チューリップは『町の誇り』。福岡・直方市の市民たちが20年以上守り続けるチューリップフェア。

チューリップの開花に合わせて、3月下旬〜4月上旬に行なわれる「のおがたチューリップフェア」は県内外から20〜30万人が訪れる。
チューリップフェアの様子
チューリップフェアの様子
A-PORT

川べりに咲き誇る色とりどりのチューリップ

福岡県北部、筑豊地方にある直方市。市内を流れる遠賀川の河川敷で毎年行なわれているのが「のおがたチューリップフェア」だ。チューリップの開花に合わせて、3月下旬〜4月上旬に行なわれるこのイベントに訪れる観光客は、県内外から20〜30万人。いまや、すっかり町の顔として定着している。来年のフェアに向けて今年より2万球多い15万球のチューリップを植えようと、A-portでクラウドファンディングに挑戦している。

直方市でチューリップが広がったのは1992年、遠賀川河川敷にある直方オートキャンプ場の環境美化のために市民ボランティアが1万球の球根を植えたのがきっかけだった。もともと花卉栽培が盛んな土地柄だったこともあり、その数は年々増え、1995年には約10万球に。1996年には「花の都市宣言」をして、直方市としても力を入れるようになった。

「花の都市宣言後は、市内を花で飾って、市民にうるおいを感じてもらおうと、河川敷に25万球のチューリップを植えました。遠賀川の川べりは、桜や菜の花の名所で、そこにさらにチューリップが加わって、春の美しい光景がたのしめるようになったんです」(直方市商工観光課係長・池田朝二さん)

一面に広がるチューリップ畑を観光客にも広く楽しんでもらおうと、1997年から「のおがたチューリップフェア」が開催されるようになった。

直方市商工観光課係長・池田朝二さん
直方市商工観光課係長・池田朝二さん
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駅を降りた瞬間、カラフルなチューリップが出迎え

チューリップが植えられている遠賀川河川敷は、市民の憩いの場「直方リバーサイドパーク」として整備された場所。芝生が広がり、川沿いのウオーキングやジョギングコースとしても人気だ。遠賀川とその向こうに連なる福智山山系を背景に、河川敷いっぱいに咲き誇るチューリップ畑は一見の価値がある。

チューリップフェアではイベントも多数開催し、会場を盛り上げる。今年は植木三申踊や吹奏楽の演奏会、人力車や旧国鉄バスの乗車体験、川でのカヌー乗艇会などが行われた。また、「駅を降りた瞬間から、たくさんのチューリップを楽しんでもらいたい」と、駅前にはチューリップのプランターを組み合わせたタワーを設置。駅から会場までの道のりにもチューリップを並べたフラワーロードが続き、観光客の目を楽しませた。

チューリップフェアの様子
チューリップフェアの様子
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大勢の市民の手でチューリップを育てる

「チューリップを育てるために、多くの市民が参加しているのが我々の自慢です。地元住民が積極的に関わることで、地元に愛されるイベントとして成長してきました」と池田さん。

毎年、秋になると園児、高校生をはじめ、高齢者の方や協力企業などから1000人以上が、チューリップの球根の植え付けに参加。チューリップの花が終わった5月には、市民が参加する球根の掘り上げ会も行われる。

「チューリップフェアでは、自分が植えた球根の場所がわかるようになっているので、どんな色の花を咲かせたか楽しみに見に来てくれる人も多くいます。花が終わった後に掘り出した球根は、みなさんにプレゼントして、自宅で翌年の春に咲かせてくださいとお願いしています。イベント会場だけでなく、直方市のあちこちで、チューリップの花が咲いている景色が広がってくれたらうれしいですね」(池田さん)

チューリップは直方市の誇り──。
そんな思いが地元の人々の心にすっかり根付いているという。

チューリップの球根を植える市民ら
チューリップの球根を植える市民ら
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開催危機を救った、市民のチューリップへの思い

今年で23回目を迎えた「のおがたチューリップフェア」だが、2007年、市の財源が赤字に転落し、開催が危ぶまれたこともあった。

「市主催ではチューリップフェア開催が難しいとなったときに、市民の有志や企業、団体の方々から成る実行委員会が結成されました。行政ができないなら民間でなんとか開催しようと奔走してくれたんです。 “せっかく直方の風物詩として定着したチューリップフェアをなくしたくない”という、みなさんの強い思いのおかげで途切れることなく開催し続けることができました」と池田さん。

現在は、実行委員会から観光物産振興協会の主催にバトンタッチし、直方市と協力してチューリップフェアを開催している。

チューリップの数を増やして、さらに華やかなイベントに

地元のボランティアからはじまった直方のチューリップ。それを守り続けようと、現在も約70の地元企業や団体が協賛。球根の植栽や掘り起こしなどに参加するボランティアの数も年々増え続けているという。
「のおがたチューリップフェアは、市民が守ってきた“市民が主役”のイベントです。今や直方のアイデンティティのひとつといってもいい」というだけあって、地元では、もっとチューリップフェアを盛り上げたいという声が根強くあるという。

最盛期は35万球だったチューリップは、現在13万球。来年開催時には、もう2万球増やして15万球にすることでスケール感のアップや、市内に飾るチューリップを増やしたいと考えている。
「九州でもそれほど知られていなかった直方市が、チューリップのまちとして多くの観光客に訪れてもらえるようになりました。もっとたくさんのチューリップを楽しんでもらうことで、直方をもっと活性化して元気にしていきたい。全国のみなさんからのクラウドファンディングへの支援をいただくことで、その思いを実現したいと考えています」(池田さん)
クラウドファンディングは7月27日まで。詳細はこちら

(工藤千秋)

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