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2019年03月01日 13時11分 JST | 更新 2019年03月01日 13時11分 JST

「米朝」より大注目「元大統領顧問弁護士」決定的議会証言

トランプ大統領の弁護士として、そして「フィクサー」という名の尻拭い役として、コーエンはこの10年、トランプの仕事と私生活をつぶさに見てきた。トランプ大統領のピンチは、まだ始まったばかりのようだ。

時事通信フォト
トランプ大統領とトランプ大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエン氏

失うものは何もない――。ドナルド・トランプ大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエン(52)の下院監視・政府改革委員会での証言を見ていると、生来気の弱い男が覚悟を決めたときの決然とした気迫のようなものが感じられた(公聴会も7時間を超えると、ややふにゃふにゃして来たが)。

 

トランプ大統領の弁護士として、そして「フィクサー」という名の尻拭い役として、コーエンはこの10年、トランプの仕事と私生活をつぶさに見てきた。それだけに、第2回米朝首脳会談のためにベトナム訪問中のトランプ大統領も、コーエンが何を言い出すかと戦々恐々で、テレビ中継を見ていたのだろう。

 

コーエンはすでに昨年12月、偽証罪やポルノ女優への口止め料支払いによる選挙資金法違反などで禁錮3年の有罪判決を言い渡されており、その裁判書類が閲覧できること(黒塗りにされている部分も多いが)や、本人がメディアのインタビューに応じていることなどもあり、議会で証言するといっても何らかの具体的証拠を示さないかぎり、大したインパクトはないと言われていた。

 

ところが蓋を開けてみると、コーエンは冒頭陳述とともに9つの証拠書類を提出。このうち、トランプ大統領がドイツ銀行に提出した2011〜2013年の資産報告書や、コーエンが負担したポルノ女優への口止め料をトランプ大統領が弁済した小切手のコピーなどは、彼の証言内容を裏付ける強力な証拠と言えるだろう。

 

もっともこれらは、「ロシア疑惑」を捜査しているロバート・ムラー特別検察官のチームや、コーエンの偽証罪などを捜査したニューヨーク連邦検察が集めている証拠のごく一部にすぎない。

 

コーエン自身、2018年4月にニューヨークのアパート、事務所、ホテルの部屋の家宅捜索を受けたとき、依頼人との会話を含む大量の録音テープが発見・押収されている。現在、ニューヨーク連邦検察は、トランプ氏の大統領就任式をめぐる不正な資金の流れ(外国から違法な献金があったのではないかと言われている)を捜査しているが、このときに押収されたテープが大きなカギになったとも言われる。

 

今回の冒頭陳述で、これらのテープについては全く言及されていない。

1つ興味深いのは、これほど完全に寝返って捜査に全面協力しているように見えるコーエンなのに、11月にコーエンの弁護士が裁判所に減刑を求めたとき、ムラーの捜査チームが反対意見を提出していることだ。

 

ムラーのチームは一方で、ロシア疑惑の発端ともなったマイケル・フリン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)については、その協力が極めて早期で多大だったとして、刑期をゼロとするよう裁判所に勧告している(判決はまだ出ていない)。

 

ということは、フリンはコーエンの協力など足下にも及ばない強力な何かを捜査にもたらしたということだ。

 

トランプ大統領のピンチは、まだ始まったばかりのようだ。

以下は、コーエンの議会証言における冒頭陳述の全文翻訳である。

 

 

マイケル・D・コーエン

 

監視・政府改革委員会

 

米連邦下院

 

2019年2月27日

 

カミングス委員長(筆者注:民主党のイライジャ・カミングス委員長)、ジョーダン委員(筆者注:共和党のジム・ジョーダン筆頭理事)をはじめとする委員のみなさん、今日は私を招いてくださり、ありがとうございます。

