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2019年06月20日 11時55分 JST | 更新 2019年06月20日 13時04分 JST

長友佑都が語る、理想の子育てと“日本男児像”のアップデート「イクメンという言葉ができること自体が問題」

「長友ドリーム」と名付けたプロジェクトを、6月20日に発表する長友佑都。約10年に渡る海外生活で変化した、新たな“日本男児”の理想像とは?

時事通信社
トルコリーグで優勝を果たし、トロフィーを持ちながら喜びの表情を浮かべる長友佑都選手

サッカー日本代表DF・長友佑都、32歳。

2018-19シーズンは長年プレーしてきたイタリアを離れ、トルコのガラタサライに移籍。移籍1年目からチームに貢献する活躍を見せ、リーグ制覇を成し遂げた。

一方、最近では実業家としてビジネスの世界にも進出するなど活動領域は広がり、6月20日には「長友ドリーム」と名付けたプロジェクトを発表する

そんな忙しい日々の中、長友選手は子育てにも積極的に関わっていることで知られる。

かつてはステレオタイプな“日本男児”像を持っていた彼に、約10年の海外生活はどんな変化をもたらしたのか?ハフポストは長友選手に単独インタビューし、思いを聞いた。

KAZUHIRO SEKINE HuffPost Japan
ハフポスト日本版のインタビューに応じるサッカー日本代表DF・長友佑都選手

トルコは「本当に愛にあふれた国」

イタリアからトルコに渡って約1年。

トルコでの生活について聞くと、長友選手からは絶賛の声が返ってきた。

トルコ、大好きになりました。まず温かいんです、人が。

家族に対しての思いがすごく強い国なので、子育てをしていても皆が助けてくれるんですよね。

本当に愛にあふれる国だという印象でした。

現在は妻と2018年2月に誕生した子どもと共に生活する中、子育て環境については、早くもトルコと日本の違いを感じているという。

トルコは、どこのお店でも子連れで入れるんですよ。

これが日本の場合、結構「子連れはダメ」っていうところが多かったりして、レストラン1つにしても行くのは結構大変だと思うんですけど、トルコは、僕の中ではそういった経験がほとんどないので、快適に過ごせています。

あとは、環境というよりも、やっぱり“人の温かさ”ですね。

例えば、子どもが泣いていたとしても、トルコでは他人があやしてくれたり、手を差しのべてくれる。

この温かさは、これまで感じたことがないくらいです。私はプレーをする側なので詳しくは分からないですけど、妻は、「子連れでもすごくスタジアムでサッカーが観戦しやすい」と言っていますね。

時事通信社
トルコリーグ優勝の喜びを、長友選手は息子と共にピッチで味わった

「イクメン」って言葉ができること自体が問題

長友選手は5月12日、『母の日』に寄せたツイートで、「子育て環境をもっとよくしたいな。自分に出来ることがあれば行動に移したい」と意欲を見せ、さらに「海外にきて、自分の男としての概念が変わった」と綴っていた

トルコと日本の子育てを比べた時、日本に足りないものとは何なのか?長友選手は、このように語る。

まず、根本的に愛が足りてないと感じます。

イタリアやトルコでもう10年近く住んでいますけど、海外の国においての家族への愛情とか熱量は、やっぱり違うなと思います。

そもそも愛が環境を作ると思うし、根本的な愛がないと子育てを含めていい環境って作れないと感じます。そこを、日本は変えていかないといけないと思います。

周囲の環境や一緒にプレーする仲間が自分の考えを変えてくれました。

彼らの生活、本当に愛情にあふれる姿を見て、「自分の考えは凝り固まっていた。間違っていたんだな」と思いました。

そもそも、日本には「イクメン」って言葉がありますけど、海外にはないですからね。その言葉ができること自体が、まず問題だと僕は思っています。

別に男の人が子育てするのは普通のことじゃないですか?海外では少なくとも普通ですから…。

それが日本では、子育てをしていたら「イクメン」という言葉が出てきちゃう。違和感は感じますね。

海外で生活することで、自らが抱いてきた理想の“日本男児像”も変わったという。

昔は、“男はバリバリ働いて家族のために働く”というのが理想だと思っていました。

もちろんそれは大事なことなんだけど、でも今は、子育ても含めて“一緒に家庭を作っていく”ことが理想の日本男児だと思うし、この視点がすごく大事だなと感じています。

共にプレーをする周囲の選手たちの姿を見て、自分自身の意識もアップデートされていきました。

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ハフポスト日本版のインタビューに応じるサッカー日本代表DF・長友佑都選手

