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2020年10月28日 11時45分 JST | 更新 2020年10月29日 10時10分 JST

ユダヤ人に生まれ、見知らぬ人から差別的な言葉を浴びせられた経験がある私。改めて、「差別」を考えてみた

実は、ユダヤ人でありながらも、白人の「見えない特権」に守られてきたのかもしれない。

franckreporter via Getty Images
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見た目だけで、タクシーを乗車拒否に

学生時代に日本に魅了され、日本企業の代理を務める弁護士として日本に住み始めて約10年が過ぎた。これまで何度もハフポストのコラムで書いている通り、私は日本が大好きだ。日本の友人も仕事仲間も友好的であるし、お客様とも有意義な時間を過ごしている。

しかし、時折、残念な出来事に遭遇することがある。

先日、タクシーに乗ろうと手を挙げた。ドライバーと目が合ったという自覚はあったのにもかかわらず、そのタクシーは止まることなく走り去ってしまった。

数台見送った後に一台のタクシーが止まってくれた。私が行き先を告げると無言だったので、聞こえなかったのかもしれないと同伴者の外国人がもう一度行き先を告げた。それでもドライバーは無言である。もう一人の同伴者である日本人が行き先を告げると彼は頷いて発車した。

こんなことは日常茶飯事で、いわゆる乗車拒否は数週間に一度は起きる。おそらく、その理由はドライバーが英語を話すことに自信がないといった個人的なことだろうと思う。しかし、私は自分の存在を否定されているような気がして、がっかりする。私の外見をみて英語しか話せないと決めつけているのではないだろうか。外見など、ある一定の側面から人を見て判断することは、他の差別と何ら変わりはない。差別される側は、自分がどんな差別を受けているのかよくわかるものだ。

日本に住んで、日本人がシャイであることも十分知っているが、こうした日常の些細な出来事がまるで「差別」を受けているように感じて残念でならない。

 

スピード違反でも人種によって異なる扱い

ところで、コロナ禍のアメリカにおいて、約4割のアジア系、アフリカ系アメリカ人が人種差別的発言といった身近な他人による不快な行為に直面したことがあるという調査結果がある。また、連日の報道でも知られている通り、現代のアメリカでは白人警官と黒人の対立といった人種間の軋轢が社会問題となっている。

White Privilege(白人の特権)という言葉をご存じだろうか。古くからある言葉であるが、アメリカのマスメディアでも最近また多く使われるようになった。白人の特権とはこんな出来事で表現できるかもしれない。

白人警官が黒人男性を射殺する等の事件報道でもわかる通り、黒人がスピード違反で警察の取り締まりにあったら、彼らにとってスピード違反は命の危険を感じるような出来事であろう。一方で、白人が交通違反で身の危険を感じるような扱いを受けたという報道を見たことがあるだろうか。私自身はスピード違反で警察に取り締まられ命の危険は感じたことはないが、そこには人種の違いによる目に見えない特権や差別がそこにはあるように感じはしないだろうか。

Ada Yokota via Getty Images
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ユダヤ人に生まれたけれど、白人特権に守られて

私はユダヤ人として生まれ、幼いころに自宅に見知らぬ人から電話がかかってきて差別的な言葉を浴びせられたことがある。しかし、幸いなことにあからさまに差別的な扱いを受けた経験はない。ユダヤ人でありながらも白人であることから、白人の見えない特権に守られ、差別に気づかずに生きてきたのではないだろうかと思うことがある。

例えば、私は日本で乗車拒否をされてとても残念だと日本在住の黒人の友人に話すと、彼は日本でも差別や軋轢があるが身の危険を感じることはないと返される。彼は前述のような差別や軋轢があるアメリカに比べ、日本は差別が少なくて住みやすいと話した。彼がアメリカで受けているだろう差別的な扱いによってどれだけつらい思いをしたのかと胸がいたくなる。

アメリカにおけるあからさまな人種差別的な行為と、日本における私の体験を単純に比較することはできないだろう。しかも、日本人のホスピタリティと日本での残念な出来事を天秤にかければ、私にとってもホスピタリティがはるかに上回る。       

ただ、私の風貌からは日本語が話せないだろうと推測して、英語が話せないからややこしいことになるかもしれないと考えるといった悪気のない自らの行動が相手を傷つけ、差別的であると受け取られる可能性があることを知ってほしい。

あなたの目の前にいる私は日本の文化も尊重しているし、日本語も話せる。見た目はたしかに「ガイジン」ではあったとしても。

日本人のホスピタリティが好きな私は、自分のそんな経験から、私と同じように残念な思いをする外国人をこれ以上増えないよう願うばかりだ。      

            

 (編集:榊原すずみ