男性育休 ”義務化” に向け、自民党有志が議連発足へ

共働き夫婦が担う家事関連時間は、夫が39分、妻が258分で約7倍の差がある。解消に向け、政治も企業も動き始めている。

子どもが生まれた男性に育児休業を原則100%取得させる仕組みの導入を目指し、自民党有志による議員連盟の発足準備が進められている。

男性も育児休業が取得しやすくなる「パパ・ママ育休プラス」の制度が新設されてから9年。改正育児・介護休業法が施行された2010年に1.38%だった男性の育休取得率は5.14%(2017年度)まで伸びたものの、「2020年までに13%」という政府目標にはほど遠い。

ハードルとなっているのは、申請手続きの煩雑さや企業内の空気感だ。男性が育休取得を言い出せない状況をなくそうと、政治や企業が動き出している。

「男性の育休“義務化“を目指す議員連盟」

議連の名称は「男性の育休“義務化“を目指す議員連盟」となる予定で、呼びかけ人には参院議員の松川るい氏、森まさこ氏、衆院議員の和田義明氏が名前を連ねている。会長には松野博一元文科相の名が挙がっている。

総務省の「社会生活基本調査」(2016年)によると、共働き夫婦が担う家事関連時間(育児や介護も含む)は、夫が39分、妻が258分で約7倍の差がある。

松川氏は3月に開かれた国際女性会議でも、男性の育休義務化を提案。「1日24時間という限られた資源を、女性は男性よりも7倍多く家事育児に使っている。夫婦が24時間をフェアに使えるようになれば、少子化対策や経済効果にもつながる」と力説していた。

党内には“義務化“という単語が強すぎるという意見もあるが、松川氏は「政治的に大きなメッセージを発するためには必要なワード」だとの考えを示す。民間企業などとの連携も考えているという。

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企業や自治体にも男性育休の波

男性育休をめぐっては、サイボウズの青野慶久社長やメルカリの小泉文明社長、三重県の鈴木英敬知事など、企業や自治体のトップが自ら育休を取得する動きが注目されてきた。

最近では、積水ハウスや三菱UFJ銀行が男性社員に約1ヶ月の育休を取得させる管理義務を導入し、事実上の「義務化」を行なっている。

さらに、現状は「義務化」されていなくても、男性社員が育休を100%取得できる職場づくりに取り組み始めた企業もある。働き方改革のコンサルティングを数多く手がけてきたワーク・ライフバランス社が提唱する「男性育休100%宣言」プロジェクトだ。

働き方改革の必要性を長年訴え続けてきたの小室淑恵社長は「このタイミングで国をあげて男性が育児休業を100%取れるような社会に転換していくことが急務です」と語る。

「男性育休100%宣言」に賛同している企業
「男性育休100%宣言」に賛同している企業
ワーク・ライフバランス社公式サイト

「働き方改革で職場は変化しましたが、それだけでは生産性向上にはつながりません。育児休業等をきっかけに、男性が新しいコミュニティへの参加・価値観のパラダイムシフトが起き、それが復帰した職場でのイノベーションや、生産性の高い働き方につながります」

「また、産後の妻の死因1位は『自殺』です。その要因である『産後うつ』のピークは産後2週間です。この時期に孤独な育児で苦しむ妻を男性の育休が救うのです。ここが解決できないと、この国の少子化は解決できません」

18日現在、「男性育休100%」を目指すことを宣言している企業は31社。公式サイトには、宣言企業の経営者の顔写真とサインがずらりと並ぶ。経営者自らの決意発信が重要だとの考えからだ。

議連発足は追い風にもなるか。

小室さんは「平成は”女性活躍の時代”でしたが、令和は”男性の家庭活躍の時代”。現場からの積み上げの議論では到底発想できない、男性育休の”義務化”というアプローチは、万策尽きたと思われている少子化を打破するのかもしれない」と期待している。

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