日米首脳会談、どんなことが話し合われたの?貿易問題や北朝鮮問題、今後の課題は

トランプ大統領は、アメリカ側の貿易赤字の解消に強い意欲を示した。一方、北朝鮮対応に関しては「あらゆる支援を惜しまない」と表明した。
日米首脳会談に臨む安倍晋三首相(右)と米国のドナルド・トランプ大統領=5月27日、東京・元赤坂の迎賓館[代表撮影]
日米首脳会談に臨む安倍晋三首相(右)と米国のドナルド・トランプ大統領=5月27日、東京・元赤坂の迎賓館[代表撮影]
時事通信社

安倍晋三首相とアメリカのドナルド・トランプ大統領は5月27日午後、東京・元赤坂の迎賓館で共同記者会見に臨み、今回の首脳会談の成果について語った。

ゴルフや大相撲、炉端焼きでの食事会など、動向が逐一ニュースで取り上げられていたが、結局はどんなことを話し合ったのか。

日本とアメリカ、双方の会談の狙いと成果を整理する。

貿易問題は?安倍首相「ウィンウィンの形のために」トランプ大統領「貿易赤字を削減しようとしている」

安倍首相は今回の会談を「議論を加速させることで一致した」と説明し、早期妥結を避けた結果となった。

会談では、貿易問題のほか、6月に大阪で開催予定のG20(主要20カ国・地域首脳会議)の調整、拉致問題を含む北朝鮮への対応やイラン情勢などが話し合われたという。

安倍首相は会見でトランプ大統領をときおり「ドナルド」と呼びながら「日米の揺るぎない絆を内外に鮮明にする絶好の機会になった」と蜜月さをアピール。

日米首脳会談の内容について共同会見で語る安倍晋三首相=5月27日
日米首脳会談の内容について共同会見で語る安倍晋三首相=5月27日
AFP=時事

貿易問題については、「世界で最もアメリカの経済に協力しているのが日本企業。前回の首脳会談から、たった1ヶ月で日本企業による対米投資は10億ドルも増加した。旺盛な投資欲のもと日本企業は対米投資を次々と決定している」と日本企業のアメリカ経済への貢献を示し「日米経済関係はwin-winの形で大きく発展しつつある」と述べた。

また、2018年9月の共同声明に沿って、会談に先立ち茂木敏充経済再生担当相とアメリカ通商代表部のロバート・ライトハイザー代表との間で物品貿易についての議論が進められていることを歓迎していると述べた上で、「日米がwin-winとなる形の早期成果達成に向けて、日米の信頼関係に基づき議論をさらに加速させることで一致した」と語った。

アメリカはこの会談で、貿易問題の進展を引き出すことがメインテーマの一つだった。

トランプ大統領は「日本とは何年もの間、信じられないくらいの大きな貿易の不均衡があり、日本の利益になってきた。日本人はすばらしいビジネスマンであり、すばらしい交渉者でもあり、われわれはとても厳しい立場に立たされている」と貿易赤字への不満をにじませつつ「しかし私は日本との交渉はうまくやれると思っている」とまとめた。

共同会見に臨むトランプ大統領=5月27日
共同会見に臨むトランプ大統領=5月27日
時事通信社

今回、貿易赤字の解消について早期妥結を強く迫った様子だ。アメリカが期待するのは、農産品の日本への輸出拡大。

2020年に大統領選を控えるトランプ大統領は、支持層であるアメリカの農家に対して、成果をアピールする必要があるからだ。

ただ、今回の首脳会談では「交渉を加速する」という内容で留め、妥結には至らなかった。夏の参院選を見越して、農業分野を巡る協議が選挙に及ぼす影響を考慮したとみられ、トランプ大統領も参院選への影響を配慮した形になった。

北朝鮮情勢、拉致問題について「あらゆる支援を惜しまないという力強い支持をいただいた」

今回、アメリカと日本が世界で最も強い同盟関係にあるとアピールした背景には、拉致問題を含む問題について、アメリカとの関係性を示して北朝鮮にも対応の変化を期待する狙いがあるとみられる。

安倍首相は北朝鮮への対応について共同会見で「日米の立場は完全に一致している」と述べた。

また、拉致被害者家族と面会したトランプ夫妻について「トランプ大統領とメラニア夫人には一昨年(2017年)の訪日の際に続き、改めて拉致被害者のご家族と面会し、家族を励まし、勇気づけてくれた」と語った。

トランプ米大統領(前列右から3人目)と拉致被害者家族が面会=5月27日午後、東京・元赤坂の迎賓館[代表撮影]
トランプ米大統領(前列右から3人目)と拉致被害者家族が面会=5月27日午後、東京・元赤坂の迎賓館[代表撮影]
時事通信社

その上で「何よりも重要な拉致問題の1日も早い解決に向け、次は私自身が金正恩(朝鮮労働党)委員長と直接、向き合う決意。条件を付けずに金委員長と会い、率直に虚心坦懐に話をしたいと考えている」と述べた。

アメリカの対応としては「トランプ大統領からもこうした私の決意に対し、『全面的に支持する、あらゆる支援を惜しまない』という力強い支持をいただいた」と説明し、「引き続き日米で緊密に連携しながら、あらゆるチャンスを逃さず、拉致問題の1日も早い解決に向け果断に行動していく」とした。

イラン問題の仲介役、残る課題は

緊張が続くイラン情勢について、日本はアメリカとイランとの仲介役を果たす考えを示した。

安倍首相は「イランの核合意については、日本は今まで累次、立場を表明してきたとおりだ。中東地域の平和と安定は日本・米国のみならず、国際社会にとって極めて重要であり、日本は日本としての責任を果たし、できることはぜひ行っていきたい」と語った。

情勢について「日米で緊密に連携しながら、イラン情勢の緊張状態を緩和し、間違っても武力衝突に至ることがないよう、努力していきたい」と強調した。

しかし日本は中東諸国と良好な関係を築いており、イランと敵対する国々とどういう関係を維持していくのかといった課題が残る。

トランプ大統領と安倍首相の会談は11回目 。次の個別会談は6月

トランプ大統領と安倍首相の会談は、4月に安倍首相がワシントンを訪問して以来1ヶ月ぶりで11回目となった。

次の会談は約1ヶ月後になる見通しだ。トランプ大統領は6月28、29日に大阪で開かれるG20(主要20カ国・地域首脳会議)に出席予定で、その際に安倍首相と会談するという。今後の主な予定は次の通り。

【6月】 中旬? 安倍首相がイラン訪問

26日 通常国会会期末

28、29日 大阪でG20、日米首脳会談か

【7月】 ?日 参院選

【8月】24~26日 フランスでG7サミット

?日 トランプ大統領が「日米に素晴らしい発表」

【10月】 消費税率8%→10%へ

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