共働きに有利な「960万円の所得制限」与党でも異論。高市早苗氏「非常に不公平」と指摘

自公が合意した18歳以下の子どもへの10万円相当の給付。夫婦のうち高い方の年収のみを基準とする見込みで、共働き家庭に有利になっています。
日本記者クラブで開かれた自民党総裁選候補者の討論会で話す高市早苗氏(9月18日撮影)
日本記者クラブで開かれた自民党総裁選候補者の討論会で話す高市早苗氏(9月18日撮影)
EUGENE HOSHIKO via Getty Images

自民党と公明党が合意した「18歳以下の子どもへの10万円相当の給付」について、給付が除外される「960万円の所得制限」のラインが不公平だとSNS上で不満の声が続出している。

夫婦のうち高い方の年収のみを基準とするため、共働き家庭に有利だからだ。自民党の高市早苗政調会長が「非常に不公平」と指摘するなど与党内でも異論が出ている。

■「年収960万円」の所得制限とは?

10万円給付は、もともと公明党の衆院選公約だった。自民党総裁の岸田文雄首相と公明党の山口那津男代表が11月10日、首相官邸で会談。公明党が自民党の主張を受け入れ、所得制限で合意した。山口代表は同日、記者団に「児童手当も960万円の所得制限で行っている。従って、その仕組みを活用すればスピーディーに給付ができる」と述べた

児童手当の場合、児童が2人いて夫婦のうち高い方の年収が960万円以上の世帯は、児童手当が満額ではなく、子供一人あたり月額5000円の特例給付となっている。以下の図表のように、扶養親族の人数によって微妙に変わり、きっちり960万円とは限らないので注意が必要だ。

児童手当の所得制限の一覧表(内閣府の公式サイトより)
児童手当の所得制限の一覧表(内閣府の公式サイトより)
cao.go.jp

■「片働き高収入ばかり負担重」との批判も

児童手当の所得制限をめぐっては、以前から「共働きに有利」との指摘があった。今回の「10万円給付」でも、たとえば夫婦で800万円ずつの年収計1600万円の世帯は支給対象。一方で、夫や妻のみが働いている「片働き」で年収960万円の世帯には支給されない見込みだ。

このため「片働き高収入ばかり負担重」「世帯収入で平等に決めて欲しい」といった批判が、SNS上で続出していた。

岸田首相の10日の記者会見でも、所得制限について質問が出た。夫婦で800万円ずつの年収計1600万円の世帯でも給付の対象になるのかとの問いに、岸田首相は「世帯主ごと(の収入)で判断する。(対象に)なります」と答えた

■「世帯の収入じゃなくて、個人個人の収入だと非常に不公平」と高市氏

10万円給付の所得制限について、与党内からも異論が出ている。

自民党の高市早苗政調会長は12日に、ネット放送「言論テレビ」に出演。ジャーナリストの櫻井よしこ氏との対談の中で、10万円給付について「幹事長同士が話し合い、党の代表者同士が合意をされた内容」として、大筋では「変更のしようがない」と話した。

その上で15日に開かれる自民党の政調全体会議の中で「さまざまなご意見が出てくると思います」との見解を示し、所得制限について以下のように述べた。

「茂木幹事長の記者会見を見ても『年収960万円』までの世帯という言い方をしている。共働き家庭でそれぞれが960(万円)ぐらい稼いでいると、すごい金額になりますけども、財務省でまとめているペーパーにも世帯という書き方をしている。ここ数日、テレビで(報じているように)、世帯の収入じゃなくて、個人個人の収入だと非常に不公平が起きてしまいますよね。共働きの方が多い現状ですから。そこのところは意見が出てくると思いますね」

【UPDATE】11月15日に開かれた自民党の政調全体会議では、18歳以下への10万円相当の給付について、所得制限の修正を求めるなどの異論は出なかったと時事ドットコムが報じた。(11/16 09:25)

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