アートとカルチャー
2019年10月06日 15時14分 JST

さまざまな役演じる志尊淳さんが挑んだ新境地とは? 「世間の方が描くイメージと今回の役、少し違うかも」

トランスジェンダーの主人公など、さまざまな作品に取り組んできた志尊淳さん。今回、別の顔を演じたことで見えたものは何なのか。

写真:米田志津美
志尊淳さん

累計観客動員450万人の人気バトルアクションシリーズ『HiGH&LOW』と、原作・髙橋ヒロシの伝説的不良コミック「クローズ」「WORST」がコラボを果たした『HiGH&LOW THE WORST』。

この作品に、「クローズ」「WORST」シリーズから“殺し屋軍団・鳳仙学園”の頭・佐智雄役として出演する志尊淳さん。

トランスジェンダーの主人公を演じた『女子的生活』や、16歳から62歳までの女性たちとの刹那の愛を描いた連続短篇集『潤一』など、さまざまな作品に取り組んできた志尊さんが、今回、また別の顔を演じたことで見えたものは何なのか。

写真:米田志津美
志尊淳さん

――『HiGH&LOW THE WORST』では、アクションが斬新でしたが、現場で実際に見ていかがでしたか?

最先端という感じがしました。

カメラワークは大内貴仁さんが指定してやられていて、見たこともない装置だらけで。ワイヤーにカメラを吊るしてバーンって投げて、カメラのルートをワイヤーで作って、そうじゃないと追いかけられないカメラワークになってるんですよね。鬼邪高校のシーンで、円になるように廻しながら撮影しているのもすごく斬新でした。

――河川敷のカメラワークも斬新でしたね。

ワイヤーのカメラが移動しながらハイスピードで撮ってるので、異空間みたいな広がりになるんですよね。しかも、アクションはものすごい手数もあって。こんな映像が本当に実現できるんだなって思いました。それは、久保茂昭監督と大内さんの求めるものとが化学反応を起こした結果なんだなと思いました。

――撮られている俳優としてはいかがでしたか?

僕のアクションシーンはワンカットで30手もあるシーンだったんですけど、何度もやりました。でも、その中で実際使われたのは、トラブルのあったときのカットなんです。

一度、覚えたアクションの手を忘れてしまって、そのときに自分が感じたままで反応をしていたんですけど、それがリアルで、作って出るものではないということで採用されました。

©2019「HiGH&LOW THE WORST」製作委員会 ©髙橋ヒロシ(秋田書店) HI-AX
写真:米田志津美
志尊淳さん

――現場では、いろいろ提案して、士気を高めるような立場でもあったと聞きました。 

現場で感じたことを、打診していました。最初からその空気があったわけではなかったんですけど…感じるものを提言していくべきだなと思ったんです。

それがもし間違っていても正解だとしても、言わないと変わらないじゃないですか。だから、発言していこうというマインドにチームがなっていったし、それを僕らのチームでは僕が代表して伝える役割をしていました。

――志尊さんが考えて提案したことが採用されることも多かったと聞きました。

僕が演じる佐智雄の深い部分まで考えて、いろいろ相談させて頂きました。

鳳仙の血だらけの制服が出てくるシーンは台本になかったんですけど、佐智雄が戦う理由はそこにあるなと思って。監督からは「一回持ち帰らせてください」と言われて当日もそのシーンはなかったんですけど、僕から「一回、段取りを見てください」ということで、それを見た上で採用して頂きました。

この作品は、言葉ではないところでも感じさせるものがあると思ったので、それができただけでも本当によかったなと思いました。

――やっぱり、今回は志尊さんがリーダーを務める「鳳仙」チームと、鬼邪高校とでは、それぞれがチームとして動いていた感じですか?

そうですね。鳳仙は鳳仙で固まっていることが多かったです。僕としてもすごく居心地がよかったです。目指すものが同じでみんなが同じ方向を向いていたので、説明も必要がないというか。

こういう現場って、無理に合わせてそうなるのではなく、それぞれの意思で貪欲になった結果そろっていた、というのが一番いいと思っていたので。

写真:米田志津美
志尊淳さん

――映画の中で、志尊さんが演じる佐智雄が出会うことになる楓士雄役の川村壱馬さんとは、チームが違うものの、現場でもけっこう交流してたそうですね。 

佐智雄として、楓士雄とのコミュニケーションは大事だと思っていて。もちろん、コミュニケーションをとらなくてもやっていけるんだとは思うのですが、壱馬が孤高な感じで、ひとりでたたずんでることが多かったんですよ。

それを見て、自分にもそのような時があったなって思って。それで、僕のほうから話しかけたら、すぐに心を開いてくれるようになって、すごくかわいいなって思いました。

それからはずっと壱馬は一緒にいましたね。壱馬は基本、鳳仙の楽屋にいて。楓士雄というキャラ自体が人を選ばず仲良くなれるキャラなので、本当にそのまんまだなと思いました。僕らが監督に相談しにいくときも、「僕もこっちのほうがいいと思います」って言ってくれたり(笑)。

――志尊さんにも、そういう壱馬さんに通じる孤高な感じがあるんですか?

