2020年11月02日 12時00分 JST | 更新 2020年11月02日 13時17分 JST

SDGsが各国で“必修”になる今。日本の教育現場に求められるものとは?

高校生のSDGs 学習を支援する「SB Student Ambassador 全国大会」が東京、大阪で初開催されました。

小学校は2020年度、中学校は2021年度、そして高校では2022年度から、「新学習指導要領」が全面実施されます。今回の改訂で注目されているのは、「持続可能な社会の創り手の育成」が明記されたこと。つまり、SDGsの担い手を教育の現場から育成することが目指されるようになったのです。 

そして、新学習指導要領の実施を前に、高校ではどのようなSDGs教育がおこなわれているのでしょうか?

10月17日に東京、24日に大阪で開催された「SB Student Ambassador 全国大会」の様子を取材しました。

新学習指導要領の目標は、SDGsの担い手を育成すること

文部科学省によって定められる学習指導要領とは、小学校から高校までの学習内容や、それぞれの教科の教育内容や目標のこと。世界情勢や社会の変化に応じて、およそ10年に一度改訂されています。

今回の改訂では、その前文と総則に「持続可能な社会の創り手の育成」が明記されました。その動きを受け、小学校の家庭科や道徳科、中学校の社会科や理科、技術・家庭科などにも「持続可能」という言葉が使われるなど、持続可能な開発目標(SDGs)に関するページが、さまざまな教科に盛り込まれることとなりました。

Getty Images/iStockphoto
イメージ

今回開催された「SB Student Ambassador 全国大会」は、サステナブル・ブランド ジャパンが高校生のSDGs学習を支援する取り組みの一環です。2021年2月に開催予定の、日本最大規模の“サステナビリティ”に関するコミュニティイベント「サステナブル・ブランド国際会議2021 横浜」。そこに特別招待される高校生「SB Student Ambassador」の選考に向けて、論文作成の事前学習の場として開催されました。

日本大学(東京都千代田区)で開催された東日本ブロックには、23校から163名、関西大学(大阪府吹田市)での西日本ブロックには、19校から144名の高校生が参加。オンラインでの参加校、引率の教員を含めると、合計92校、667名が参加しました。
ハフポスト日本版は、東日本ブロック大会を取材。その様子をお伝えします。

サステナブル・ブランド ジャパン
西日本ブロックの様子

サステナビリティ“先駆者”として登壇したのは、株式会社日本旅行、株式会社ベネッセホールディングス、熊本県、サントリーホールディングス株式会社、積水化学工業株式会社。それぞれ「ツーリズム」「教育」「森と水の保全」「気候変動」のテーマに合わせ、ビジネス×SDGsの取り組みを高校生にシェアしました。

【教育】これから求められる「質の高い学び」とは何か?

教育部門では、ベネッセ教育総合研究所 主席研究員の小村俊平さんが登壇。小村さんは参加者に向け、「なぜ私たちは、身の回りのことに関心を持たずに世界に目を向けるのでしょう?」と問いかけました。

YASUHIRO SUZUKI
ベネッセ教育総合研究所 主席研究員の小村俊平さん

確かに世界では、学校に通うことができない子どもが未だに多く、性別や地域によって教育機会に大きな差があるのが現状です。一方、日本でも、家庭の経済力による教育格差も問題になっています。コロナ禍でオンライン授業のニーズが高まった際にも、地域や学校、家庭による教育環境の格差が話題となりました。

小村さんは、OECD(経済協力開発機構)など国際機関のデータから、世界の中でも日本の義務教育はトップレベルであることを説明。その上で、「これから求められる、質の高い教育とは?」をグループワークのテーマに設定しました。

小村さんは「“良いノート”の定義も、学校や先生、教科ごとに違いますよね。SDGsの目標に定められている『質の高い教育をみんなに』というのは、全員に同じ教育を提供するということではないんです」と話します。

「SDGsは、立場、世代、国を超えて一緒に考えることができる共通言語。自分とは異なる環境にいる同世代の意見を聞いて、SDGsを何のために学ぶのか、ということを実体験することが重要だと思います」。

【森と水の保全】水を育む森づくりの活動

「森と水の保全」の分野には、熊本県から公益財団法人「肥後の水とみどりの愛護基金」常務理事の大野芳範さんと、サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ推進部 チーフスペシャリストの山田健さんが登壇しました。

