ドラマが「性的マイノリティ」について教えてくれること

『腐女子、うっかりゲイに告る。』は性的少数者の切実さをかなりリアルに描いたドラマだと言える。
NHKドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』番組ホームページ
NHKドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』番組ホームページより
NHKドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』番組ホームページ

『腐女子、うっかりゲイに告る。』は性的マイノリティの切実さが伝わってくるドラマだ。

そういう意味ではLGBT当事者が主人公のドラマの中でも異彩を放っている。

『おっさんずラブ』をはじめ、性的マイノリティが主人公のドラマはコメディが多いのに対して、『腐女子…」はかなり切実な青春ドラマだ。

特に切実だったのが5月18日(土)に放送された第5回だった。

主人公の高校生、安藤純がゲイであることを同級生に暴露された後で、教室で着替えをしていた男子学生の中で「気持ちが悪い」と言われて、バルコニーから飛び降りて自殺を図る。

主人公の安藤純が教室の外のバルコニーにある鉄柵の上に上って飛び降りようとしている。

それを純に思いを寄せる紗枝や親友の亮平らが必死に止めようとしている。

(安藤純、亮平に向かって)

「僕さ、亮平とセックスする夢、見たことあるんだ。すごい変態だろ?」

(中略)

「僕が悪い、僕がこんなふうに生まれちゃったから。もう、疲れた。ただそれだけなんだ・・・」

(紗枝)「安藤くん、やめて!」

「バイバイ・・・」

純は掴まっていた手すりから手を離して飛び降りる。

落ちる瞬間、心の中でつぶやく。

(ああ、欲しかったなあ、普通が…)

先日、読売テレビが関西ローカルの報道番組『かんさい情報ネットten.』の中のコーナーで一般の人の「性別」の調査を芸人コンビが行う場面を取材・放送して「性的少数者を傷つけかねない」と批判が集中したことは記憶に新しい。

テレビと「性」といえば、最近ではテレビドラマにも従来なかったほど様々な性的少数者が登場するようになった。『おっさんずラブ』(テレビ朝日)、『きのう何食べた?』(テレビ東京)、『弟の夫』(NHK)など、「同性愛」の当事者が主人公になる作品は今や珍しくはない。とはいえ「性的少数者として生きることの辛さ」を切実な形で伝えようとする作品はまだ数えるほどだ。

そうした中で、最近、読売テレビの報道番組『ten.』で起きた「性」についての無神経な扱いは、もし関係者が事前にこのドラマをきちんと見ていればおそらくは起きなかったはずではと思われるほどのドラマだ。それが毎週土曜日の深夜NHK総合で放送されている『腐女子、うっかりゲイに告る。』である。

ドラマでは、主人公の男子高校生・安藤純は同性愛者(ゲイ)であることを隠しながら同じクラスの女子・三浦紗枝とも交際していたが、チャット相手だったゲイの男性が自殺するなどで悩むうちに妻子ある男性とキスしている場面を見られたことで紗枝の前でゲイであることをカミングアウトする。ところがその会話を同級生の男子・小野にも聞かれてしまい、小野がクラス中に暴露する。

教室の中で男子が着替え中に小野が純のことを「気持ち悪い」と、嫌悪感を露骨に示す。

(小野)「おい、出ていけよ」

(安藤純)「なんで?」

(小野)「お前のおかずになる気ないから」

(純)「しないよ、そんなこと」

(小野)「変態の言うことなんか信用できるわけねえだろ」

(亮平)「小野、マジでいい加減にしろよ!」

(小野)「はあ? 俺はお前らが思っているけど言えないことを代表して言っているだけなんだけど」

(亮平)「ふざけるなよ。俺はそんなこと思ってねえよ」

(小野)「本当かよ? お前はあいつのこと、本当に気持ち悪いと思わないの? 男に興奮して、男に勃っているあいつのこと、本当に理解しちゃうんだ」

(亮平)「今はそういうの気にする時代じゃないでしょう? 好きでそういうふうになったわけじゃないし。もちろん、病気なんかじゃない!」

(小野)「質問に答えろよ。時代じゃないとか。好きでそうなったわけじゃないとか、病気じゃないとか、そんなのはどうでもいいんだよ。俺らには何の関係もない。大事なのは俺たちがあいつのことを気持ち悪いと思うかどうかだろう?」