本委員会には、私の家族が大統領の脅しから守られること、継続中の捜査に配慮することをお願いしてきました。みなさんのご理解に感謝します。

私は本日、誓約の下、過去の記録を訂正し、本委員会の質問に正直に答え、トランプ大統領について私が知っていることをアメリカの人々に伝えるために、ここに参りました。

委員のなかには、私の信頼性を疑う方がおられるのを承知しています。そこでこの冒頭陳述書に、反論不可能で、みなさんが聞く情報が正確かつ真実であることを示す書類を添付いたします。

私は2007年にドナルド・トランプのために働くことを引き受けたとき、彼がいつか大統領選に出馬し、憎しみと不寛容に満ちた綱領に基づき選挙運動を展開して実際に勝つことになろうとは、夢にも思いませんでした。

あの日、トランプ氏に「イエス」と言ったことを後悔しています。そして、これまでずっと彼に手を貸し、サポートしてきたことを後悔しています。

私は自分の欠点を恥じており、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所で有罪を認めることにより、その責任を公的に認めました。

私は自分の弱さと、間違った忠義を恥じています――トランプ氏を守り、後押しするために行ったことを恥じています。

私は自分の良心に耳を傾けず、トランプ氏の違法行為隠蔽に関わることを選んだ自分を恥じています。

私は、トランプ氏がどういう人間か知っているからこそ、恥じています。

彼は人種差別主義者です。

イカサマ師です。

彼は大統領候補時代、ウィキリークスが民主党全国委員会の電子メールを暴露することについて、ロジャー・ストーン(筆者注:トランプ陣営の元顧問。今年1月、ウィキリークスのメール暴露に関する偽証罪などで逮捕・起訴)がジュリアン・アサンジ(筆者注:ウィキリークスの創設者)と話していたことを知っていました。

詳細はのちほどご説明します。

私は今日、本委員会に複数の文書を提出します。これには以下が含まれます。

■トランプ氏が個人銀行口座から振り出した小切手のコピー。これは、私が彼とポルノ女優との関係を隠蔽し、選挙活動にダメージが及ぶのを阻止するために支払った口止め料を、トランプ氏が大統領就任後に清算したもの。

■トランプ氏がドイツ銀行などの金融機関に提出した2011〜2013年の資産報告書のコピー。

■トランプ氏の手書きのメモが入った新聞記事のコピーと、現在彼が所有するゴルフクラブの1つにかかっている肖像画の写真。記事は彼の肖像画のオークションについて報じたものだが、トランプ氏は事前に手配しておいた入札者に落札させ、後で自分の非営利慈善財団の口座から代金を支払っていた。

■トランプ氏の指示で私が彼の高校、大学、大学入学試験協会宛てに書いた、SAT(大学進学適性試験)の点数を公表しないよう脅す手紙のコピー。

 私が本日ここに出席したこと、有罪を認めたこと、そして法執行当局に協力したことが、私の信用を回復し、国民が大統領の正体をよりよく理解するのを助ける償いの道のりとなることを願っています。

 

「モスクワ・タワー・プロジェクト」の嘘

 

証言を進める前に、みなさんと議会全体に謝罪したいと思います。

前回私が議会で証言したのは、トランプ氏を守るためでした。本日は、トランプ氏について真実を語るためにここにいます。

私は(前回)、トランプ氏がモスクワ・タワー・プロジェクト(筆者注:トランプ大統領の経営していた不動産会社「トランプ・オーガナイゼーション」が2015年秋から進めていたとされる「トランプ・タワー・モスクワ」建設計画)の交渉をやめた時期について嘘をつきました。私は、2016年1月(筆者注:大統領選の共和党予備選が本格始動する前)に交渉をやめたと証言しましたが、あれは嘘です。交渉はさらに何カ月も、選挙期間中も続きました。

トランプ氏は私に、議会に嘘をつけと直接命じたわけではありません。そういう仕組みではないのです。

選挙期間中、私が彼のためにロシアで積極的に交渉していた時期、彼は私の目を見て、「ロシアでのビジネスなど存在しない。国民にもそう噓をつけ」と言ったものです。そういうやり方で、(議会でも)嘘をつけと命じていたのです。