昔から、群像劇をやるときは「我に返る瞬間」があるんです。

最初の頃は先輩に合わせてきてたんですけど、二十歳過ぎたくらいに、合わせる必要はないんじゃないかなと思って。それは決して悪い意味ではなく。

自分のペースでいくというか、自分の考えてることも尊重しながらやっていこうと思ったんです。壱馬のたたずまいからは、「慣れ合いでやってないぞ」という雰囲気を感じたので、一応、先輩として、それに加えて支えてあげられることは支えてあげたいなって強く思ったんです。

©2019「HiGH&LOW THE WORST」製作委員会 ©髙橋ヒロシ(秋田書店) HI-AX

――群像劇のほうが我に返る瞬間がある、というのはすごくおもしろいですね。

あると思いますよ。自分の考えてるものと周りが考えてることが違うなと感じる場面ってどこでもあると思うんですが、そういうときに我に返るというか。もちろん、どんなときでも合わせられる人はいると思いますけど…アプローチの仕方は人それぞれ違う。だから、それぞれが改まって芝居の話をすることもないんですよ。意見のズレは生じるものだし、それぞれが守りたい「距離感」というものがあって。その部分でも壱馬とは似てるものがあると思いました。

――志尊さんで群像劇というと、『帝一の國』を思い浮かべます。

『帝一の國』のときは、芝居の話も一切しないんだけど、それぞれがそれぞれの表現を尊重していましたね。それに、『帝一』のときは、僕が一番後輩だったので、ついていこうと必死でした。

――やっぱり『帝一の國』は、若手俳優の中でも、経験のある方が多かったというのもあるんですかね。

飲みに行ってもくだらない話しかしない(笑)。なのに、カメラがまわったら、一瞬で全員がキャラクターの芝居になっていました。あとは、自分がどういう立場で作品に関わっているかで、空気の作り方も変わってくるかもしれないですね。自分が引っ張る立場であったら、作品のために立ち振る舞いから考えないといけないなと毎回、自負しますね。

――今回だと、これまで続いてきた『HiGH&LOW』の世界に、『クローズ』『WORST』のキャラクターとして入っていくこととか、また今までイメージがあまりなかったアクションをやったり、強い役をやることに対してのプレッシャーはありましたか?

僕は『HiGH&LOW』や『クローズ』『WORST』の世界が好きだからこそいろいろ考えましたけど、僕にお話を頂いた時に、「屈強な強さ」を求められているわけではないんだと思いました。僕自身は表面的な強さよりも、内側から出るもの、自分が感じたかっこよさ……、具体的に言葉で表すのは難しいんですけど、それを体現できるように意識しました。そして、そこが気にしているポイントでもあります。公開してみないと、どう評価して頂けるかわからないのですが。

――もちろん、そういう最初に言われていたような懸念は、出来上がった作品からはぜんぜん思い出しませんでした。志尊さんは、野球部だった学生時代は、もっと屈強な感じもあったとのことですが。

内側は変わってないと思います。もしかしたら、世間の方が僕に描くイメージと、今回の役は少し違うのかもしれません。ただ、その状況は逆に僕にとってはプラスだな、と思っていて。

役によって違う顔を見せていきたいんです。役のイメージが強いと、そのイメージが先行することもあると思うんですが...やっぱり役と向き合って出てくるものを見ている人に感じとっていただければいいな、と思います。

そのためにも、とにかく撮影に入ったら役に徹する、ということをすごく考えていました。いろいろな役をもらって、それぞれの頂いた役を探求していくことで、表現できるものの幅を広げていきたいと思っています。

写真:米田志津美
志尊淳さん
写真:米田志津美
志尊淳さん

【作品情報】「HiGH&LOW THE WORST」

企画プロデュース:EXILE HIRO
監督:久保茂昭(「HiGH&LOW」シリーズ)
アクション監督:大内貴仁(「HiGH&LOW」シリーズ/「るろうに剣心」シリーズ)
脚本:髙橋ヒロシ / 平沼紀久、増本庄一郎、渡辺啓

出演:
鬼邪高校・全日制…川村壱馬・吉野北人・福山康平・鈴木昂秀・龍・佐藤流司・うえきやサトシ・神尾楓珠・中島健/前田公輝
鬼邪高校・定時制…山田裕貴・鈴木貴之・一ノ瀬ワタル・青木健・清原翔・陳内将
鳳仙学園…志尊淳・塩野瑛久・葵揚・小柳心・荒井敦史・坂口涼太郎
希望ヶ丘団地・幼馴染…白洲迅・中務裕太・小森隼・富田望生・矢野聖人

(筆者:西森路代 @mijiyooon / 編集:生田綾 @ayikuta ハフポスト日本版ニュースエディター)