(小野)「なあ、りょうへい。お前はあいつのこと、本当に気持ち悪いと思わないの? もしかして、お前もあいつの仲間なのか?」

(亮平)「違うよ! 俺は・・・」

(純)「わかった。出て行く。着替えづらいよね。僕がいたら・・・」

こうして、冒頭の飛び降りの場面へとつながっていく。

続く5月25日放送の第6回では純は大ケガをしたものの命に別状はなく、入院している場面から始まっていた。まだドラマは続いている。

『腐女子…』はこのように性的少数者の切実さをかなりリアルに描いたドラマだと言える。

注目されるのは番組ホームページの掲示版だ。

ここには性的少数者の「当事者」と思われる視聴者からも共感の声が多数寄せられている。

全く同じ気持ちかも。

No.312 2019/05/21 23:46:48

強引なストライド さん(20代・千葉県・回答なし)

毎週録画してこっそり見ています。

何のために生まれてきたのか?

私は男の人が好きです。

接客業をしているのですがカッコいいなと思うお客様が来ると嬉しくなってしまう。

でも好きでこうなったわけではないし、もちろん女の人を好きになって家庭を持ちたいと強く思っている。

いいや、それよりも世間体を気にしているのかも知れない。

その世間体が言う普通とは何?

男から女、女から男、そして、男から男の人を好きになるのも人を愛すると言う意味では一緒なのではないか。

それが普通になる世の中にはならないと思う。

だからこっそりそ生きるしかないと思う。

そう思っている私自身共感してくれる方々はもしかしたらゲイではなくバイなのではないかと思います。

少しは女の人にも関心がある。

私はその少しの可能性に賭けてみて女性とセックスをした時に勃たないかも知れないけど、世間体が言う普通になってやろうって思いました。

それがLGBTとして生まれてきてしまった私のせめてもの反抗です。

homosexual さん(20代・神奈川県・男性)

1~4話まではなんとなく作られた物語を見ている気持ちでした。

5話の予告や本編を見て一気に現実味を感じ、ジュンくんに対する視線や心無い言動を自分に重ね涙が止まりませんでした。

僕も同じ事をされたらきっと逃げたくなる、けど何処にも居場所を見つけられなかったらきっとジュンくんと同じ事をしてしまうと考えてしまった事がとても怖かったです。

この後の話も頑張って見ようと思います。

そう太 さん(50代・東京都・男性)

日本のゲイ…ホモは純君のように、「もう疲れた…」と少なからず思っています。

普通と思えないゲイ、自身を普通と思えるゲイ…それぞれで差はありますが、一度世間の中に入れば、同級生、同僚、本当に仲の良いと思える友人、そして親から兄弟からも…

ホモ、オカマ、よく言ってゲイ、LGBTの偶然の話題に、ゲイが感じる汚く悲しく辛い言葉を何回、何十回、何百回も…歳を重ねれば重ねる程、その回数は積み上がっていきます。それを聞き流し、誤魔化し、それによっては同調し乗り切る…

かなりの確率で身近にゲイがいると思います。今回の小野君、下級生、また先輩の彼氏のように発言は自由ですが、その言葉でどれほど傷つき嫌になることか…

普通の方でも、何かしらの理由で差別的な言葉を受ける事があるかもしれません。

それでもホモに対する言葉は汚く悲しいものがほとんど世の中です。

正直なところ「疲れた…」は本心をついています。

このドラマを通して、ゲイを嫌い汚いと思っても、せめて言葉に出さない世の中に少しでもなれば…そしてその言葉から少しは解放される気がします。

またこの掲示板で、色々な声を聞けた事に感謝しています。

りんたろう さん(20代・茨城県・回答なし)

なんか、自分の昔抱えていた悩みを思い出しました。でもきっと今苦しんでる時期の方もいると思うので、それは忘れずにいたいなと思いました。

こんなに忠実に描いてくれた、演者の方、スタッフの方に感謝です。

すい さん(20代・栃木県・回答なし)

同じような経験をしたことがあって、直接的に言われるようなことは無かったけれど、学校中で噂され、挙句馬鹿にしたように嘘告をしてきた奴もいて、でも、自分はその子が好きで本当に嬉しかったのに、学校に行ったら笑いものになりました。すごく辛くて悲しくて、当時は普通になりたかったって願ってました。

