「東北の子どもたちに笑顔と未来を」福島の猪苗代湖をビーチサッカーの聖地へ。

子どもたちに雄大な自然とビーチサッカーの魅力を一緒に楽しんでもらおうと、ビーチサッカーの強豪チーム「レーヴェ横浜」の選手らが企画を立ち上げた。
プレー写真
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福島県のシンボルでもある猪苗代湖のほとりで、ビーチサッカーのイベントを開く準備が進んでいる。子どもたちに雄大な自然とビーチサッカーの魅力を一緒に楽しんでもらおうと、ビーチサッカーの強豪チーム「レーヴェ横浜」の選手らが企画を立ち上げた。継続的なイベントにして人を集め、いずれは猪苗代湖をビーチサッカーの「聖地」のようにしていきたいという。まずは今年6月のイベントを成功させるために、クラウドファンディングを通じて支援を呼びかけている。

日本は世界のトップクラス。人気急上昇のビーチサッカー

「ビーチサッカー」はもともとブラジルで生まれた砂浜でプレイするサッカーで、2005年からFIFA(国際サッカー連盟)がワールドカップを開催するなど、世界ではメジャーになりつつあるスポーツだ。

日本でも男子サッカー、女子サッカー、フットサルと並び、ビーチサッカーもJFA(日本サッカー連盟)に加盟。2005年には、日本代表チームがワールドカップベスト4に進出するなどの実力を示していて、この11月パラグアイで開催されるビーチサッカーワールドカップへの出場もラモス瑠偉監督のもとで決まっている。

ラモス瑠偉監督(右から3人目)
ラモス瑠偉監督(右から3人目)
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日本代表チームの世界での活躍の影響もあり、最近ではサッカー経験者・未経験者問わず、ビーチサッカーを楽しむ人たちが増えている。

ビーチサッカーは28m×37mの砂浜のコートで、1チーム5人でプレイ。裸足でボールを蹴り、12分×3ピリオドでゲーム。選手交代が何度でもできるので、多くの選手が活躍しやすい。

ビーチサッカーの強豪チーム「レーヴェ横浜」でビーチサッカー選手として活躍する小川大輔さんは、ビーチサッカーの魅力を次のように語る。

「普通のサッカーではパスやドリブルが中心ですが、ビーチサッカーは足元が砂なので、リフティングでボールをつなぐことが多い。オーバーヘッド、ジャンピングボレーなど、普通のサッカーなら『スーパーゴール』と呼ばれるようなアクロバティックなプレイもよく見られます。その分、選手も観客もエキサイティングに楽しめるスポーツです」(小川さん)

狭いコートだけに攻守の切り替えが早く、スピード感があふれるゲーム展開。選手にとっても観客にとってもエキサイティングなスポーツだ。

プレー写真
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社会人サッカーの思い出の地・郡山を離れて1週間後に震災が

小川大輔選手
小川大輔選手
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人気上昇中のビーチサッカーだが、福島県にはまだビーチサッカーチームが存在しない。

そこでビーチサッカーの魅力を伝えようと、小川さんらレーヴェ横浜メンバーと有志が集まって「猪苗代湖ビーチスポーツプログラム プロジェクトチーム」を結成。6月29、30日、福島県会津若松市にある猪苗代湖でビーチサッカーのイベントを開催するためにクラウドファンディングに取り組んでいる。

中心メンバーの小川さんは、大学卒業後、プロ入りを目指して社会人サッカーチームに所属。福島県郡山市でも、社会人サッカーを2年間プレイしていた

「山口県のチームに移るために郡山を離れた1週間後に、東日本大震災がありました。郡山ではすばらしい仲間に恵まれて、いい思い出ばかりだったので、震災は本当に辛いできごとでした」

小川さんは東北復興への思いを抱きつつ、自身の夢であったプロサッカー選手の道は断念。アマチュアとしてサッカーを続けていく中で、ビーチサッカーと出会う。

「友人に誘われてやってみたら、本当に楽しくて。しばらくはサッカーとビーチサッカーを両立していましたが、4年前からビーチサッカーで日本一を目指すと決め、これ一本に絞ってプレイしています」

ビーチスポーツに最適な環境がそろう猪苗代湖

一方で、もう一つの夢である「子どもたちにサッカーを教えたい」という思いを、仲間と立ち上げた社団法人 レーヴェサッカースクールで実現。今は、ビーチサッカー選手として活躍する傍ら、スクールで子どもたちやママサッカーを指導する。

2016年からは、毎夏、猪苗代湖でサッカースクールの夏合宿で、ビーチサッカーキャンプを実施。横浜と福島県のサッカー少年・少女を対象としたスクール、交流イベントを行ってきた。このキャンプに参加した子どもたちは、3年間で延べ100人を超えるという。

「猪苗代湖は雄大な湖、山という自然に囲まれた場所。都会のビーチのような喧騒もなく、のんびりと広い砂浜でスポーツを楽しめる場所です。湖周辺にはビーチスポーツ専用コート、宿泊施設、温泉もある」

ビーチスポーツに最適な環境がそろっているにもかかわらず、福島県にはビーチサッカーチームがない。今回の猪苗代湖のイベントが盛り上がれば、福島県にビーチサッカーチームが生まれるかもしれない。それは、今もまだ復興の途中にある東北に笑顔を届けることになるはずだ。そんな思いが、小川さんたちを突き動かしたという。

猪苗代湖をビーチサッカーの聖地に

レーヴェ横浜の選手ら
レーヴェ横浜の選手ら
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これまで夏合宿のイベントに参加してきた地元の子どもたちも、ビーチサッカーの面白さに大喜び。

「砂の上では転んでも痛くないので、思い切りボールを追いかけられます。裸足の開放感、思い切り体を動かす爽快感に子どもたちも夢中になって楽しんでくれています」

今回のイベントでは、福島県や近隣のサッカーチームに声をかけ、初日に子どもたち、2日目は大人チームがそれぞれ6チームしてビーチサッカーを対戦。エキシビジョンマッチとして、日本代表メンバーが3人所属する「レーヴェ横浜」と東北ビーチサッカーリーグ強豪の「モスペリオ東北」とのエキシビションマッチもある。

ほかにも、ビーチアクティビティ体験、ヨガ教室、物産品の販売やフードブース、ビーチクリーン活動なども計画中。そのための資金として、クラウドファンディングによる支援を呼びかけているという。

「思い切り砂浜でプレイする笑顔の子どもたちの姿は、東北の人たちに笑顔と未来を届けてくれると思います。このイベントは今回限りではなく、毎年続けていきたい。そうすることで、猪苗代湖がビーチサッカーの聖地として盛り上がってくれたら、と願っています。そうなれば、ビーチスポーツをする人だけでなく、観戦にくる人も増えて、地元の観光業にもプラスになるのではないでしょうか」

猪苗代湖のビーチサッカーが、東北の子どもたちに新しい未来の扉を開くことになるのかもしれない。

クラウドファンディングの支援受付は6月10日まで。プロジェクトのページはこちら

(工藤千秋)

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