男性育休「義務化」は、「誰かが悪役にならなくては」。 議連発足、自民・和田義明氏の決意とは

5月23日に自民党有志による「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟(仮称)」の発起人会が開かれる。
自民党の和田義明衆院議員
自民党の和田義明衆院議員
Yuriko Izutani/HuffPost Japan

男性の育児参加を促そうと、5月23日に自民党有志による「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟(仮称)」の発起人会が開かれる。

議連発足の契機は、2018年12月に行われた自民党女性活躍推進本部(森まさこ本部長)の会合で、和田義明衆議院議員が「男性の育休は義務化すべきだと思う」と発言したことだった。育休「義務化」への思いを聞いた。

「文化を変える。荒療治が必要だ」

ーー「義務化」というワード、思い切りましたね。

潜在的なニーズは感じていたんです。この話をすると、友人でも顔色が変わるほど「本当にやってほしい」という人がものすごく多くて。特に女性は「絶対やって」と切実。男性も取れるものなら取りたいけど、そんな雰囲気でも文化でもないし、というところですよね。

日本の育休は、これだけ以前からいい制度があるのに、取得が進まない。これは文化を変えなければいけない。荒療治が必要だ、と。そういう意味で「義務化」という刺激的な言葉を使いました。それくらいの覚悟でやらないと実効性が担保できない、という切迫した思いがあった。

ーー「義務という形で強制するべきではない」というような反発もあるのでは?

報道を見て、地元・札幌の事務所には「中小企業でできるわけがない」とお叱りの電話もありました。経営者の団体、企業の団体からは反発が強いと思う。ただ、中長期的に見れば、「このままではあなた方の未来がないんですよ」ということを丁寧に理解を求めていかなくてはと思っています。

それから、男女とも親の責務は果たしましょうよ、と。日本の一番の問題は少子化ですよね。教育無償化とか対策はやってはいるが、特効薬はない。効くだろうということを、ひたすら打ち続けていくしかない。そして、男性が子育てをすることによって、状況は必ず変わってくる。最大の国益につながる政策の一つだと思っています。

ーー議連のゴールは? 「義務」を盛り込んだ法改正も検討していますか?

「義務化」というのは職場側に対するメッセージですよね。議連として目指すのは、法改正というよりも、一定期間、きちんとした期間の育児休業を取りましょういうことと、取得率100%。

ただ子どもとベッタリ一緒にいるのではなく。育休を5日取っても、その後の働き方が変わらなければ意味がないわけです。きちんと育児参加が定着していくことが大事。休むばかりでは限界もあるでしょうが、そもそも現行の育休制度では、育休中でも月80時間までは働くことが可能です。こうした制度や時短勤務などの軽勤務をミックスしてもいい。

軽勤務は有効活用するればサステナブル(持続可能)だと思うんですよ。じゃあ、育休を何日取るのがいいのか。軽勤務はどれくらいの期間なのか。まだ議論すべきところは色々あって、時間をかけて切り崩していく必要があると思っています。

もちろん法律に落とし込むのは簡単ではない。理念法かガイドラインか分からないが、企業や団体が動いてくれるようなものを作る。何より実効性が大事なので。

専業主婦家庭でも、子育ての感動を知らない父親でいいとは僕は思わない

ーー「取りたくない」という人にはどう対処しますか?

うーん、本来なら、職場が「育休を取りなさい、ちゃんと子育てをしなさい」と言ってほしいですね。ただ、個人の働き方の自由を踏みにじってまで、というのはなかなか難しいとは思います。

でも、専業主婦家庭であっても、お父さんが子育てにノータッチでいいとは思わない。僕自身の経験ですけど、子育てに関与することで今まで考えてもみなかった絆や感動が生まれた、というのがある。そういうのを知らないまま父親でいることと、知らずに父親でいることの差は大きいと思います。どなたに対しても、子供と接する経験を一定期間持って欲しいなと思うし、そこを知らずに父親でいていいという風に僕は思わない。

ーーご自身、育休の経験は?

5年前に長女が生まれた時は、商社に勤めていました。育休は取らなかったし、発想がなかったです。ただ、平日は妻に任せていましたが、週末は3食作ったり、平日も夜泣きで起こされたり。限られた時間で子どもにはできるだけ関わりました。

赤ちゃんて、何を思って泣いているのかも分からない。どう対処していいかも分からない。怖いですよ。離乳食なんて、せっかく作って食べさせてもすぐ吐き出すし。

限られた時間でも向き合うのは大変なので、毎日1対1で向き合ったら発狂するなと思いましたね。生まれるまでは「母親なんだから根性で乗り切れるんだろう」と思っていた部分も正直あったので、世の中のお母さん方に酷なことを思っていたんだなと反省しました。

今は5歳ですけど、街中の僕のポスターを見て「パピー」と言ってくれます。毎週月曜日は涙、涙です。

ーー事務所にも娘さんの描いた絵や写真がありますね。今なら育休取りますか?

取りますね。もともと海外生活が通算10年あり、日本のワークライフバランスはおかしいと思っていました。海外だと父親と母親が両方育児をする、というのはごく当たり前。価値観は人それぞれで、一言でカテゴライズはできないけれど、多くの父親は子育ての義務を果たしていないという気持ちがあった。

それに、少子化対策になる、虐待防止にもつながる、という以前に、単純に子どもといて日々の成長に関わるのは楽しいですもん。ハッピーになれる。

若手の男性議員は「すごく前向き」

ーー議連には男性議員が多いとか。自民党の男性議員が?と少し驚きました。

そんなこと言わないでくださいよ。このテーマは、男女両方の議員がやらないといけない。いろんな議員に声をかけましたが、1〜3期生ぐらいの男性議員はすごく前向きです。パワフルな議連になると思う。

党内でも男性の育児参加のニーズは理解されているし、「男は外、女は家」という感覚をまだ持っている人は、僕らくらいの年代ではいないと思いますよ。

ーーもう一つ。義務化反対の声として「育休を取ってもきちんと育児に関わらない夫が多い」というのもあります。

どうしたらいいんでしょうね? 職場でも研修すればいいと思うけれど、社会人になってからの頭の切り替えは難しい。学校教育でもやらないといけないんだろうとは思いますね。

ーー動き出せば色々な抵抗もあると思います。理解は得られるでしょうか?

こういうことをやらない企業は、人が採用できなくなるんです。生産年齢人口が今後激減し、企業に人が行き渡らなくなる。国民のみなさんの価値観も、「お給料だけではなく、ワークライフバランスや達成感を大事にしたい」と変わってきた。企業も変わっていかないと生き残れなくなるんですよ、と。避けて通れないものを見ないふりするのは誠実ではない。

なかなか政治家の口から言いづらいですよ、はっきり言って。でもしっかり言っていかないといけないし、理解してもらわなくてはいけない。誰かが悪役にならなくては。企業のためなんです。働き方改革も、なんやかんやでそうやって切り崩していったんですから。

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