2016年1月のアイオワ州党員集会(筆者注:実際は2月1日)から6月末までの間に、少なくとも6回、彼は私に「ロシアのほうはどうなっている?」と聞きました――モスクワ・タワー・プロジェクトのことです。

モスクワ・タワー交渉のタイミングに関する私の議会証言が、トランプ氏の顧問弁護士たちに事前にチェックされ、編集されていたことを、みなさんに知っていただく必要があります。

正確を期すると、トランプ氏は選挙期間中もずっと、トランプ・モスクワ(・タワー)交渉のことを把握しており、指示を出していましたが、嘘をついていました。なぜなら、自分が選挙に勝つとは全く思っていなかったからです。また、モスクワの不動産プロジェクトで莫大な利益をあげるつもりだったからです。

だから私もそのことで嘘をつきました――なぜならトランプ氏が私にも嘘をついて欲しいと思っていることは明白だったからです。それは、彼が私に個人的に言ったことが嘘だとお互いわかっていたこと、そして彼が、国民に嘘をついていたことから、明らかでした。また、顧問弁護士たちに私の議会証言を事前にチェックさせることでも、彼は私に嘘をついてほしいという意思を明確にしていました。

 

「自己紹介をさせてください」

 

この2年間、私は合衆国大統領から「密告屋」と中傷されてきました。真実は大きく異なります。そこで少しばかり、私の自己紹介をさせてください。

私の名前はマイケル・ディーン・コーエンです。

私は24年の祝福された結婚生活を送る夫であり、素晴らしい娘と息子に恵まれた父親です。私は妻と結婚したとき、彼女を愛すること、大切にすること、守ることを約束しました。私が子どもの頃、父は数え切れないほど、「妻と子どもたちよ、おまえたちこそが私の生き甲斐だ」と言ってくれました。ローラ、サミ、ジェイク、君たちを守るためなら、私は何でもする。

私は誠実、友情、寛容、そして思いやりにあふれた人生を送ろうとしてきました――それは両親が私たちきょうだいに子どもの頃から身につけさせてくれた資質です。父は、他人への思いやりと私心のない行為のおかげで、ホロコーストを生き延びました。自らの命を危険にさらしてでも自らが正しいと考えることをした多くの人々によって、助けられたのです。

だから私はいつも本能的に、困った人たちを助けようとしてきました。お母さん、お父さん……がっかりさせてしまってごめんなさい。 私のことを知る多くの人たちがよく言うように、私は彼らが助けを必要としたとき、午前3時でも電話できる人間です。私は子どもたちの多くの友達の緊急連絡先になっていたことを、誇らしく覚えています。彼らの親は、何かあったら私がすべてを投げ出して、彼らの子を自分の子同然に面倒を見ると知っていたのです。

しかし昨秋、私は連邦裁判所で、「人物#1」の利益のために、「人物#1」の指示で、「人物#1」と連携して重罪を犯したことについて有罪を認めました。

この「人物#1」とは、ドナルド・J・トランプ大統領のことです。

自分が野心に突き動かされて行動することがあったと認めるのは、つらいものです。もっとつらいのは、多くの場合、私が良心を無視し、本来はそうすべきでない男に忠実に行動してしまったと認めることです。今日ここに座っていると、信じられない思いです。ドナルド・トランプに心を奪われたばかりに、彼のために、自分で絶対に間違っているとわかっていることも進んでやってしまった。

したがって私は、家族と政府、そしてアメリカの人々に謝罪するために、ここにきました。

 

ブランドを大きくするために出馬した男

 

では、トランプ氏についてお話しさせてください。

私は、10年以上にわたり彼のエグゼクティブ・バイスプレジデントと特別顧問として、そして彼が大統領になってからは顧問弁護士として密接に仕事をすることで、彼を非常によく知るようになりました。初めてトランプ氏と会ったとき、彼は成功した起業家で、不動産王で、象徴的な存在でした。トランプ氏の側近となって、私は有頂天でした。自分が何か大きなことに関わっている、自分が世界を変えているような気になっていました。

