沖縄の大学生が『コンプレックス大百科』で伝えたいこと。「自分を認められるように…」

コンプレックスとの距離には正解がないという意味で、どんな距離であっても全て正解。
コンプレックス大百科の製作者、松田和幸さん(右)とTGすこ太さん(左)
コンプレックス大百科の製作者、松田和幸さん(右)とTGすこ太さん(左)
コンプレックス大百科提供

お金がない、自分の髪の毛が嫌い、あごが出ている…。

そうした数々のコンプレックスを、赤裸々に語る人々に出会えるメディアがある。ブログメディア「note」で連載中の「コンプレックス大百科」だ。

「どんな人生にも価値があるーー」というコンセプトを掲げ、さまざまな人にコンプレックスをテーマに取材し、記事を掲載している。

企画・運営をしているのは琉球大学に通う大学4年生、松田和幸さんとTGすこ太さんの2人。

なぜ、コンプレックスをテーマにしたメディアを始めようと思ったのか?

さまざまな人のコンプレックスに触れて、彼らの世界がどう変わったのか?

話を聞いた。

コンプレックス大百科のTOP画面
コンプレックス大百科のTOP画面

自分が嫌い。すべてはそこから始まった

松田和幸さん(以下、松田):僕は、5、6歳くらいのときから自分が嫌いでした。両親がいつもお金のことで喧嘩するのを見ていたから、自分がいなければ、経済的にもっと楽になって、オカンもオトンも幸せになるんじゃないかと思って…。そうやって自分で自分の存在を否定してきた経験は、僕にとってとても悲しいものとして残っています。

自分を好きになれたら、自分を傷つけずに済むのはわかっているのに、それができない。きっとそんな思いを抱えているのは僕だけではないはずなので、同じような人たちに役に立つような何かをしたい、誰もがその人生を肯定されるようなものを作って、それで自分を好きになってもらえたらと考えた結果が、コンプレックス大百科でした。

TGすこ太さん(以下、すこ太):僕がよく行くコワーキングスペースで松田くんがアルバイトをしていて、4年前くらいから松田くんとは知り合いだったけれど、2018年の夏くらいに「こんなアイデアがある」とコンプレックス大百科の元になるような話を打ち明けられました。ちょうどその頃、僕は就職をどうしようと思い悩んでいたり、失恋をしたりしたタイミングで「自分には何にもないな」と感じてしまっていた。だからとてもいいアイデアだと思って、一緒にやることにしたんです。

松田:2ヶ月くらいの準備期間を経て、2018年10月に「コンプレックス大百科」をスタートしました。ちなみに第1回、「自分の笑顔がブサイク」の回は、すこ太くんが自分のコンプレックスについて語っているんですよ。ほかにも「夢を持てない」「友達ができない」「人の目を気にしすぎる」などいろいろなコンプレックスを持つ人に話を聞いています。登場する人のほとんどは、知人、友人。はっきりと役割分担を決めているわけではありませんが、文章や最後のチェックは僕、松田が、写真とSNSまわりはそれらが得意なすこ太くんが担当するという感じで進めています。

すこ太:現在2人とも就職活動中で忙しいこともあって、更新は月に1度くらいのペースです。

コンプレックス大百科提供

いろいろな人の話を通して見えてきたもの。コンプレックスの正体は?

松田:コンプレックスの正体は、「無い物ねだり」と「自己否定」なのではないかと考えています。人と自分を比べたときに見える違いを、自己否定的に見てしまうからコンプレックスというものが発生するんだろうなと、いろいろな人のコンプレックスを聞きながら思いました。

すこ太:「無いものねだり」と「自己否定」って言葉がいいと思ったのでそのまま使わせていただきます(笑)。

コンプレックス大百科の取材を通して分かったことの一つに、コンプレックスって“劣っていることそのもの”ではなく、「(人と比べられるなどして)劣っているという(何かしらの経験からくる)自己認識」だなと。自分は、何かしらの能力値みたいなものがマイナスだと思い込んでしまうことで生まれるんじゃないかと思うんです。

だから、「これって別にマイナスじゃない(プラスでもないかもしれないけど)んだ」と気づけたら、その瞬間にコンプレックスが解消された。という人は多いみたいです。

そうは言っても、僕もコンプレックスはたくさんありますし、人と比べちゃだめだと思ってもやっぱり難しいところはあります。

TGすこ太さん
TGすこ太さん
コンプレックス大百科提供

2人のコンプレックスと、その距離の話

松田:僕は、先ほどもお話しした通り、自分が嫌いという思いがずっとありました。ほかにも、親の言うことをよく聞いていて褒められていた兄と比べ、自分は母に反抗していて、喧嘩ばっかりしていたから、言うことを聞けない自分は親に必要とされない感覚も抱いていた。昔からガリガリで、ジャイアンみたいな同級生や先輩にいじめられた経験もあります。

