新型コロナで“バンライフ”中断。そして気づいた「家事分担」のこと。

「誰々は家事を全然やってくれなくて、自分ばかりやっている」。家に住むと、こういうことが起こりうるということがよくわかった。
菅原恵利さん・菅原拓也さん
筆者提供
菅原恵利さん・菅原拓也さん

家を断捨離したのは、2年前のこと。

最低限の荷物だけを持って、私はアドレスホッパー(家なしで生活する人)になった。国内・海外問わず、あちこちの地域でちょっとずつ暮らし、次の住みたい場所を探す。そんなことを繰り返す、身軽な生活をはじめた。

そして、旅の途中でデュアルライフ(二拠点生活)を実践する男性と出会って、翌月に婚約。 「旅が好き」という共通点を持っていた私たちは、夫が所有していた車を拠点に移動しながら生活する「バンライフ」で日本中を周ることにした。

新型コロナの影響で、夫の実家へ

そんな生活も1年が経ち、今年の1月は能登半島、2月は長野や茨城など、そして次は京都、そのまた次は岡山…と、仕事の取材も兼ねた旅のルートは数カ月先まで決まっていた。 しかし、新型コロナ感染拡大によって世の中の状況は一変してしまったのだ。

新型コロナウイルスの感染が拡大していた2月中旬は、ちょうど関東付近にいたため、埼玉にある夫のご実家に滞在させてもらい、様子を見ることにした。 私たちがバンライフの新しい“家”として購入予定のキャンピングカーは京都で製造されているため、直接京都に行くことになっていたからだ。とってもワクワクしながら、その時がくるのを待っていた。

しかし、そんな期待は埼玉から京都には届かなかった。現在の新型コロナウイルスの状況を考えると、東京から京都に車で移動することで、自分たちがウイルスを日本全国の人にうつしてしまったら大変だ。そう考えると京都に出発することは不可能、と延期することにした。そして現在も状況は悪化しているので、もちろん延期せざるを得なくなった。もう2カ月も、夫の実家にお世話になってしまっている。

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バンライフは車内だけでは生活が完結できない

「家を持たない生活が気に入っている」と発信していた私たちも、さすがにこの状況であれば、バンライフを中断せざるを得ない。 トイレやお風呂など、車内だけでは生活が完結できないバンライフは、毎日のように公共の施設を利用させてもらう必要がある。今この状況でそういったライフスタイルを送ることはとても感染のリスクが高い。

もし無自覚に感染してしまい、移動しながら地方で出会った人たちにウイルスをうつしてしまったら…なんてことは絶対あってはならない。 もし今、私が独身で単独行動をしている身だったら、きっとどこかのシェアハウスにいて部屋から出ずにいたと思う。

今回はたまたま埼玉の近くにいたので、2月下旬という早い段階から移動をやめて、夫のご実家に滞在させてもらえることになって、本当に感謝で頭が上がらない状態なのだ…。義父母はそれぞれ、運送業、介護業務をしているため、今でも出勤して、お仕事を続けている。私たち夫婦はもともとリモートワークで働いているから、車から在宅になったということ以外はほとんど変わらない。

家に住むと、家事がキッチリ分担される

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義父母より圧倒的に私たちの方が家にいる時間が長いので、仕事の合間をぬって、家事を手伝っている。 基本的に夫が皿洗いとお風呂掃除、私が洗濯物。夫の家のルールもあるので、「これ、間違ってないかな…?」と未だに恐縮しながらやっている。

そして、久しぶりに、こんな長い時間、家に住んでみて初めて気づいたことがある。家に住むと、家事ってキッチリ分担されるんだな…ということ。

どういう意味かと言うと「これは、だいたい誰々がやる」と、自然とカテゴリーごとに担当が決まりやすいのだ。自分が何かの家事をしているときに、途中で横から手を出されると、それぞれのやり方があるから、かえって邪魔になったりもする。

日本では、女性の家事負担が大きいことがよく話題になるけれど、バンライフを中断して、家に住んだら、「誰々は家事を全然やってくれなくて、自分ばかりやっている」ということが起こりうるということがよくわかった。

バンライフでは全ての家事を「気づいた方がやる」

撮影:町田舞

家には一つ屋根の下にトイレも、お風呂も、ダイニングテーブルも、ベッドも完備されていて、私たちが普段暮らしている車なんかに比べて、すごく優秀だ。バンライフをしていると、今日のお風呂、今日の車中泊スポットと、家ならあるものをいちいち全部調べて探す必要があるから。全部ひとつの場所にあるなんて「画期的!」と今更ながら思った。

ただ、家には全部あるからこそ、家事の担当者や分担などが発生する。担当者が自然と割り振られていった場合、誰かの負担が多くなり、負担が多い人の不満に繋がりかねない。 私は今まで10軒以上のシェアハウスに滞在したことがあるけれど、家事の担当が決まっていなくても「気づいた人がやる」という精神を持っている人がほとんどで、みんな暮らしを整えることに協力的だった(かなり同居人に恵まれていたんだとは思う)。

私たちのバンライフはそれと似ていて、全ての家事を「気づいた方がやる」。それに、家事を分担する、というよりも、自然と「全てを一緒にやる」ようになっていた。

例えば、洗濯物。コインランドリーで洗濯するので、一緒に洗濯機を回し、乾燥機を回し、その場で一緒に畳む。自炊する場合は、スーパーから一緒に行き、一緒に献立を考える。車内での調理は多少な不便さもあるため、2人で協力してやることが多い。

とにかくバンライフは「何でも2人で協力する」というのがテーマになってくる。逆に、不便なところを一緒に楽しんでいた。1週間分の洗濯ができただけで、コーヒーを2杯淹れただけで、2人で大喜びする日々だった。バンライフをしていた1年間、たくさん喧嘩もしたけど、2人はなかなか良いチームプレイを極めてきたと思う。

今は、まずは延期になっている京都を目指して旅を再開できる日が来るよう、新型コロナが収束することを願っている。

「だけど、できないことはやらない。」と割り切ることにしているので、今できないことを嘆いて、人や環境のせいにはしない。今できることは、「お家にいること。外出を控えること」だから、その中でできるやりたいことを見つけて、夫婦で工夫しながら過ごしたい。

(編集:榊原すずみ