私は10年以上にわたり、トランプの物語を売り込むことになりました。それが私の仕事だったのです。メッセージをぶれさせないこと。常に防御すること。それが私の生活を独占しました。当初は、不動産開発などのビジネス面を担当していたのですが、すぐにトランプ氏はプライベートな生活や取引に私を引き込みました。やがて私にも、彼の本性がわかってきました。

トランプ氏は不可解な人物です。誰しもそうですが、複雑で、いい面と悪い面の両方があります。しかし、悪い面がいい面をはるかに上回っています。大統領になってからは、悪い面が最悪の面になりました。彼は親切に振る舞うことはできますが、親切ではありません。寛大な行動をとることはできますが、寛大ではありません。誠実になることはできますが、根本的に不誠実です。

ドナルド・トランプは、この国を偉大にするためではなく、自分のブランドを大きくするために出馬した男です。彼にはこの国を指導する意欲も意思もありません。自分を売り込み、自分の富と権力を大きくすることだけが目的です。トランプ氏はよく、この選挙活動は「政治史上、最大のインフォマーシャル」になると言っていました。

彼は自分が予備選に勝つとは全く思っていませんでした。ましてや本選に勝つなんて全く思っていませんでした。選挙活動は彼にとって、常にマーケティングのチャンスだったのです。

私はトランプ氏のために働き始めたばかりの頃から、彼が自分のビジネス上の利益を高めるために、私に嘘をつくよう命じることに気づきました。お恥ずかしいことに、私はそれが民間の不動産王にとってはささいなことなのだと思っていました。大統領としては、重大かつ危険なことだと思います。

しかし、トランプ氏のために嘘をつくことが普通のこととなり、周囲の誰もそれに疑問を挟みませんでした。公正を期して言うと、現在彼の周囲にいる人たちも、誰もそれを問題視していません。

 

メール暴露に「最高じゃないか」

 

多くの人が、トランプ氏は民主党全国委員会のメールがリークされることを事前に知っていたのかと、私に聞いてきました。答えは、「イエス」です。

先ほど述べたとおり、トランプ氏はウィキリークスがメールを暴露することを、ロジャー・ストーンから事前に聞かされていました。

2016年7月、民主党全国大会の数日前、私がトランプ氏のオフィスにいると、ロジャー・ストーンから電話が来ていると秘書が告げました。トランプ氏はスピーカーフォンで出ました。するとストーン氏は、たった今ジュリアン・アサンジとの電話を切ったこと、アサンジが2日後にヒラリー・クリントンに打撃を与える大量のメールが暴露されると話したことを伝えたのです。

トランプ氏はそれに対して、「それは最高じゃないか」という趣旨のことを言いました。

 

「黒人は愚かだから投票しない」

トランプ氏は人種差別主義者です。アメリカは、トランプ氏が白人至上主義者や偏狭な見方を持つ人々と付き合っているのを目撃してきました。彼が貧しい国々を「肥溜め(shitholes)」と呼んだのを聞いたことがあるでしょう。

プライベートでは、もっとひどいのです。

彼は一度、黒人がリーダーで「肥溜め」でない国があるか言ってみろと、私に聞いたことがあります。それはバラク・オバマが合衆国大統領だったときのことです。

シカゴの困窮した地区を車で通ったとき、こんな風に暮らせるのは黒人だけだと言ったこともあります。

また、黒人はあまりにも愚かだから、彼に投票することは決してないだろうとも言いました。

それなのに私は彼のために働き続けました。

 

肖像画の入札者をでっち上げ

 

トランプ氏は詐欺師です。

先述のように、私は本日、トランプ大統領の2011〜2013年の3年分の資産報告書を提出いたします。これは「バッファロー・ビルズ」(筆者注:ニューヨーク州オーチャードパークに本拠地を置くNFLのチーム)と『フォーブス』を買収する資金を借りるために、ドイツ銀行に提出したものです。私の証言の証拠1a、1b、1c

