これからの経済
2020年03月04日 13時13分 JST

SDGs=経営の本質とは?今日、金融機関がSDGsで注目されるわけ。

「三方良し」や「論語と算盤」が昔からあるように、日本にはSDGsが提唱する考え方がベースとしてある。

サステナブル・ブランド ジャパン

これからの地方創生のカギを握ると言われる金融機関。地方の金融機関にはいま、SDGsを軸にして地域課題の解決に取り組み、SDGsを考慮した金融支援を通して地域経済を活性化し、持続可能なまちづくりを推進することが期待されている。2月19日開催の「全国SDGs未来都市ブランド会議」には、そうした「地方創生SDGs金融」の役割を唱える肥後銀行の笠原慶久頭取が登壇する。「SDGsは銀行経営の本質」と話す笠原頭取に笹谷秀光・未来まちづくりフォーラム実行委員長が話を聞いた。

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2月19日に開催する全国SDGs未来都市ブランド会議では、持続可能なまちづくりの実現に向けたSDGs達成の取り組みを地域のブランド価値につなげること、そしてその好事例を国内外に広めることを目指しています。

笹谷:肥後銀行は昨年、銀行として初めて「日本経営品質賞」を受賞されました。そうしたタイミングで、本会議のスペシャル・シンポジウム「地方創生・企業のイノベーション力をどう伸ばすか」にご登壇いただけることを楽しみにしております。当日は、笠原頭取と内閣府地方創生推進事務局の遠藤健太郎参事官が登壇され、ファシリテーター兼コメンテーターを私が務めます。地方金融を代表して、色々なお話を聞かせていただきたいと思っています。

まずは、どのような思いでご登壇されるか、期待することなどお聞かせください。

笠原慶久頭取(以下、笠原):「SDGs」と英語で言うと新しい考えのような気がします。しかし「三方良し」や「論語と算盤」が昔からあるように、日本にはSDGsが提唱する考え方がベースとしてあると思います。それを世界的なフレームワークとしてやっていくというものですから、まさに本気で取り組み、世界をリードしていかないといけないと思っています。それを推進する全国SDGs未来都市ブランド会議に参画できることを嬉しく思います。

笹谷:私は、三方良しに発信性を加えた「発信型三方良し」を提唱しています。日本は同質社会ですから、「分かる人には分かる」とか「陰徳善事」という考え方があります。でもグローバル時代にそれでは通用しません。

肥後銀行の取り組みを見ていますと、非常に発信性があります。良いことはどんどん発信しないと伝わらないし、伝わらないと仲間が増えない。仲間が増えないとイノベーションが起こらない。そういう問題がありますから、地方銀行としてリーダーシップを握っていただきたいと思っています。

笠原:発信性については同感です。ステークホルダーとの関係に配慮し、関係を良くするよう努めていく必要があります。そのステークホルダーの中にはパブリックも含まれています。パブリックリレーションズは非常に重要だと考えています。

やっていることを過度に言う必要はありませんが、正確に過不足なく伝えていくことがいまは求められているのではないでしょうか。SDGsについても同じで、積極的に発信型SDGsを行っていくことに賛同します。

実は、日本経営品質賞に応募したのも発信性が重要と考えたからです。肥後銀行は、企業理念に基づき、お客様第一主義、そして地域も行員も大切にする経営をずっと続けてきました。今回のように日本経営品質賞委員会の客観的なフレームワークで評価をしてもらい、賞を受賞することで、社外に「われわれはこういう企業だ」とお伝えできます。それに日本経営品質賞は評価の指標としても分かりやすいです。

銀行業界での受賞は初めてで、金融機関としても第一生命に続き2社目です。そういう意味では社内でも喜んでおります。評価項目のすべてが高いわけではないので、低いものは上げていくよう努めていかないといけません。

SDGsは銀行経営の本質

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笹谷:いまSDGsをどのように経営の中で設計していますか。

笠原:日本経営品質賞とSDGsは表裏のようなものだと思っています。日本経営品質賞では、経営品質の基本理念「顧客本位」「独自能力」「社員重視」「社会との調和」の4つの要素をもとに評価を行います。SDGsも環境、社会、経済成長の3つに分類でき、求められていることは同じだと思います。

私たちの経営は、企業理念に基づく現場重視の経営です。さきほどもお伝えした通り、企業理念はお客様起点であり、地域の発展に貢献し、社員が生き生きと働くというものです。ですから、「SDGsイコールわれわれの経営の本質」と理解しています。社員に対しても、そういうことだからSDGsに真剣に取り組もうと伝えています。

笹谷:SDGsの中で企業の本業力を使うということは創造性とイノベーションにつながり、社会を変革する力になります。さらに、銀行は大きなプラットフォーマ―です。まず部署内の改革に使えて、行員のモチベーションを上げ、そのモチベーションの上がった社員がそれぞれのお客様に対して色々な提案や商品開発を行うようになります。銀行のようなプラットフォーマ―がSDGs化しますと波及力が非常に大きいですね。

