APIによってソフトウェアエンジニアリングは新時代に突入する

これからは、ユーザーインターフェースではなく、API ― ソフトウェアプログラム同志のやりとりを統治するルール ― がソフトウェアを支配する時代になる。
TechCrunch Japan

これからは、ユーザーインターフェースではなく、API ― ソフトウェアプログラム同志のやりとりを統治するルール ― がソフトウェアを支配する時代になる。

Intel CEO Brian Krzanichが8月に同社の年次デベロッパーフォーラムで、モノのインターネットに力を入れることを宣言した時、彼は既に多くの人々が知っていることを強調した ― ソフトウェアエンジニアリング新時代の夜明け。それはAPIファースト設計と呼ばれ、これを採用したデベロッパーは途方もない機会を得る ― そして、そうでないデベロッパー(および会社)は大きなリスクを負う。

Intelは、APIの重要性を認識している唯一の大企業ではない。最近IBMは、 IBM BluemixでAPI管理の分野に参入した。これは企業が自分たちのAPIをデベロッパーがどのように使っているかを知るためのサービスで、そのフィードバックに沿って設計できる。OracleはAPI管理スイートを6月に拡張し、成長する収益機会に乗じようとしている。他のプレーヤーたちも、API中心ソフトウェア開発の準備をここ数年着々と進めている。

通常、新しい製品や機能を設計する際、デベロッパーはまずUI画面をデザインし、ユーザー体験がどうなるかを示すよう求められる。このアプローチが一般的になった理由はいくらでもある。タッチスクリーンは新しい世代のコンピューター利用を可能にし、われわれがハードウェアと対話する方法を根本から変えた。

つながったデバイス、無人走行車、および高度な医療テクノロジーは、APIファースト設計が可能にする新技術のごくわずかな例にすぎない。

AppleとGoogleは、消費者にとっても企業にとっても使いやすさが優先事項であることを証明した。さらに、拡張/仮想現実プラットフォームの台頭は、人々がコンテンツを体験する新しい方法を常に探求していることを証明した。しかしデバイスが急増するにつれ、システム-システム間の対話が、人-システム間の対話を支配し始めた。システムは美しいインターフェースを必要とせず、必要なのは確実に定義された契約だ。彼らはAPIを必要としている。

モバイルだけでも、異なるインターフェースを10種類は思いつくことができる。さらにはウェブ、クライアント-サーバー、シンクライアントと挙げればキリがない。すべてを掌握する唯一の方法はAPIレイヤーに集中することだ。離散化したインターフェースレイヤーについて考えることすら無意味だ ― 特にサービスを提供する立場では。Netflixを見てほしい。あんなにシンプルなユーザーインターフェースを持つビデオストリーミングサービスが、一体どうやって6300万人以上のユーザーが世界中から何百種類ものデバイスを通じて彼らのビデオライブラリーをアクセスする規模を維持できているのか? 卓越したAPIだ。

モノのインターネット(IoT)― Business Insider Intelligenceによると近々テクノロジー世界の中心になる ― がこのパラダイムシフトを強く動かしている。このデバイスの多様性は、既に動き始めているトレンドをさらに後押しする。

デバイスが人々を数で上回るようになると、それらをつなぐシステムは驚くほど複雑化する。APIは、こうした接続の基盤を成す。デジタルハードウェア間のモルタルだ。この複雑さが、巨大エコシステムの中で既存レイヤーの上に部品を積み上げるフルスタックエンジニアリングからの、構造的移行を進める舞台を整えた。

APIファースト設計はそれを採用したデベロッパーに途方もない機会を与える ― そしてそうでないデベロッパーには大きなリスクを。

Apple、Googleを始めとする他のIT巨人たちも同じAPI中心の未来を推進している。新たな相互接続分野 ― 典型例を挙げるならApple Watch等のウェアラブルやGoogleの無人走行自動車 ― はわれわれの日常生活におけるAPIの重要性の高まり示している。部屋で一番賢い人たちが何か新しいことを始めた時は、注意を払った方が良い。それはコンピューターや画面がなくなるという意味ではなく、デベロッパーに全く新しい世界の機会が切り開かれる予兆だ。

API中心開発への移行に失敗した結末は、個人にとっても会社にとっても深刻だ。API周辺技術の習得に失敗したデベロッパーは、自身のスキル価値を急速に下げ、職の安定性は減少する。

企業にとって影響はさらに拡大されうる。この技術的革命に乗り損ったスタートアップは競争力を失う。劣った製品を作るかもしれないし、完全に撤退するスタートアップもいるだろう。革新の先端で生きられない会社は縮んでいくパイの一切れになる。

よりつながった世界に突入するにつれ、驚くような新しい可能性が出現する。デベロッパーは「一口大」のものを消費したがる。Amazonがこのアプローチを広めた ― 彼らはデベロッパーにシステムが何をするかを伝え、自らは脇へ退いた。IT企業にとって「伝える」とはAPIを渡すことだ。最善の組み合わせによるプラットフォームの繁栄を可能にするマイクロサービスに向かって、世界が動いてきたのは不思議ではない。

つながったデバイス、無人走行車、および高度医療技術は、APIファースト設計が可能にする新たなテクノロジーのごくわずかな例だ。こうした革新が起きるためには、強固な基盤の上に構築されなくてはならない。それはシステム設計を基盤レイヤー ― API ― から始めることを意味している。

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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(2015年9月28日 TechCrunch日本版「ソフトウェアの未来はAPIが支配する」より転載)

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