新型コロナ「ロックダウン」(都市封鎖)が起こるとどうなる?ドイツ首都ベルリンの現状から

ロックダウンの状況を聞いて、「そんな不便な生活やっていられない!!」と思うのであれば、今のうちから外出を必要最低限に控えることで、このような最終手段は免れるかもしれません。
普段は若者でにぎわうベルリンAlexanderplatz
普段は若者でにぎわうベルリンAlexanderplatz
撮影:岡本真希さん

新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、いわゆるロックダウン(都市封鎖※注)が日本でも行われるのではないかと、話題になっています。実際にロックダウンが行われると、どのような生活になるのか、不安の声も聞かれます。

現在、ロックダウンを実施しているドイツ・ベルリンでの生活は、どのようになっているのでしょうか?現地で医師として働く日本人に、現在の状況と日本へのメッセージを伺いました。

(日本時間3月31日の情報です。下記の内容は、岡本さんのブログの内容に追加の質問を加えたものです)

「ロックダウン」の行われたベルリン・その生活は

お話を伺ったのは、ドイツのブランデンブルグ心臓センター(Brandenburg Heart Center)で働く、岡本真希さんです。岡本さんは、日本で循環器内科医として働いたのち、ドイツで医師免許(Berufserlaubnis)を取得し、活動しています。

Q いまのベルリンの状況を教えてください

私の住むドイツは、3月16日よりオーストリア、フランス、スイスなどの隣接する国に対する国境封鎖措置がとられ、首都ベルリンも3月22日よりいわゆる「ロックダウン」の状態になりました。

具体的に起こっているのは、下記のようなことです。

・公共の場は2名以下でしか出歩いてはならない(基本的に1人。ただし、家族以外の1名、または家族の同伴のみ認められる)

・全ての飲食店は閉鎖

・同居の家族以外との接触は可能な限り避ける

・他人との距離は最低でも1.5m、可能なら2mあける

・イベントやグループによるパーティーは自宅・公共の場所問わず全て禁止

・酒場やクラブ、スポーツジム、美術館・コンサートホール、映画館、アウトレット、レジャー施設、売春宿、美容院やマッサージ、子供の遊び場は営業禁止

・保育園や幼稚園、学校はドイツの多くの地域で3月16日から既に休校

つまり、他人との接触は可能な限り避け、公共の場を思うように出歩くことができなくなるということ。そしてライフラインや生活に支障のない商業店は全て閉まるということです。

駅構内も人はまばら
駅構内も人はまばら
撮影:岡本真希さん

今の日本の「外出自粛」のような”要請”ではなく、いまのドイツでは警察により監視され、違反すると“罰則”があります。

通勤で仕事の同僚と2人で会話しながら歩いているだけでも、パトカーで巡回する警察と目が合ったり、人々からの視線をチクチクと感じます。

ロックダウンが開始されて、普段若者でごった返しているベルリンの街も、綺麗さっぱり空っぽになっています。普段通勤ラッシュの時間帯も、電車には空席が目立ちます。

「宅配」「スーパーでの買い物」「個人のスポーツ」はOK

テイクアウトのお店は開いている
テイクアウトのお店は開いている
撮影:岡本真希さん

Q なるほど。では逆に、ロックダウンでもできることというか、許されていることはどんなことなのでしょうか?

主に、生活の維持に欠かせない通勤や買い物、そして健康維持のための運動などです。

・カフェやレストランは閉まっていても、テイクアウトや宅配は可

・スーパーや生活用品を扱う店は開いている

・職場への通勤、生活必需品の買い物、通院

・託児や高齢者介護などのケアやリハビリ

・高齢で動けない人などのための他者へのサポート等

・個人でのスポーツ、屋外の新鮮な空気を吸うための運動

朝早くランニングをしている人や、スーパーの周りにはちらほらと人を見かけます。ただスーパーの入り口やレジでは、皆1.5m以上の間隔をあけて並んでいます。

スーパーのレジ前には待ち列の間隔をあけるための印が
スーパーのレジ前には待ち列の間隔をあけるための印が
撮影:岡本真希さん

ちなみにスーパーの店頭に並ぶ品々などは、一時のパニックで棚が空になることはありますが、物流を抑えるわけではないので、遅くとも数日のうちには補充されます。そのため、「備蓄品の買い込みは必要ない」という意識を持つ人も増えつつあります。