熊本市とその周辺11市町村は、上水道水源のほぼ100%を地下水でまかなう「地下水都市」。大野さんは、県内1,333箇所に及ぶ湧水を守る同財団の活動を紹介し、生活基盤である水を守るアクションがSDGsにつながることを説明しました。

続いて、「サントリーは水の会社」と話す山田さんが、1973年から同社でおこなわれている環境活動や、良質な水の持続可能性を守るために、事業としておこなっている水源林の保全活動「天然水の森」を紹介しました。

サステナブル・ブランド ジャパン
熊本県の公益財団法人「肥後の水とみどりの愛護基金」常務理事の大野芳範さん

グループワークは「水の資源を守るためには?」をテーマに、使えない水を、使える水にするためのアクションを考えました。

「水の質、環境も、地域ごとに事情が全く違う。身近な“水”という存在から、自然に委ねられるところは自然の力に任せる、必要なところに人の力を加える、というSDGsの手法を学んでもらえたら」と山田さんは話します。

【気候変動】積水化学グループの製品を通じた社会課題解決

気候変動をテーマとした講演には、積水化学工業株式会社ESG経営推進部から三浦仁美さん、野澤育子さんが登壇。住宅や管工機材の生産過程、また建設現場において、気候変動の解決にどう貢献しているのか、その取り組みを紹介しました。

YASUHIRO SUZUKI
積水化学工業株式会社ESG経営推進部の三浦仁美さん

野澤さんは「私たちが扱う製品は、高校生にはあまり馴染みのないものかもしれません。しかし、原料の調達から消費という製品の一生を通じてSDGsの課題解決への貢献を目指す当社の取り組みを知って、今、手に持っているペンやペットボトルの一生について考え、次世代を担う高校生が、自分たちには何ができるのか、意識するきっかけになれば」と話します。

ある参加校の教員は、こう話します。「SDGsは教科として形式立っていないからこそ、色々な視点からの意見が集まる良さもあれば、教える難しさもある。こうして企業の具体的な取り組みと結びつけて紹介してもらえると、生徒もわかりやすいし、私たちも、どの教科に含めて教えれば良いか、すごく参考になります」。

気候変動の分野では、「“原料の調達から廃棄まで”サステナブルなプロセス」をテーマに、グループワークがおこなわれました。

【観光】サステナブルツーリズム~シンガポールの事例から~

株式会社日本旅行 法人営業統括本部SDGs推進チームの椎葉隆介さんは、注目を集める「持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)」の一環として、海外におけるサステナビリティの先進的な取り組みを学ぶ教育旅行について紹介しました。同社シンガポール支店長もリモート登壇。生物多様性を尊重し、保護することを人々に奨励しながら世界をリードする動物園「Wildlife Reserves Singapore」を取り上げました。

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株式会社日本旅行シンガポール支店長 細谷浩明さんのプレゼン

グループワークのテーマは、「高校生当事者に求められる、SDGsが学べるサステナブル修学旅行とは?」。

参加者は、観光やアクティビティを通じてSDGsを学び、貢献できる修学旅行のプランを考え、発表しました。

SDGs」は、学校、地域、世代を超えた共通言語

プログラムの最後には、各テーマ代表のグループが参加者全員に向けてアイデアを発表しました。

YASUHIRO SUZUKI
「教育」をテーマにしたグループの発表

「教育」のグループは、新型コロナでもニーズが高まった教育のペーパーレス・デジタル化に注目。「スマホでテストを受けられるようになると、カンニングする人もいるのでは?」「それを防ぐためには、生徒と先生の関係性が一つのポイントになる」…など、高校生当事者らしい目線で、「これから求められる、質の高い教育」について考えました。 

また、「観光」のグループは、シンガポールでのサステナブル・ツーリズムのプランを発表。

YASUHIRO SUZUKI
「観光」をテーマにしたグループの発表

「移動手段を自転車にして、環境に優しく」「ハッシュタグを活用して、関心がある人に情報が届くように」など、さまざまなアイデアを取り入れた3日間の教育旅行を企画しました。    

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登壇企業や、参加校の教員のみなさんが話してくれたように、SDGsは世代、地域、そして国境を超えて話し合うことができる“共通言語”になっています。

新学習指導要領の実施で、ますます求められるSDGs学習。「SB Student Ambassador 全国大会」は、企業、教員、学生、様々な世代と立場にとって、新たな学びの場を提供しています。
SB2021 Student ambassadorへの応募はこちらから。