副業は、自らの柱の数を増やしていくこと

サッカー選手として第一線で活躍しながら、同時にビジネスの世界にも活動の幅を広げる長友選手。

サッカースクールの運営をはじめ、2016年にはヘルスケアや健康的な食事を提案する事業会社『Cuore』を設立した。

企業における副業が次第に解禁されつつあるなど、日本の働き方が徐々に変化している現状を歓迎した上で、長友選手は自らの考えをこう語る。

大賛成ですよ。本当に色んなことにチャレンジした方がいい。

ただもちろんそれが、自分がやっている一番大事な結果を残さなきゃいけない仕事に影響が出るのであれば、それはちょっと違うかなとも思います。

でも、少しでも本業にプラスになるのであれば、色んな分野で挑戦をするべきだと思うし、僕自身は、色んなことにチャレンジすることで実際にサッカーに活きているので、それは自信を持って言えますね。

人それぞれだから「これがいい」とちゃんとした答えを出すことは、僕にはできないですけど、ただ、1つの自分の強みを作ることは大事なことだと思います。

まずは軸となる柱がきちんとあって、その上で柱の数を増やしていくようなイメージですね。

すると、一本の柱が倒れたとしても、他の柱が支えてくれる。

もちろん、1つのことだけ極めていくのも素晴らしいことではあるんだけど、僕の考えとしては、色んな柱を自分に建てていきたいなって思いますね。

例えばサッカーでいえば、体幹にプラスして走力をあげるとか技術をあげるとか、メンタルのレベルをあげるとか、色んな柱を作れば、体幹という柱がもし崩れたとしても、カバーすることができるし、必ずいつかどこかで活きてくると信じています。

時事通信社
6月5日、長友選手は国際親善試合として行われたトリニダード・トバゴ戦でキャップ数が117となり歴代3位となった。更なる記録更新に向け、意欲を見せている(写真はアジアカップ)

長友選手が若い世代に伝えたい事とは...?

サッカー界では、18歳のMF久保建英選手(現・FC東京)が日本代表に選ばれるなど、若い選手の台頭が目立ってきた。

今後、若い世代が活躍する社会になっていく中、長友選手が彼らに伝えたいことは、自らの経験に基づくシンプルなものだった。

とにかく、世界を見て欲しいなと思います。早く海外に出て欲しい。

僕も世界に出て、自分の常識が覆される経験を沢山してきました。

海外で色んな世界を知って、色んな人と接することで、自分の意識レベルもアップデートされる。

それを日本に還元していくことができれば、日本ももっと活性化していくと思っています。

プロ入りする前、明治大学のサッカー部に所属していた長友選手には、試合に出られずスタンドで太鼓を叩いて応援していた時期があった。そこから飛躍し、世界の舞台で躍動するまでに至るまで、何を大切にしてきたのだろうか。

夢を持って行動することだと思います。

とにかく大きな夢を抱いて、どんどん挑戦すること。

(スタンドで太鼓を叩いていた)あの当時のところから考えると、今の自分は想像できなかったですね。「想像を超えた世界まで来たな」という実感はあります。

それと、「失敗してもいいからとにかく行動しよう」という考えですね。この考えがあるから、ビジネスの世界にも飛び込んでいけたのだと思います。

最後に、情報に溢れる今の社会で生きるための自らの考えを聞かせてくれた。

今の時代は情報が溢れているからこそ、逆に勇気を持って世界に飛び込んでいけるんだと思います。

例えば、知らないところにいくのは、情報がなければとても怖いこと。

でも今はネットを開けばこれだけの情報があるのだから、しっかりと自分の頭の中に“ナビ”を描けるはず。そのナビがあれば、怖くないじゃないですか?

だから、ネットで情報を知るところで終わらないで、そこから更にリアルを求めて、どんどん外の世界に出てみて欲しいと思っています。

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長友選手は、夢を持って行動することの大切さを語った

(文・編集:小笠原  遥  @ogaharu _421