私の経験上、トランプ氏は自分の目的に沿って総資産を膨らませます。例えばフォーブス誌の長者番付に載るという目的です。反対に、不動産税を減らすために資産を縮小することもあります。

トランプ氏が自分の都合のいいように資産を縮小したケースと膨らませたケースを示す2つの新聞記事を、証拠2として提出します。

すでに述べたとおり、私は本日、彼がメモを書き込んで私に送ってきた新聞記事を提出します。トランプ氏の肖像画のオークションについて報じたもので、証拠3Aとします。

トランプ氏は私に、「アート・ハンプトンズ・イベント」でオークションにかけられる彼の肖像画を競り落とす架空の入札者を探すように命じました。その目的は、オークションの最後に登場する自分の肖像画が、その午後のどの肖像画よりも高値で落札されるようにするためでした。その肖像画は、フェイク入札者によって6万ドルで落札されました。トランプ氏はその絵を自分の手元に置いているにもかかわらず、慈善団体であるはずのトランプ財団にフェイク入札者への支払いをするよう命じました。証拠3Bをご参照ください。

もはや驚きではないでしょうが、私がトランプ氏の命令で非常に頻繁にやっていた仕事は、ビジネス――多くはスモールビジネス――のオーナーたちに電話をして、彼らの仕事への対価は金額が減らされるか、まったく支払われないと告げることでした。私がうまくいったと報告すると、彼は本当に大喜びしました。

それなのに私は、彼のために働き続けました。

 

ファーストレディーに嘘をついた

 

トランプ氏はいかさま師です。

彼は私に、不倫相手であるポルノスターに口止め料を払い、それについて彼の妻に嘘をつくよう求めました。私はそのとおりにしました。ファーストレディーに嘘をつくことは、私の最も後悔していることの1つです。彼女は優しく、善良な人間です。私は彼女に大変な敬意を抱いています――彼女はそんな目にあうべきではなかった。 

本日、私からクリフォード氏(筆者注:ステファニー・グレゴリー・クリフォード 氏。ポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏の本名)の弁護士に対して送金した13万ドルの電信送金記録のコピーを提出します。これは大統領選の終盤に、クリフォード氏がトランプ氏との情事について沈黙を守るよう要求したものです。これは証拠4となります。

トランプ氏は私に、ホーム・エクイティ・ライン・オブ・クレジット(HELOC、不動産担保ローン)から私の個人的な資金で払うよう命じました。資金の流れを追跡されて、選挙戦にダメージを与えることを回避するためです。私はそのとおりにしました――それが不適切か、ましてや正しいことか、それが自分と家族、あるいは国民にどのような影響を与えるかを考えずに。

私が刑務所に行くのは、アメリカの人々が数日後に投票に行くというときに、トランプ氏のこの支払いを国民から隠すのを助けたことが一因です。

 

3万5000ドルの小切手のコピー

 

証拠5は、トランプ大統領が2017年8月1日――彼が合衆国大統領だったとき――に、この隠蔽のために個人口座から振り出して署名した3万5000ドルの小切手のコピーです。これは私が有罪を認めた原因です。トランプ氏のテレビ弁護士(筆者注:コーエン氏に代わってトランプ大統領の弁護士となったルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長)の表現を使えば、彼のために私が支払った違法な口止め料を返済するためです。この3万5000ドルの小切手は、この年――彼が大統領だったとき――を通じて支払われた11回に分割した小切手の1枚です。

合衆国大統領は、このように、選挙資金規制法に反する犯罪スキームの一環として、口止め料の支払いのために個人的に小切手を切ったのです。トランプ氏の指示で行われたこの犯罪スキームの詳細は、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所のプリーディング(訴答)に書かれています。

この場面を思い描いてください――大統領就任から1カ月後の2017年2月、私は初めて大統領執務室にトランプ大統領を訪問しました。それは本当に畏敬の念を抱かせるもので、彼は私を案内し、さまざまな絵画を指して、……心配するな、マイケル、きみの1月と2月の返済小切手は送るから、という趣旨のことを言いました。それらはニューヨークからFedExで送られてきました。ホワイトハウスのシステムを通過するには、少しばかり時間がかかります。彼が約束したとおり、私はしばらくして1回目の返済小切手7万ドルを受け取りました。