だけど、自分からすればそれが普通であって、周りと別に違くてもいいんじゃないかって思いました。普通に周りの子達と同じように恋愛をしてるだけでなんでそんなに責められなくてはいけないんだろうと思いました。

これからどのような展開になっていくのか気になります。見ると辛いですが、少しでも世間からの目がかわりますように。

このドラマには谷原章介が演じる「誠さん」という妻子持ちのゲイ男性が登場する。自分の妻子を大切にしながら主人公の純と肉体関係を結ぶ年上の男性で純の心を翻弄する。その「誠さん」への共感も寄せられている。

シュウ さん(40代・埼玉県・男性)

僕は既婚者ですが、ゲイです。誠さんと同じです。家族はとても大切です。妻も、子供たちも。でも、どうしようもなく、本当の自分として、求める人を愛したい…そう思う時があります。もしもあのとき、違う選択をしていたら、僕の人生は違ったものになったかもしれない…そう思う時もあります。でも、それを考えても詮無いこと。かけがえのない家族や今の生活も、自分が選択したからこそ出会えたものだから。でも今、好きな人がいます。彼にも家族がいます。だから、互いに家庭を大切にすることを第一に、誰にも言わず、付き合っています。時々会って、食事し、会話し、キスをして、愛を囁き、体を重ねる…。こんなの、誰も理解してくれないし、倫理的に間違ってますよね。おかしいですよね。でも、こうでしか生きられないんです。こうするしか、精神を保てないんです。こうしないと、家庭や、会社や、社会に、普通の顔して帰っていけないんです。ドラマの中で、誠さんを皆さんはどう見ますか?僕は、苦しい。家族がいて幸せだけど、苦しい。彼がいるから、僕は僕としていられる…。それが、誠さんです。

ゲイの人たちの中には同性愛者であることを周囲に隠して妻子とともに生活している場合もあるなど、生き方は一様でないことをこのドラマは教えてくれる。

また、純が飛び降りながらつぶやいた「欲しかったな、普通が」という言葉に共感するという声が多数寄せられている。

「ふつう」

No.313 2019/05/21 23:57:53

nemo さん(50代・東京都・男性)

この歳になってもなお、心無い一言に傷ついてしまった、つい昨日。

どうもがいたって「ふつう」になれない人間に対して、どうして人は、こんなにも残酷になれるんだろうか...

何が正解か考えました

No.306 2019/05/21 19:37:49

てんこ さん(50代・東京都・女性)

いつも普通ってを考えていました。

これは難しい。誰が正解かどれが正解かわからないです。

ただ、大勢の人とちょっと違うと生きにくいと思います。

飛び降りる前、彼が感じている苦しさを感じました。

どの年代が観ても多く学べるドラマだと思います。

ひろと さん(30代・宮城県・男性)

5話まで欠かさず見ています。5話のラストのじゅんくんの「もう疲れた」「欲しかったなぁ、普通が」。自分が昔感じていたことを思い出しました。6話楽しみです

普通ってなんなんですかね?

No.315 2019/05/22 03:32:28

ちっちゃいおっちゃん さん(30代・静岡県・男性)

やっと5話まで見れました。

僕もゲイですが、純くんと同じように【普通】に憧れて、仲のいい友達にはひたむきに本当の自分を隠して生きてきました。

でも【普通】になるには色々なことに偽りが必要でした。気づいたら自分は偽りだらけの人間になっていて、友達とも距離を感じていました。

高校2年のときに偽ることをやめました。

今では両親はじめ兄弟、親族、友人、職場仲間全てにカミングアウトしています。

それが僕の【普通】なんだと分かりました。

別に嫌いになってくれて構わないって思えると、純くんも気持ちが楽になると思いますが、それが出来ないのが高校生のときだったなーって思い出しました。

亮平や小野くんの友達を思う気持ちも三浦さんの純くんを慕う気持ちも純くんの普通を求める気持ちもどれも胸に刺さります。

6話も楽しみです。

さらには、この「普通」をめぐって、様々な「性」のありようが存在することがわかる。他者に対して性的欲求を抱かない「アセクシュアル」という「性」を自認する人たちからも感想が寄せられている。

「普通」の暮らし

No.318 2019/05/22 16:46:09

めがね さん(40代・熊本県・女性)