でも、僕としては大学3年の時に「乗り越えた」という感覚あって。きっかけが、彼女ができたことです。それまでは、僕の心の中に、ネガティブな思いやすごい怒りがあった。親に対する怒り、自分が自分であることへの怒り。そういうものを打ち明けると、そんな怒りもネガティブな気持ちも彼女は認めてくれた。

今は、コンプレックスで苦しんだ経験がある自分が好きだと思えるようになりました。そして、こんな自分を好きでいてくれる人、頼ってくれる人がいてくれる。そのおかげで、より自分を好きになれた。だから、コンプレックスとは親友くらいの距離感です。

ただ、これは僕のコンプレックスとの距離。コンプレックスとの距離には正解がないという意味で、どんな距離であっても全て正解というのが、コンプレックス大百科をやるようになった今の気持ちです。どんな距離感だろうとそれが今の自分にとってのベストなので、全部正解でいいんじゃないかと。

余談ですが、自分の状態や状況によって変わっていく距離感を楽しむというのは、人生の楽しみの一つになりうるかもしれないなと思っています。

すこ太:僕は自分の容姿と根暗な性格にコンプレックスがあります。容姿に関しては前ほどは気にすることはなくなりました。

だって、人ってすごく適当だなと思うようになったから。ヒゲを生やしていた時期は「剃った方がいい」という人もいれば、「めっちゃクールじゃ」という人もいたし、クラブに行くと人気者になったりもした。思いっきり髪型を変えると、「似合う」という人もいれば、「前の方がいい」という人もいるんですよ。人間って適当だなと思ったら、気にしてても仕方ないなと思うようになったりました。

それでも自分の見た目について話題が振られたり指摘されたりすると嫌です。

根暗な性格は、明るい友達——松田くんもそうなんですが——すごいポジティブな言葉をかけてくる友達を見ると、「ネガティブでごめんなさい…うぅ」と思います。

自分を好きになれなくても、嫌いにならない程度の距離を上手く取れるといいなとは思いますが、僕の場合は乗り越えたというよりも、コンプレックス大百科で取材をするようになって、気にしすぎないようにしようと考えられるようになりました。

松田:僕は東京で就職するつもりですが、すこ太くんは沖縄を拠点にするか迷っている。離れた場所で働き始めたら、生活サイクルも違くなるだろうし、コンプレックス大百科をどうやって続けていこうかと思うこともあります。でも、東京に出たり、社会人になったりと生活する場所や社会的な立場が変わることで新たなコンプレックスが出てくるかもしれない。今は友人、知人を中心に取材をしているけれど、もっと年齢層も広げて、いろいろな人のコンプレックスを聞きたいという思いもあります。だから、僕はこれからも、コンプレックス大百科を続けていくつもりです。

すこ太:たしかに僕は生活の拠点を東京にするか、沖縄にするか迷っています。でもたとえ、沖縄に拠点を置いたとしても月に一度は東京に行きたいと思っているので、コンプレックス大百科は続けていきたいと思います。

松田:考えてみたら、たしかに、一緒にいなくてもできることなんですよ。日本各地、世界各地に書く人がいて、それぞれの場所でコンプレックスについて取材をして記事を作って、「コンプレックス大百科」という場所に掲載するというのもおもしろい。もしコンプレックス大百科で記事を書きたいという方がいらっしゃれば、お気軽にご連絡ください。

今のところ謝礼を出すことはできないですが…。でもいずれは謝礼をお支払いできるように頑張っていきたいと思っています。現在の形をさらに進化させた「コンプレックス大百科」をこれからも作っていきたいと思っています。

※2人が作っている「コンプレックス大百科」はハフポスト日本版で転載予定になっています。どうぞお楽しみに。

コンプレックスとの向き合い方は人それぞれ。
乗り越えようとする人。
コンプレックスを突きつけられるような場所、人から逃げる人。
自分の一部として「愛そう」と努力する人。
お金を使って「解決」する人…。

それぞれの人がコンプレックスとちょうどいい距離感を築けたなら…。そんな願いを込めて、「コンプレックスと私の距離」という企画をはじめます。

ぜひ、皆さんの「コンプレックスとの距離」を教えてください。

現在、ハフポスト日本版では「コンプレックス」にまつわるアンケートを実施中です。ご協力お願いします。

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