 

成績を公表しないように脅し

 

私がいかさま師だというのは、自分は最高に優秀だと言いつつ、自分の成績やSATの点数を公表しないよう、自分の高校、大学、そして大学入学試験協会を脅すよう私に命じた男のことです。

もしトランプ氏の成績やSATの点数が彼の許可なく開示されたら、民事および刑事訴訟を起こすぞ、と私がトランプ氏の指示でこれらの学校を脅した手紙のコピーを提出します。これらは証拠6です。

2011年にトランプ氏が、オバマ大統領は成績を発表していないとして厳しく批判したのは、皮肉以上のことでした。証拠7が示すとおり、トランプ氏はオバマ大統領を「落ちこぼれ生徒」だったとして、「記録を開示させろ」と言い放ちました。

 

「ベトナムになんて行くわけない」

 

悲しい事実ですが、プライベートな場面で、トランプ氏から、この国を愛しているとか、よりよくしたいと思っていると感じさせる発言を聞いたことがありません。それどころか、彼は正反対のことをしました。

2008年に従業員の給料をカットすると私に命じたとき――私の給料もです――、彼は私にIRS(内国歳入庁)の1000万ドルの税還付だというものを見せ、「私みたいな人間」にこんなに多くの金を返すなんて政府はなんてバカなんだと言いました。

選挙期間中、トランプ氏は、ベトナム帰還兵で戦争捕虜であるジョン・マケイン(筆者注:昨年亡くなった共和党上院議員)を「英雄」だとは思わない、なぜなら自分は捕まらなかった人が好きだから、と言いました。このときトランプ氏は、自分が健康上の理由からベトナム徴兵免除を受けたことに関するネガティブな報道を処理するよう、私に命じました。

トランプ氏は、骨の損傷が理由だと主張していましたが、私が医療記録を求めたところ、彼はそのような記録を渡すことなく、手術はなかったと言いました。彼は私に、「記者からの具体的な質問には答えるな」と言い、「ただ医療上の理由から徴兵免除を受けた事実だけを述べろ」と言いました。

その会話の最後に彼は言いました。「私がバカだと思うのか。ベトナムになんて行くわけない」。

トランプ大統領、あなたが今ベトナムにいるのは、実に皮肉なことだと思います。それでもなお、私は彼のために働き続けました。

 

長男が「ミーティング設定できました」

 

トランプ氏または選挙対策本部がロシアと共謀していた直接的な証拠を私が知っているかどうかが問われてきました。私はそのような証拠を持っていません。それを明確にしておきます。ただ、思うところがあります。

私は2017年の夏、2016年6月にドン・ジュニア(筆者注:トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏)ら選対関係者とロシア政府の代表を含むロシア人がトランプ・タワーで会ったことに関する報道を全部読みました。「ヒラリー・クリントンのネガティブ情報(Dirt on Hillary Clinton)」という件名のメールで、このミーティングが設定されたことも読みました。

そのときピンときたことがあります。おそらく2016年の6月初旬だったと思いますが、私がトランプ氏の部屋にいるとき、奇妙なことが起きたのを覚えています。ドン・ジュニアが入ってきて、父親のデスクの向こう側に回りました――普通はデスク越しに話すので、それ自体が異例のことでした。ドン・ジュニアが父親のほうに身を乗り出して、低い声で話しかけました。でも私には、はっきりと聞こえました。「ミーティングが設定できました」と。そしてトランプ氏が「OK。よし……知らせてくれ」と言いました。

いま改めてドン・ジュニアと父親のやり取りを振り返ってみると、驚くことがあります。第1に、トランプ氏は頻繁に、ドン・ジュニアの判断は世界最悪だと、私や周囲の人々に漏らしていたことです。つまりドン・ジュニアが、わずかでも重要な会合を1人で――ましてや父親のチェックなしで――設定することはありえないということです。