2人の子育てをする平凡な母親として暮らしていますが、アセクショナルです。アセクショナルは人間が嫌いなわけではありません。人間が大好きで、恋愛感情がないからこそ距離感が近かったのかもしれません。尊敬できて気の合う人から結婚しようと言われて結婚しました。「普通」の生活を選んだことに、深い意味はありません。たしかに性欲,嫉妬心,独占欲はありませんが、結婚,出産には必要ないものでした。家族を大切にして暮らしてはいるものの、私の感覚は「普通」ではないし、夫を騙しているのかもしれないし、間違っているのかもしれない。このドラマの原作を読んで、薄ら寒くなりました。私には純くんのようなセンサーがないので、アセクショナルであることに気づくのも遅れ、思春期に思い悩むこともありませんでした。自分をカテゴライズすることは、ときに救われることで、ときに苦しいことです。私は「普通」の暮らしにこだわってきたつもりはないのですが、無意識に「普通」に流されて生きてきたんだと痛感しています。それはあくまでも外から見た「普通」だから。

私が苦しまなかった問題に純くんは苦しんでいる。私も苦しむべき問題に誠さんは苦しみながら折り合いをつけている。それでも私は自分と向き合うことを避け、普通の暮らしを手放すつもりもない。1番卑怯な生物なのかもしれません。でももう始めてしまったから。The show must go on.

こんなことが知らないうちに起こっているんです。

No.308 2019/05/21 21:13:13

かえで さん(20代・福岡県・女性)

私はアセクシャルを自認する20代の女性です。

わかるなあ、この間まで学生だったけどこういう、私は何で生まれてきたんだろうという暗い雲が覆っていて、そして相談する相手なんかいなかった。普通に愛せないことがこんなにも疎外感や孤立を生んで、寂しくてやったカミングアウトは最悪で、アウティングされて。

これを見たヘテロの人も、そうでない人も、みんなが「理解」してくれたらいいなと、少し希望を持って思っている。私は性的欲求が無いけれど、家族や友人を愛してる。そうやって愛せるんだよ。セックスだけが愛じゃない。

今回、性的マイノリティの存在をまったく想像しないでテレビ番組を取材、放送した読売テレビの関係者を始め、多くの人たちにこのドラマを見てほしい。ドラマだけでなく、番組の掲示板に寄せられた切実な声も合わせて読んでほしい。

以下のような、純くんのような人が生きやすい社会を作っていきたいという声はこのドラマを見た多くの人に共通するものになっている。

胸に突き刺さる回でした

No.317 2019/05/22 11:42:41

双子ママ さん(40代・神奈川県・女性)

じゅんくんの、言葉、もー疲れたという言葉、本当に胸が熱くなり涙が無性にでて切なくなりました。

じゅんくんの日常、秘めた思い、全部打ち明けられない環境、いろいろ考え、胸が張り裂けそうになりました。僅かにわかってもらえる友達の存在、でも満たされjavascript:void(0);ない、何だろうこの思い。じゅんくんが楽に生きられる日本てわあってほしい。頑張らなくていい、そのままで、回りが変わればいいのです。

リアル

No.325 2019/05/23 17:07:06

y さん(30代・神奈川県・女性)

小野くんの言ってた、「そういう時代とかじゃなくて単純に気持ち悪いと思わないのか?」というような言葉は、考えさせられた。純くんも、自分自身がそういう思いに苛まれていて、いたたまれない。LGBTという言葉がメジャーになっても、本当に受け入れられる社会を作ることは、実際難しいのかもしれない。

みんな同じですよね

No.326 2019/05/23 17:40:43

み さん(40代・東京都・女性)

あまり偏見がない方だと思っていました。

でも、前回の放送を観て、じゅんくんの言葉を聞いて、価値観が変わったような気がします。

素晴らしいドラマをありがとうごさいます。

みんなひとを好きになる気持ちは同じ。

とてもステキなことです。

オープンにできる世の中、みんなが幸せな世の中になれるよう、していきたいと思いました。

これほどの共感の声がひとつのドラマに集まっているというのは、一つの「事件」と言ってもいい。

テレビにも性的マイノリティへの理解を広げるこうした力がまだまだあることを、読売テレビを始め、テレビの関係者たちはもっと自覚して、当事者が共感する番組づくりに取り組んでほしい。

(2019年5月2日Yahoo個人より転載)