「誰一人取り残さない社会に向けての、第一歩になりたい」 世界一周の船旅・ピースボートが目指すもの。

居酒屋のポスターなどでおなじみの「ピースボート」、中の人に話を聞きました。
ピースボート 恩田夏絵さん
ピースボート 恩田夏絵さん
ハフポスト

居酒屋のトイレに行くと、目にすることの多いあのポスター。

「ピースボート」だ。

船旅で世界一周するということは、なんとなく知っていても、具体的な内容については知らない人も多いのではないか。

ジャーナリストの堀潤さんが司会を務めるネット番組「NewsX~8bitnews」5月6日放送のテーマは「分断の時代、対立を乗り越えるために」。ピースボートの恩田夏絵さん、畠山澄子さんがゲストとして登場し、その取り組みについて語った。

1983年に設立された日本生まれの国際NGO、ピースボート。2019で設立36年目だ。「みんなが主役で船を出す」を合言葉に、地球一周の船旅を通した顔の見える国際交流をコーディネートしている。これまでのべ7万人の参加者と世界中200以上の港を訪問してきたという。

ピースボートの始まりとなったのは、当時国際問題となっていた「教科書問題」だったという。

日本の歴史教科書検定の際に、日本のアジアへの軍事侵略が「進出」と書き換えられるという報道に対して、アジアの人たちが激しく抗議したという出来事だ。

「このとき、学生たちが、自分たちが学んできた歴史は本当のことなのか、自分たちの目で確かめに行こう、と始めたのがピースボートなんです。その土地を訪れ、そこで生活している人たちと会って、いろんな体験をする。悲しいこともあるし悔しいことも楽しいこともあります」(恩田さん)

初めはアジアの4、5港を回っていたのみだったが、90年代から世界を回るようになった。

船旅の間、訪れる先では、そこの人たちが直面している課題にも触れることになる。そこから様々なプロジェクトが生まれてきた。

貧困や震災で苦しむ地域を訪れ、日本からの支援物資を届けるプロジェクトや、カンボジアの地雷廃絶のためのキャンペーンなどが一例だ。

「船なので、物資も運んでいけるんです。例えば『ピースボールプロジェクト』では、日本で使われなくなったサッカーボールやスパイクを持って行って、貧しくてサッカーボールを買えない地域の子どもたちに渡しています。楽器を集めたり、文房具を集めたりすることもある。これまでいちばん大きなものでは、救急車をキューバに持って行ったこともあります」(恩田さん)

さらに、100日間のクルーズを終えた後も、自分が属するコミュニティで平和の担い手になっていってほしいという思いから、ピースボートでは「地球大学」という活動を行なっている。船上では「ゼミ」がありゲスト講師を招いて講義が行われ、寄港地では体験的に理解を深め、自分の問題としてとらえる視点を養う。

地球大学を担当する畠山さんが説明する。

「例えば、カンボジアのキリングフィールド(大量虐殺が行われた処刑場)に行ったときのことです。頭蓋骨がタワーのように展示されているのを見たときに、私を含め日本からの参加者は『なんて辛いことが起きたんだろう。二度とこういうことを起こしてはいけないなぁ』と考える。その横で、スリランカから来た子たちは怒っていました。『頭蓋骨を見世物にするのは侮辱ではないか』と。こうした考え方の違いを受けて、じゃあどういった歴史の継承の仕方があるのか、過ちを起こさないためにどうしたらいいのかという議論を、船に戻った後で深めていきます」

国連との特別協議資格を持つNGOとして、「持続可能な開発目標」 (SDGs) の達成を目指すさまざまなプロジェクトにも取り組むピースボート。

「私たちは、誰一人取り残さない社会を実現しようというのをテーマにしています。平和というと先進国が途上国を助けてあげるというイメージをしがちですが、そうではなくて、対等なパートナーとして一緒に持続可能な世界を目指していく。先進国と呼ばれている国にも取り残されてしまっている人、苦しい思いをしている人はいます。そういう人に目を向けられる人を作ることも、平和や持続可能な社会への第一歩なのではないかと考えています」

【文:高橋有希/ 編集:南麻理江】

堀潤さんがMCを担当する月曜の「NewsX」、次回は5月20日夜10時から生放送。番組URLはこちら⇒https://dch.dmkt-sp.jp/title/tv/Y3JpZDovL3BsYWxhLmlwdHZmLmpwL2JjLzBjMWQvNWU3MQ%3D%3D

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