ドイツ 医療の現状は

Q 岡本さんはドイツで医師として働かれています。ロックダウンの目的の一つが「医療崩壊」を防ぐことです。働かれている病院の現状やドイツ全体の医療の現状について認識を教えてください。

ドイツでは、患者数は増えていますが、まだ「医療崩壊」というほどの状態にはなっていません。オーバーシュートが起きた時に備え、緊急性のない手術を減らして受け入れ態勢を整えるように国からの指示が出ており、私の働く病院でも3月中旬より病棟の稼働率を通常の半分程度までに落として準備しています。

例えば感染が疑われる患者さんが院内を動き回らないよう、入り口を一本化して、他の患者さんに接触しないような導線づくりをしています。さらに、建設中の新病院を感染者の受け入れ専用として機材を揃えたり、病棟を担当する者のシフトを組んでいつでも稼動できる状態にするなど、毎日のように状況がアップデートされています。

病院の入り口にはストップマーク、検温とアルコール消毒が行われる
病院の入り口にはストップマーク、検温とアルコール消毒が行われる
撮影:岡本真希さん

他の地域でも基幹となる病院では、専用の病棟を設置しているところが多く、周辺の中小病院から人工呼吸器を回収して基幹病院に集めたり、スタッフに人工呼吸器の扱い方や感染防御策の取り方等を教育したり、緊急時のシフト等をどのようにするか予め話し合ったりなどの準備をしているようです。

振り返ると、ドイツではまず、ジワジワと1日1000人ずつほどの新規感染確定患者が出ていたのですが、3月20日頃から急激に感染者数が増え始め、1日4000人近く陽性患者がでるようになりました。しかし、その数日後には、感染者が増える前に施行されたロックダウンの効果もあってか、1週間以上たった現在でも1日4000人と横ばいの増加率にとどまっています。

南部の州を中心に患者が急速に増加してきてはいますが、既に3月中旬から病棟を空けて準備周到であったこともあり、まだ病院のキャパシティーには余裕があると伝えられています。

感染拡大を食い止めるために、一番大事なこと

Q いまドイツから、日本の現状を見て感じることもあると思います。何かメッセージがあれば教えてください。

これまでに述べたロックダウンの状況を聞いて、そんな不便な生活やっていられない!!と思うのであれば、今のうちから、外出は必要最低限の、どうしても必要なものだけに絞っていれば、このような最終手段は免れるかもしれません。

要するに、街を封鎖するかしないかということではなく、私たちのような無症状な若者が街に繰り出すのをやめて、家に留まることでウイルスを撒き散らす(拡散を媒介する)のを防ぐことに効果があるのです。

その会議・飲み会、オンラインにできませんか?その仕事、ホームオフィスにはできませんか?どうしても開催したい意義のあるイベント・式典など、1ヶ月後などに延期できませんか?

3月の日本の皆さんの必死の頑張りで、いまだ日本は感染者が2000人ほどに食い止められています。感染者が増え始めたいま、自粛解禁モードになってヨーロッパやアメリカと同じ悲劇への道をたどるか、ここで踏みとどまるか、今からの2-3週間の皆さんの粘りにかかっています。

ロックダウンは東京だけのことで、他の地方都市に住む人たちはあんまり関係ないのかな?と思われてしまうかもしれませんが、日本では4月はただでさえ人の移動が多い時期と思います。いつどこで感染が広まってもおかしくありません。東京か地方か、封鎖が行われそうかどうかに関わらず、どうか、不要不急の外出自粛を心がけてください。

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岡本真希さん
岡本真希さん
本人提供

取材協力 岡本真希さん

2005年に佐賀大学医学部入学。2011年に卒業後、洛和会音羽病院(京都府)で循環器内科医として働く。2017年4月からブランデンブルグ心臓病センター(ドイツ) リサーチ・フェロー。2019年に医師免許(Berufserlaubnis)を取得し、ドイツで医師として活動。

※注)「ロックダウン(都市封鎖)」という言葉には厳密な定義はありませんが、外出禁止など、対象とするエリアの人の移動を制限したり企業活動を禁じることを指します。

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