「いい仕事」は自分も周りも幸せにする。パタゴニアやアップルに学ぶ、幸せな働き方

《本屋さんの「推し本」 文教堂・片桐明の場合》
HuffPost Japan

「こんなものでいいでしょ?」という仕事がまわりに溢れているのは、とても残念。

かと思えば、些細な場面であっても感動を呼び起こされる仕事に触れると、自然と笑顔になる。自分がする仕事なら人に喜んでもらいたいと考えるのは当然で、そこには心の平穏と幸せがあります。

実際は時間に追われ、効率化を計り、切り詰める努力を優先して、人の心を最大限大切にできなくなる場面が少なからず起きてしまいます。必要なことと理解しつつも、これではいかんとも思っている。

では一体どうすれば、人に感動や共感を持ってもらえる仕事をつくり出せるのか?

西村佳哲『自分の仕事をつくる』(ちくま文庫)には、そのヒントがあります。

ほかの誰かでは替えのきかない「自分の仕事」を見つけることが、幸せにつながるのではないか━━。働き方研究家の著者が、「いい仕事」をしている人の現場を訪ね、その魅力と秘密に迫るノンフィクションエッセイです。

パタゴニアやアップルの働き方はどんなものなのか?

魅力的な物事に共通するなんらかの法則を見出す時、私はいつも、好きだけど理由が分からないものを、いくつか並べてみることにしています。本書はまさに、そうした事例が沢山集められたもの。いわば働き方をめぐる小さな報告書です。

そして、この本に登場する人たちはみんな自然でいきいきしていてカッコよく見えます。

例えば、パタゴニア社の社員の大半は1年間のうち2カ月をアウトドアライフに当てますが、結果的にそこで得た経験や知識は仕事にフィードバックされます。

心に残った一説を紹介します。

仕事=生き方そのものだ。シェイパーはなによりも前に一人のサーファーであり、そうでなければ務まらない。━━植田義則(トップシェイパー ※サーフボード製造者)

ルヴァンはパンも美味しいけど、スタッフ一人一人が醸し出す雰囲気がとてもいいですね。この店に来て、嫌な気持ちになったことは一度もありません。━━甲田幹夫(ルヴァン ※東京・渋谷の天然酵母にこだわったベーカリー)

彼らは、誰が誰のためにそれをつくっているのかを知っています。
大事な人が自分のためにつくってくれたモノであれば、とても価値が高いということを。

私たちはなぜ、誰のために、どのように働くのか?

目的意識を持って働く大切さを説く“3人のレンガ職人の寓話”を連想するが、志は持ちつつも新しい価値観に合った働き方を模索したい。

自分自身の発見や工夫が手応えとなって戻ってくることの喜び、かけがえのない存在として受け入れられることの喜びがある。

これからはnew power(個人)が新しい価値観をつくり出します。
これまでのold power(大きな組織)の価値観と微妙に絡み合って今まで気付かなかった化学変化が起こされるのだろう。

いろんなことに気付き、考えさせられる本は面白いし貴重です。

3度読む価値のある本は多くありません。
本書は読む度に自分自身の働き方を考えさせられるし、また新しい気持ちで仕事に取り組めます。

過去の成功事例にいつまでも頼っているのは好きじゃない。
成功した方法論はそれっきりでおしまい。
次は前回とは違う方法論を編み出したい。
常に進化することが最低条件と考えています。

そして、常に今よりもっと楽しい働き方を模索していきたいと望んでいます。

連載コラム:本屋さんの「推し本」

本屋さんが好き。

便利なネット書店もいいけれど、本がズラリと並ぶ、あの空間が大好き。

そんな人のために、本好きによる、本好きのための、連載をはじめました。

誰よりも本を熟知している本屋さんが、こっそり胸の内に温めている「コレ!」という一冊を紹介してもらう連載です。

あなたも「#推し本」「#推し本を言いたい」でオススメの本を教えてください。

推し本を紹介するコラムもお待ちしています!宛先:book@huffingtonpost.jp

今週紹介した本

西村佳哲『自分の仕事をつくる』(ちくま文庫)

今週の「本屋さん」

片桐明(かたぎり・あきら)さん/文教堂書店 淀屋橋店(大阪府大阪市)

どんな本屋さん?

オフィスビルの中に位置し、いつも仕事帰りの人たちでにぎわっている書店です。2フロアに分かれた店内には、いたるところに店長自らが書いたかわいらしいPOPが展示され、本を選ぶ人の助けになってくれます。POPを見つつ棚からじっくり本を探すもよし、ワゴンやテーブルに展開されたおすすめ本を見るもよし、宝物を探し出すように楽しめます。

撮影:橋本莉奈(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

(企画協力:ディスカヴァー・トゥエンティワン 編集:ハフポスト日本版)

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