フルタイムで共働き、なぜ妻が食事を作って当たり前なの? 家庭料理のストレスを考える

第10回 白央篤司の「家事の“ごはん作り”担当の皆さん、おつかれさまです!」
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新型コロナの影響から家にいる時間が増え、ごはんを家で食べる機会が増えました。家事の大変さがあらためて浮かび上がります。日々のごはん作りを担当されている方、毎日本当におつかれさまです! 炊事に関するお悩み、共有していきませんか。そして「誰かに作ってもらっている人」も、ぜひ読んでください。ねぎらい合うためのヒントが、必ずやあると思います。

第10回 埼玉県 haruさん 47歳

フルタイムで共働きなのに、私が手抜きをせずに食事を作って当たり前みたいになっている夫に辟易としています。

・忙しく料理をしているのに、わざわざ狭い台所の冷蔵庫をあさりにくる。
・料理や箸など、自分のだけでも持っていけばいいのに、それすらしない。
・「ごはんぐらいよそって」と言うと渋々やるけど、習慣化しない。
・常備菜や作り置きを出すと、『なんだよ、昨日の残り物かよ』と言い、手を付けない
・『うわ、昼もハンバーグだよ、かぶったわ』などと平気で言う。
・初挑戦で見た目が変わった料理を出すと『ゲッ』と必ず言うが、結局食べてる。
・休みの日の昼に『疲れてて作りたくないから、自分のご飯は自分で作るなり買うなりして』とお願いすると、『面倒臭いから嫌だよ』と平気で言う。

ほぼほぼ、愚痴になってしまいました…。吐き出させていただき、ありがとうございます。夫には感謝や協力を求めても無駄なので、自分の楽しみや健康のために日々美味しい料理を作っています!

haruさん、お便りありがとうございます。
愚痴、大歓迎ですよ! コロナ禍で気軽に会ってのおしゃべりもまならないこの頃。みなさんも、家事料理に関する文句や不満、どんどん送ってきてください。

さて、お便りを拝読しました。おつれさんは、haruさんにとことん甘えていますね。夫というよりは、お子さんのようにも思えました。私が特に感じたのは「冷蔵庫をあさりにくる」という点。これ、かなりのストレスポイントではありませんか?

すみませんが、今回は私も愚痴らせてください。
うちもね、あるんです。ツレもよく冷蔵庫を開けるんですよ。こっちが料理してるときに台所をウロウロされるのって、気になりますよね。

さらには「あ、牛肉がある。何作るの?」とか「納豆、ないのかー」なんて言われたり。一番イヤなのは「これ、もう賞味期限切れてるよ」とか言われたり。最後のはハイ、私がズボラなだけなのですが(笑)。

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しかしこのこと、会社に置き換えてみたいんですね。
冷蔵庫って炊事担当者にとっては、いわばデスクのようなもの。書類(食材)や企画書(今後作ろうと思っているもの)、文房具(調味料など)を入れてるわけですよ。他人のデスク開けていろいろ見る人はいないわけだし、配置を変えられても、勝手に使われても困る。ましてや同僚が忙しく仕事してるときに、近くをウロウロしたら目障りだろうな、と多くの人が配慮すると思うんですよね。多くの人がそう考えてくれると、いろいろうまくいくんじゃないかな、と。

家族、共同生活者となると遠慮が足りなくなってしまってること、誰しもあると思うのです。この記事を読んでくださっている方で、「ごはんを誰かに作ってもらっている人」は、ぜひいろいろな面で「もしも会社だったら?」という先のような置き換え、試みてほしい。

いやharuさん、どんどん話が逸れているようで申し訳ありません。しかしあなたはすごいです。ご結婚されてどのくらいか分かりませんが、フルタイム共働きで帰ってきて、ハンバーグを作ってあげようというその心が。ハンバーグってとっても面倒くさい料理に私は思ってしまうので。ひょっとしたらおつれさんの好物なのかもしれませんね。だったら余計に「かぶった」などと言われては、悲しい……。

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「ごはんを作ってもらっている側」って、どんな関係性でもだんだんと甘えが出てくるもの、と思っています。まして夫婦や肉親だと特に。

「感謝や協力を求めても無駄」と書かれていました。改善はまったく……期待されていませんか? 言っても無駄、黙ってやったほうが波風立たずに早い、結果的に自分も疲れない……と思いがちですよね、こういう話。ただ「パートナー関係のネジ閉め」というか、メンテナンスとして思っていること、感じていることを、改善を求める求めないは別にして、伝えるのは大事なこととも思います。おつれさんはひょっとして、haruさんが自分に不平を抱いていると全然分かっていないのかもしれません(そんな気がするんです)。
人間ってある日突然、「もう無理」となってしまうこともあるし。

haruさんもフルタイムで働かれているとのこと。どうぞくれぐれも無理をしないでください。そして今度「面倒くさいから嫌だよ」と言われたら、「私も面倒だから嫌なんだよ」ぐらい返してもいいんじゃないでしょうか。

※引き続き、日々の自炊、食事の用意に関してつらいこと、悩んでいること、大変に感じていること、こちらから自由にお送りください。お名前(ハンドルネーム可)、年齢、できればお住まいの地域もご記入ください。

白央篤司(はくおうあつし)

1975年生まれ。「暮らしと食」、郷土料理やローカルフードがメインテーマのフードライター。CREA WEB、Hot Pepper、サイゾーウーマン、hitotemaなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』『自炊力』『たまごかけご飯だって、立派な自炊です。』など。家では炊事全般と平日の洗濯、猫2匹の世話を担当。Twitterブログ

(編集:笹川かおり)

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