私はまた、トランプの世界では、とりわけ選挙戦に関しては、トランプ氏への報告と承認なしでは何1つ動かないことを知っていました。ですから私は、あの日ドン・ジュニアが父親のデスクの向こう側に回ったとき、ヒラリーのネガティブ情報に関する2016年6月のロシア代表とのトランプ・タワー会合のことを言っていたのだという結論に達しました――そしてトランプ氏が「それはいい……知らせてくれ」と言ったとき、ドン・ジュニアが話すその会合のことを知っていたのだと結論づけました。

 

私はもう「フィクサー」ではありません

 

この1年ほど、私は内省を重ねてきました。いまなら、自分の野心とトランプのパワーへの陶酔とが、間違った決断に大いに関係していたことがわかります。

カミングス委員長、ジョーダン委員はじめ本委員会の委員のみなさん、そして下院および上院の議員のみなさんに、私は議会に対して嘘をついたことを謝ります。

私たちの国に対して、トランプ氏にかんする真実が最も必要とされているときに、それを隠す活動を積極的に行ったことを謝ります。

今日私がここに出席した動機を疑う人々のお気持ちはわかります。私は嘘をつきました。しかし私は本質的な嘘つきではありません。悪いことをしましたが、本質的に悪い人間ではありません。私はさまざまなフィックスをしてきましたが、私はもうトランプ氏の「フィクサー」ではありません。

私は刑務所に行きます。そして家族に与えようと懸命に努力してきた安全を壊してしまいました。私の証言は、私が家族や友人に与えた苦しみを減じるものではありません――何を以ってしてもそれは不可能です。そして私は、トランプ大統領に恩赦を求めたことはありませんし、受けることも決してありません。

 

家族への攻撃は許されない

 

そして今日ここに出席することにより、私は家族を、大統領とその弁護士による個人的かつ下品な中傷のターゲットにしてしまいました――私をここに出席させないための脅しです。トランプ氏は、真実を述べることを選んだ私を、「密告屋」と呼びました――まるでギャングのボスが、政府と協力することを決断した部下に対して使うような言葉です。

証拠8は、私と家族を攻撃するトランプ氏のツイートのコピーです――彼らの正体に気がつかないのは、現実を見て見ぬ振りをしようとする人間だけです。彼らは誰かに私と家族を傷つけるよう煽っているのです。

彼らが私の家族に悪意ある不誠実な攻撃をするとは――そしてテレビ弁護士にも同じことをさせるとは――、私は想像もしませんでした。本委員会と議会の民主・共和両党全議員が、以下のことを明確にしてくださることを願います。すなわち国家として、議会の証人を脅迫する試みは許してはならないし、家族への攻撃など許されないということです。

証拠9として提出する、ペロシ下院議長(筆者注:民主党のナンシー・ペロシ下院議長)の本機構と私を守るための声明に特に感謝します。また下院情報委員会のアダム・シフ委員長とカミングス委員長にも、本機構と私の家族をトランプ氏の攻撃から守ってくださることを感謝します。そして大統領を戒める多くの共和党議員にも感謝します。

私は完璧な人間ではありません。胸を張れないこともしてきましたし、自分の行動の結果を一生にわたり背負って生きていきます。

しかし今日、私は子どもたちにどのような模範を示し、歴史における私の位置付けをどのように変えようとするべきか、決断することができました。私は過去を変えることはできないかもしれませんが、アメリカの人々の隣で今日を変えることはできます。

ご静聴ありがとうございました。よろこんで質問にお答えします。

藤原朝子 学習院女子大学非常勤講師。国際政治ニュース解説者。慶應大学法学部政治学科卒。ロイター通信、フォーリン・アフェアーズ誌(日本語版)などを経て現職。米ドラマ『ハウス・オブ・カード/野望の階段』日本語監修なども務める。訳書に『米中戦争前夜――新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ』『シフト――2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来』『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀ーーそして世界の警察はいなくなった 』(いずれもダイヤモンド社)など。

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新潮社フォーサイトより転載