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2019年06月27日 07時38分 JST | 更新 2019年06月27日 07時38分 JST

G20大阪サミット、安倍首相の“外交手腕“を交渉のプロが読み解くと…

安倍首相がG20で達成すべき仕事は2つ、その成否を分けるカギは...

トランプ大統領:EPA=時事、安倍首相:時事通信社
トランプ大統領(左)と安倍首相(右)

安倍首相が持っている“切り札”

6月28、29日と2日間にわたって開催されるG20大阪サミット。外務省が「日本が主催する国際会議としては史上最大規模」と称し、期間中は約500人体制で対応するという。先日、首脳会談を終えたばかりの米国、そして、中国、ロシアをはじめとしたメンバー国に加え、招待国・国際機関を含めると37ヶ国の要人が一堂に会し、世界経済、貿易・投資、気候・エネルギー、開発、デジタル、テロ対策、雇用、移民・難民問題等が議題として取りざたされている。

かつてない規模のサミットにおいて、安倍首相は議長国のリーダーとして手腕を発揮することを国民から期待されているだろう。また、安倍首相には“モリカケ問題”をはじめ、最近では老後2000万円不足問題などが持ち上がっている。提出された内閣不信任案は否決となったが、増税に対する不安からか依然として内閣支持率は下落の傾向にある。

世界のGDP総計8割以上を占めるG20の国々は、世界の経済成長と繁栄を担うべく世界中の注目を集めているだろう。

そこで私は、安倍首相の交渉チームの一員となったつもりで、考えてみた。

議長国としての存在感を存分にアピールするため、安倍首相は4月、5月でどんな切り札を手に入れたか?

先に行われた日米首脳会談の報道等から推測するに、安倍首相は聞き上手であることがわかる。自己中心的なコミュニケーションを図りがちなトランプ大統領にとって、自分の言い分に関心を示し、話を遮ることなく存分に聞いてくれる存在は貴重であろう。

ゴルフ場でみせたあの笑顔に代表されるように、安倍首相にトランプ大統領が心を許している様子がうかがえる。かつて、途中で電話を切られてしまったオーストラリアのモリソン首相や、4月11日に行われた米韓首脳会談がたった2分で終わったと報じられた韓国ムン大統領、さらには国境に壁を築こうとしているメキシコや関係が悪化している中国。加えて、イランとの国交をみれば、各国の首脳とトランプ大統領のコミュニケーションは円滑であるとは言えない。

G20において、アピールすべきことは何か

その一方で、4月、5月の日米首脳会談は表面的には極めて順調に推移していることから安倍首相の聞き上手は功を奏しているともいえるだろう。一部の報道では、安倍首相の外交手法を“おもてなし外交”とか、トランプ大統領を手懐けた“猛獣使い外交”などと評しているが、交渉術的観点で言えば、「相手の目的を把握する」というゴールを定め、点ではなく線で交渉を考えていたと分析することができる。

安倍首相はこの外交手腕によって、イランや中国のように「アメリカ側が交渉を求める国」に対しても、また「アメリカと友好関係を築きたい国」にも影響力を示すことができた。これは日本にとって大きな切り札を手に入れたといえるだろう。

この切り札をもって臨むG20において、安倍首相は何をアピールすべきか。

例えば、ごく簡単に言えばG20 における首脳宣言は、全会一致でなければ文言を変更できない。

2018年に開催されたブエノスアイレス・サミットでは、2017年の首脳宣言にあった「不公正な貿易慣行を含む保護主義と引き続き闘う」という文言がアメリカの反対によって盛り込めなかったことは記憶に新しいだろう。ブエノスアイレス・サミットは、アメリカ主導で議論が進められたことが、閉幕後の報道でも見て取れた。

今回のサミットで、こうした「揉め事」をおこさずに首脳宣言できれば、参加国の合意(全会一致)を図ることに貢献し、これまで得てきた外交手腕への信頼もより真実味のあるものだと示すことができるかもしれない。

現在、安倍首相はブエノスアイレス・サミットでイニシアチブをとったアメリカ大統領との関係は良好であるし、議長国の首相でもある。議長国として成功裏に収めるには、先の首脳会談で手に入れたカードを使うべきだろうか。

いや、私は使わなくとも新しいカードを手に入れることもできるのではないかと考えている。

私は政治の専門家ではないから政治的側面について詳細に言及することは避けるが、交渉術の観点から2つのポイントがあると考える。

一つ目は、G20における議論すべてにおいて、リーダーシップを発揮するよりも、狙いを定めて「主導権を握ること」の重要性である。例えば、拙著『交渉の武器』でも述べたように三方一両損の精神(ステークホルダーが若干の身を切る覚悟)は非常に重要である。お互いに損をしたと思う交渉こそ良い交渉だとアメリカでは言われている。

G20は議論の場であるが、参加国それぞれが創造的な議論の場であったと思えるようにしつらえたい。いうまでもないがG20としての「全体最適」(全会一致)と各国の部分最適を見据えていることが重要であるが、有能なスタッフがすでに万全の準備を進めているだろう。

そして、もう一つは議長国(ホスト)として、すべての参加国の首脳陣と関係を築いているかを「視覚的」にも見せていくことだ。レセプションや休憩時間はとかく仲の良いもの同士が集いやすいが、あえてホストとしての気配りが万全であることをアピールするためには「視覚的」にも意識して、その場にいる他者(他国)にも伝えたい。そして、すべての参加国と良い関係を築いていると報道を通じて視覚的にも印象付けていきたい。

勝敗を決める一手はどこに?

開催が目前となった今、政治的には盤石な体制が築かれているように見える。前回のコラムでも伝えた通り、自分のリソースを知っている者こそがビジネスでは最強である。

さらに、アメリカの無人機を撃墜したイランに対し報復攻撃を見送ったが、追加制裁も伝えられ、依然として緊張感は解けないままであるし、貿易に関しては各国とアメリカとの関係も良好とは言い難い状況である。一部報道ではアメリカ側(トランプ大統領)には日米同盟の解消の意向があるとささやかれている。

こうした国内外ともに厳しい状況下で、安倍首相がいかにこれまでどおりの自然体で、猛獣使いとして、あるいはおもてなし外交のプロフェッショナルとして、G20に臨めるかも勝敗を決める一手になるだろう。真実は行動にある。