BLOG
2019年06月17日 11時20分 JST | 更新 2019年06月17日 11時20分 JST

「誰一人取り残さない」未来に向けて、深刻化する中東の水不足を「エアコン排水」が救う

中東および北アフリカ地域では人口の6割以上が飲料水へのアクセスがまったく確保されていない、または極めて困難な状況にある。

世界経済フォーラム公式サイトより転載
中東および北アフリカは世界で最も水不足が深刻な地域。人口の6割が飲料水へのアクセスがまったく確保されていない、または極めて困難な状況にある。

この記事は、世界経済フォーラム中東北アフリカ会合の一部です。

「Leave no one behind.(誰一人取り残さない。)」これは今年の世界水の日のテーマでした。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の基本理念でもあるこの誓いは、包摂性のある世界をつくろうと力強く呼びかけるもので、現在水ストレスに直面している地域がその苦難から解放される未来を目指しています。水はどの国にとってもかけがえのない資源ですが、特に水不足に悩まされる地域には、安全かつ清潔な水に誰もがアクセスできるように、革新的かつ持続可能な手段を講じて積極的に取り組んでいくことが求められています。

中東および北アフリカ(MENA)地域は世界で最も水不足が深刻な地域で、人口の6割以上が飲料水へのアクセスがまったく確保されていない、または極めて困難な状況にあります。また、国内総生産(GDP)の70%以上が「高い」または「非常に高い」水ストレス状態に陥っており、世界平均の22%と比較するとかなり深刻な状況にあると言わざるを得ません。さらに、世界銀行によると、MENA地域は気候変動に起因する水不足による経済損失が最も大きいと予測されており、その損失額は2050年にはGDPの6~14%に相当すると推算されています。したがって水不足は、MENA地域の社会経済的発展を長期にわたって大きく脅かす問題なのです。

現時点では悲観せざるを得ないかもしれませんが、困難の中には必ずどこかに希望の光が見出せるものです。MENA地域では主に脱塩によって水を確保しています。脱塩への依存度はきわめて高く、世界全体の脱塩能力のほぼ半分が集中しており、世界で最も大きい脱塩市場が形成されています。ただし、脱塩はエネルギーを大量に消費する技術であるため、二酸化炭素も大量に排出されます。これが気候変動を引き起こし、結果的に水ストレス状態をも悪化させることになります。また、脱塩には多額のコストがかかるため、どの国でも採用できる技術ではありません。

世界経済フォーラム公式サイトより転載
上位10のリスク(発生可能性・影響の大きさ)

起死回生の希望の光は、雑排水(エアコン、シャワー、洗濯機などの電化製品から出る排水)の再利用。高温多湿なMENA地域では、当然エアコンの使用率が高くなっています。エアコンの稼働による結露で生じた排水は通常はそのまま排水として処理されますが、これを回収すれば清掃用水や灌漑用水やトイレの洗浄水などに再利用することができます。

ここで注目すべきなのは、エアコンの排水は自然に発生するもので、しかもコストがまったくかからないという点です。それだけでなく、普通は無色透明で臭いもなく、ミネラルや殺菌剤も混入していません。ゴミや一定量の細菌は含まれていますが、簡単に除去することが可能で、飲料水以外のさまざまな用途で再利用できます。したがって雑排水は、ショッピングモールや工場、病院のクーリングタワーへ行政が提供する水の量を削減できるなど、水を節約する大きな可能性を秘めているのです。

世界の一般的な家庭で出る排水のうち、50~80%が雑排水だとみられています。この雑排水を回収・再利用すればどれほど大量の水の消費を削減できるか想像してみてください。わかりやすい例を挙げてみましょう。例えば、ドバイで1日に消費される水の量は1人当たり550リットルで、平均的な大きさの浴槽の7杯分に相当します。雑排水を再利用して清潔な水を30%節約すれば消費量は385リットルにまで減り、1日で1人当たり浴槽2杯分以上が節約できる計算になります。

現在、アラブ諸国の22カ国のうち深刻な水不足状態にあるとされる国は13カ国にも上ります。これらの国の1人当たりの水の消費量は年間500立方メートル以下で、世界の平均である6,000立方メートルを大きく下回っています。この現状を踏まえると、水の需要を満たす持続可能な新しい方法を積極的に模索すべき時期に来ているといえるでしょう。そしてそれを実現できるかどうかは、私達の子どもや未来の世代に懸かっています。また、水不足の解消は貴重な資源の確保だけでなく、より困難な問題の解決をも意味します。水へのアクセスはMENA地域では厄介な問題で、数々の地域紛争の火種のひとつにもなっているのです。

水不足がもたらす紛争や脆弱性の問題は、形ばかりの取り組みだけでは解消されません。そして持続可能な未来は、平和と協力、包摂性という土台がなければ実現できないのです。革新的で持続可能かつ測定可能な解決策をいくつか考案して水不足の問題に挑まない限り、SDGsが目指す「誰一人取り残さない」未来を築くことはできないでしょう。

私達が暮らすMENA地域によりよい未来が訪れるように、一人ひとりができることを行動に移してこの取り組みに貢献していきましょう。企業であれば、革新的な水処理技術の開発を支援したり、同じ目標を持つ団体と連携したりして、革新的かつ測定可能で採算が取れる解決策の実現に貢献できるでしょう。シンクタンクであれば、各国間で連携して、共同研究を実施したり、支援を募ったり、世界に向けて啓発活動を推進したりできます。個人としても、エアコンの排水を植物の水やりや床の掃除などに再利用することから始められます。

水1滴がとても大切であり、一致協力した取り組みでその1滴を大事に扱っていかなければならない。そのことはぜひ心に留めておいてください。この問題に消極的になったとしたら、その犠牲となるのは人類すべてであり、母なる大地です。人間の体の約6割は水でできています。私達自身を救うために、今こそ行動を起こしましょう。

この記事は2019年3月28日世界経済フォーラム「中東で深刻化しつつある水不足問題、その有効な解決策のひとつとは」より転載しました。 

健康な地球で、みんなが平等に平和に生きる。

2030年に、それを実現するための目標がSDGs(持続可能な開発目標)です。
ハフポスト「はじめてのSDGs 」では、日本をはじめ世界中の問題や取り組みを紹介。

私たちに何ができるんだろう... みんなで一緒に考えてみませんか?