「アフターピルをオンライン診療で処方」条件付きで容認の方針。厚労省検討会で明確な反対意見なし

転売を防ぐ仕組みや、知識がなく頻回に使用するケースなどの対処も求められる
オンライン診療のイメージ画像
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いらすとや

病院に行かずにビデオ通話で診察し、自宅などに薬が届く「オンライン診療」で緊急避妊薬(アフターピル)の処方が容認される見通しだ。

厚生労働省の検討会が3月29日に開かれ、懸念点などの対処が話し合われた。今回の検討会では明確な反対意見はなかった。

対処方法を示した事務局案が今後話し合われ、5月中にも可否が決定する見込み。

「乱用につながる」として反対していた日本産婦人科医会も、「条件付き賛成」の方針に転じた。

参考人として参加した産婦人科医会の医師はハフポスト日本版の取材に対し「積極的に賛成ではない。しかし、緊急避妊薬を必要として困っている人がいることに目を背けることはできない。妊娠を見落とすケースを防いだり、正しい避妊法の知識を示せるような対応をカバーできれば良いと考えている」と話した。

緊急避妊薬は、避妊に失敗したり望まない性行為によって避妊ができなかった場合に、性交後72時間以内に飲むと妊娠する確率が著しく下がる薬だ。

ただ医師による対面診療が必要で、入手のしにくさが問題となっていた。

オンライン診療が可能になれば、地方など産婦人科が近くにない場合でも緊急避妊薬を入手しやすくなる。

転売はどう防ぐ?繰り返し緊急避妊薬を求める人にはどうする?

検討会では、オンライン診療になった場合の懸念やその対応策について意見が交わされた。

緊急避妊薬をめぐっては、近年SNSなどを利用した海外からの輸入薬の転売や譲渡もしばしばみられる。

2019年2月には、フリマアプリを使用した転売によって逮捕事例が発生するなど、違法なやりとりも横行している。

こうした背景を受け、次のような意見があがった。

《Q:緊急避妊薬を、本人が飲んだかどうか確認できない。転売のリスクは?》

ネットオークションで薬剤を転売するイメージ画像
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いらすとや

【対応策】医師は1回分のみの処方を徹底する。薬局で薬剤師の前で内服するなどの対処方法を推奨する。

転売リスクについては、すでにオンライン診療を開始して緊急避妊薬を処方しているところや、「ネット(経由)で何錠も処方している人もいる。そういうことがないようにしてもらいたい」といった意見が出た。

《Q:容易に緊急避妊薬が入手可能になり、適切な避妊法が行われなくなるのではないか。繰り返し緊急避妊薬を求める人がいたらどうするか?》

【対応策】内服の確認を徹底するとともに、正しい避妊方法の紹介や、服用後の産婦人科への受診の推奨を入念に行う

《Q:緊急避妊薬でも妊娠が防げないことがあるなど、使う人が十分な知識を持っていないかもしれない場合は?》

【対応策】十分な知識を持った医師が説明をする。

近くの産婦人科を紹介するなどし、服用してから3週間後の産婦人科受診の約束を取り付けて妊娠しているかどうかの検査をする。

日本産科婦人科学会から検討会に参加した医師は 「必要のないケースや、すでに妊娠しているのに飲もうとするケースもある。また、気づかずに子宮外妊娠をしてしまい、見逃すケースもある」と話した。

服用についても「処方したら、目の前で飲んでもらっている。同意書も取り、妊娠していないかの確認のため3週間後に必ず来るように話す。少し怖く言うので、ほとんどの人がちゃんと来る」と述べた。

同意書には、緊急避妊薬は必ずしも妊娠が防げるわけではないことや、十分に説明を受けたことを確認する内容が書いてある。

こした確認が取れない場合は、服薬についての説明ができたか、理解してもらえたかが分からない可能性があるという。

日本産婦人科医会から参加した別の医師は「高度な知識をもった、できれば産婦人科で母体保護法指定医、またはそれに準ずる研修を受けた医師が処方するのがよい」と述べた。

《Q:緊急避妊薬を求める女性の中に、犯罪被害が疑われる場合、オンライン診療では十分な対応が困難ではないか?》

写真は犯罪被害に遭った女性のイメージ画像です
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Tinnakorn Jorruang via Getty Images

【対応策】最寄りの警察署への相談を促す。未成年の場合は、児童相談所に通報する。同時にカウンセリングを実施する。

検討会の構成員で、医療に関する電話相談などをする認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子理事長からは「被害届を出したくないという人でも、未成年ならば児童相談所への通報が必ずされるのか。被害者はどのように守られるのか」と質問が出た。

これに対し、厚労省医事課は「虐待の場合は、児童福祉法25条により通告の義務がある」とした。しかし性的虐待と性的被害はイコールではなく、被害がばれてしまう怖さで病院へ行けない女性に対して、すべてを警察につなげるわけではないとした。

オンライン診療の可否は5月中をめどに

次回の検討会は4月中に開かれるとみられ、対処方法をまとめた事務局案をもとに議論される。

厚労省医事課の担当者は「本人が内服したかどうかの確認が必要。薬局に処方箋を持っていき、飲んでもらうなどの方法がある。その場合はどこの薬局で処方されるかを伝える必要もある。また、現在オンライン診療で一部横行している海外の個人輸入薬を渡すのではなく、基本的に国内の承認薬2種類を処方するようにしたい」と話した。

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