笠原:地方銀行ですから、地元の中小企業の方や地方自治体と密接に取引をしております。まずはそういう方々にSDGsを啓発して広めていく。その方々がSDGsに取り組むことで、さらに地域がSDGsに取り組んでいくことになります。その重要な役割をわれわれが担っているのではないかと思います。

内閣府のSDGs推進の枠組みの中でも、金融機関に期待されることは大きいです。遠藤・内閣府参事官も「地方創生に向けた SDGs金融」を浸透させることに取り組んでいます。それを、われわれが地方自治体と連携してやっていかないといけないと思っています。

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笹谷:その点が素晴らしいです。SDGsをビジネス目線で見たとき、「統合性」が重要になります。環境、社会を大事にしながらも、必ず経済性を追求し、3点が整合性と統合性をもつ必要があります。社会や環境に良いことであっても、採算性や関係者の理解が得られなければ商品化できず、継続性が生まれません。

マイケル・ポーター氏は、社会的課題を解決しながら経済価値を見出そうとCSV(共通価値の創造)を提唱しています。しかし、社会的課題とは何かというところの客観性が低いです。そこで、「SDGsが社会的課題」と考えれば、非常に客観力の高いCSVになります。

肥後銀行はそういう考え方を長く構築されてきました。これからはSDGsをさらに普及させることで関係者にとってけん引力、模範力になるのではないかと期待をしています。

笠原:CSVとSDGsも表裏だと思います。CSVの価値は、われわれ自身が定義して具体化していかないといけません。SDGsはフレームワークの中に17の価値創造の方向性が示されています。何に取り組むか選ぶことができるから、行動しやすいですよね。

SDGsをしっかり理解し、われわれに一体何ができるのかということを考えることは、外に発信していく上でも重要です。われわれを含め、どの企業もSDGsのフレームワークをしっかりと理解をして、これを本業の中で適応していくということが求められているのではないかと思います。

笹谷:2014年、地方創生を推進する「まち・ひと・しごと創生法」が制定されました。昨年末、具体策を盛り込んだ第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定され、内閣府がSDGs色を強め、金融の重要性に焦点を当てています。お金をまわし、みんなのアイデアが実現していくという地方金融の役割を見える化しようとする動きがあります。

「まち・ひと・しごと創生法」では、地方創生において産官学金労言の関係者連携を進めることが重要とされています。地方金融は幅広い役割を担うことができます。産官学金労言の一角に入り、重要なアクターとして期待が高まっていることをどう思われますか。

笠原:徹底的に連携していかないといけないなと思います。産官学金労言がベクトルを合わせて連携していくことこそがSDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」ではないでしょうか。そして、お金を回すこともパートナーシップの一つだと思います。連携をしてベクトルを合わすためのフレームワークをつくることも大事です。

1月29日、肥後銀行とSDGs未来都市の熊本市、公益財団法人地方経済総合研究所(熊本市) の3者で「SDGs推進に関する連携協定」を結びました。熊本市だけではなく、熊本県とも一緒にSDGsについて真剣に取り組んでいきたいと思っています。

県と市とわれわれが一体になって、企業の登録認証制度をつくり、われわれが登録認証制度を啓発し、登録認証を受けた企業に対して金融が優遇措置をとり、マスコミがそれを広く伝えていく。さらに経済同友会や商工会議所などの産業界、経済界の団体も団結して推進することができると、地方の経済と社会はSDGsに向かってしっかり進むのではないかと思います。

笹谷:ここまでSDGsを自分ごと化して、使いこなされている経営者の方がいることを大変嬉しく思います。金融全体の動きの中でリーダーシップをとっていただき、より輝く企業になっていただきたいと思います。

笠原頭取はこれから自然資本や文化資本が非常に重要になっていくという先見の明をお持ちだと聞いております。肥後銀行の本店は、熊本の風土と文化を表現した棚田と熊本城の武者返しをモチーフにされ、さらに1階では熊本にゆかりのある歴史的な遺産・文化財を展示する「肥後の里山ギャラリー」を設けています。肥後の良さを徹底的に見直すことをみんなと一緒にやろうというのはSDGsとも親和性が高く、きわめて発信性が高いです。

セッション当日は、今回のお話のエッセンスをさらに深堀りしていただけることを期待しています。

笠原:昨年7月に策定した投融資に関する指針では、脱炭素社会の実現に向けた取り組みや、生物多様性の保全、農林水産業や観光業など地域振興、文化財の保全事業などに積極的に支援をすることを掲げました。ESG投融資の目標額として5000億円という数字を掲げています。それについてもご報告できるようにしたいと思っています。


笹谷:楽しみにしております。

小松 遥香 (Haruka Komatsu)

Sustainable Brands Japan 編集局デスク。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。