がんのリスク「飲酒・喫煙」でアップ 遺伝子レベルで裏付け

小川誠司・京都大教授は「がんの初期の発生を解き明かす大きな手がかりだ」。
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がんのリスク「飲酒・喫煙」で↑ 遺伝子レベルで裏付け

がんの原因になりうる「遺伝子の変異」は、健康な人でも多く起き、それは加齢や飲酒、喫煙によって増える――。そんな研究報告を、京都大や東京大などのチームがまとめた。加齢や飲酒、喫煙が、がんのリスクを高めることは統計学的な傾向で明らかになっているが、遺伝子レベルでも裏付けられた形だ。英科学誌ネイチャー電子版に3日、掲載される。

チームは、喫煙や飲酒とがんの関連が大きいとされる「食道」に着目。23~85歳の食道がん患者を含む134人について、がんになっていない「正常な食道の組織」を採取。自身の血液細胞の遺伝子と比較し、遺伝子の変異がどれほど起きているか、網羅的に調べた。

すると、134人のうち食道がんの患者は全員で、健康な場合も94%の人で、何らかの遺伝子の変異がみられた。がん患者かどうかにかかわらず、変異の数は加齢に伴って増加。飲酒や喫煙の習慣がある人は、ない人に比べて、変異の数が増すペースが統計的に有意に高まっていた。がんとの関連が深いとされる「がん関連遺伝子」でも、同様の傾向がみられた。

ただし、がん細胞で一般的にみられる遺伝子変異のパターンとは異なる部分もあったという。チームの小川誠司・京都大教授(腫瘍(しゅよう)生物学)は今回の研究成果について「がんの初期の発生を解き明かす大きな手がかりだ。一方で、(正常な細胞が)がんになるにはまだ段階があり、飲酒や喫煙をしない人はそれほど心配することはない」と話す。(野中良祐)

(朝日新聞デジタル 2019年01月03日 16時27分)

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