁判では「同性カップルに婚姻の自由を与えられていないのは憲法に反する」として、複数の同性カップルが法改正を求めて国を訴えている。

第3回口頭弁論となった今回は、「国が婚姻制度をどう捉えているか」が争点の一つになった。

国は婚姻についての考え方を「伝統的に生殖と子の養育を目的とする男女の結合であった」「婚姻はつねに親子関係を予定し」といった過去の文献を引用して説明。

その上で「結婚とは生殖と密接に結びついて理解されてきているので、異性間のものであることが前提だ」と結論づけた。

さらに明治時代から現在に至るまで、民法は結婚を男女間のものであるということを前提にしてきたので、同性婚の存在は想定されていない。それは今でも同じであると主張した。

■原告の反論:都合のいい部分の「つまみ食い」だ。

熊澤美帆弁護士
熊澤美帆弁護士
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

この主張に対して原告側の弁護士は、「(過去の文献の)自らに都合のいい部分を『つまみ食い』する形で構成」されていて「説得力に欠ける」と強く反論した。

弁護団の1人、熊澤美帆弁護士は「男女間のカップルでも、子供を生まないカップルもいれば、生めないカップルもいます。その一方で原告の小野さんや西川さんのように、同性同士で子供を育てている人もいます」と、家族が多様になっている現実を説明した。

寺原真希子弁護士も、過去の文献から国にとって都合の良い部分を抜き出していると、次のように指摘する。

「国は『伝統的に生殖と子の養育を目的とする』という文言を引用しています。しかし実はそのすぐ後に、『現在はそういうことは重要視されておらず、当事者同士や個人を尊重するようになっている』という趣旨の説明が書かれているのです」

■ただしさんのストーリー。「同性カップルは結婚できないことで差別されています」

原告の一人ただしさん
原告の一人ただしさん
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

原告の1人ただしさんも、法廷で婚姻を求める理由を語った。

ただしさんは物心ついた頃から好きになる相手が男性だった。

しかし、周りにいじめられたくない、愛する親に嫌われたくないという気持ちから、ただしさんは同性愛者であることを家族や友人にひた隠しにしてきた。

思春期には性的指向を変えようと様々な努力もしたが、性的指向が変わることはなかった。「自分は出来損ないなのか」「生まれてこなければよかった」と悩んだこともあるという。

そんなただしさんは今、8年前に出会ったパートナーのかつさんと暮らしている。かつさんのことを「心の拠り所」と呼ぶただしさん。2人で家事を分担し、友人たちを自宅に招いて食事をすることもある。今では両親も2人のことを応援してくれているという。

自分たちの生活は、結婚している男女カップルと何ら変わらない、とただしさんは話す。

その一方で、共同でマンションを購入できない、特別養子縁組などで子供を持つことができないなど、結婚した男女のカップルはできても、自分たちができないことがたくさんある。

「男女のカップルが互いを想い合う気持ちと、私たちの相手を思う気持ちに何か違いがあるのでしょうか」と、ただしさんは訴える。

「性的指向は背の高さや肌の色と同じく、変えることのできないものです。しかし同性カップルは結婚できないことで差別されています。そのことで、同性愛者たちが劣った人間であるかのように扱われます。こういう時代を終わらせたい」

■時代は変わっている

ただしさん(左)と弁護団
ただしさん(左)と弁護団
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

憲法24条1項には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と書かれている。

国はこの「両性」という言葉が男女を指しており「当事者双方の性別が同じである場合に、婚姻を成立させることを想定していない」という主張を繰り返している。

しかし原告の弁護団は、この「両性」という言葉が「男女に限る」ということではなく、旧民法では家長の許しがなければできなかった結婚を、当事者(両性)たちの合意のみでできるようにしたという意味であると指摘している。

昔は同性愛が病気であると考えられていた時代もあったが、現在はその考えが間違っていたことが世界的に周知されている。世界各国で同性婚が法制化され、同性カップルで子育てをする人たちも珍しくなくなってきた。

日本国内でも、社会的な変化は起きている。2015年にスタートしたパートナーシップ制度は、現在27の自治体が導入。日本の総人口の14%を超える人たちが、同性カップルを家族と認める自治体の元で暮らしている、と弁護団は説明する。

さらに、9月に発表された「第6回全国家庭動向調査」では、結婚している女性約6000人のうち69.5%が同性婚を法律で認めるべきだと回答した。

弁護団は、こういった動きを鑑みれば、同性間の婚姻を認めない現在の民法は、憲法に違反すると主張している。

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