ビジネスが作る未来
2019年08月07日 07時30分 JST

自分らしい服装でいた方が、何倍も力を発揮できる。「#KuToo」から探る働き方改革

パンプス着用がルールになっていたドコモでは、スニーカー着用もOKに。化粧品会社オルビスの取り組みも取材しました。

オルビス提供

職場でのヒール着用を強制しないでほしいーー。好きな靴を履いて働くことを求める「#KuToo」のムーブメントが、大きな話題になった 。 

ヒール靴の着用は、特に航空会社で働くキャビンアテンダントや販売員などに、制服の着用基準などで定められているケースが多い。

たとえば、日本航空(JAL)では2020年に刷新する新制服で初めてCAの制服にパンツスタイルを導入するが、着用規定ではヒール靴の高さ3cm〜4cm、幅4cm程度と定められている。 

一方で、より「働きやすい」服装改革を進めている会社も増えている。

ドコモはスニーカー着用もOKに

NTTドコモは、8月1日からドコモショップ店員の服装規定を改定。

これまで女性にはヒール3.5〜6.5cmのパンプス、男性には革靴の着用を定めていたが、スニーカーなどその他の靴も着用できるようにするという。シンプルなデザインなどのルールはあるが、立ち仕事も多い販売員の働きやすさを追求したかたちだ。

NTTドコモの広報担当者によると、パンプスの着用を「廃止」するわけではなく、パンプスを履きたいスタッフはこれまで通り着用できるという。

広報担当者は、「これまでも、年末年始の連続休暇などドコモショップ定員の働き方改革を進めており、服装規定についても見直しをしていました。より働きやすい環境にするため、前倒しで服装規定の改定に至りました」と話す。

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化粧品会社オルビスでは...

「身だしなみ」が重視される化粧品業界でも、服装から風通しの良い職場環境を作ろうとしている会社がある。その一つが、スキンケア化粧品などを開発・販売するオルビス株式会社だ。

「#KuToo」の署名運動を受け、ハフポストで情報提供を募っていたところ、取材協力に名乗りを上げてくれた。

同社で働く販売員は、ヒールのないバレエシューズも着用可能で、本社勤務のスタッフは原則服装が自由。いまだ多くの企業では、デニム着用NG、襟なしの服はNGなどのルールがあるが、オルビス本社では自由な服装でいることを促進しているという。

オルビス提供
今夏にリニューアルしたというオルビスの販売スタッフの制服。リラックスした雰囲気が特徴的だ。
オルビス提供
オルビスの販売スタッフの足元。ヒールなしのバレエシューズを着用している。

風通しの良い環境を作るため、2018年1月に小林琢磨さんが同社の代表取締役社長に就任した直後には、全従業員に自由な服装で出社するように伝えるメールが一斉送信されたという。

小林さんは、ハフポスト日本版の取材に対し、「選択の自由があるということが大事」だと話す。

「女性の場合はパンプスを履いている人がやっぱり多かったんですが、『自由でいいよ』と発信してみると、男性も女性もスニーカー着用の人は増えました。これだけ増えるということは、そんなに好んで履いていたんじゃないんだな、とも思います。ただ、要は『選択の自由』があることの方が大事ですから。好きでパンプスや革靴を履いたり、スーツを着ているならいいんです。『絶対にカジュアルな服装で来てね』ということでもないんですよね」

「これから、毎日会社に来て仕事をするという価値観も変わってくるとは思いますが、今は基本的にスタッフが毎日会社に来て仕事をしてくれています。それを週5でやっているので、日常の大部分を会社や仕事で過ごしていることになる。その日常の中で力を発揮してもらうことを考えた時に、やっぱりいつもの自分らしい状態でいた方が、何倍も力や能力を発揮できると思うんです」

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オルビス代表取締役社長の小林琢磨さん

一方で、美容・ファッション業界などでは「身だしなみ」や「統一感」を重視する風潮もある。

小林さんは、「接客の主役はお客様なので、どういうお客様に支持してほしいかという経営的な視点も必要」だとも話す。

「接客業であれば、そのブランドをどういう価値観を持った人に支持してほしいか、ということを考えなければならないですよね。接客をする人は制服を着るべきという考えがあってもいいし、僕はそれを否定したくありません。ブランドが発しているメッセージや価値観が、お客様の価値観にマッチすることが大事で、それがお客様とブランド双方の幸せにつながっていくと思います」

オルビスは、2018年8月に新たなブランドメッセージ「ここちを美しく。」を打ち出し、主力商品だったエイジングスキンケア「ORBIS U(オルビスユー)」シリーズを全面刷新した。

「ここちを美しく。」というメッセージには、「十分に頑張っている女性に対し、更に『頑張れ』と鼓舞するのではなく、ふと肩の力が抜け、明日への活力につながる充足を感じられる先進性のあるここちよさ」を届けたいという思いがあるという。

事あるごとに「女性活躍」や「女性が輝く社会」などの言葉が取りざたされる日本。現代を生きる女性たちが共感を覚えるのは、このような優しいメッセージかもしれない。

「『もっと輝きましょう、もっと活躍しましょう』というメッセージじゃなくて、心地よくいてもらう時間や空間をサポートする方がよほど大切。そういう思いを込めてます」と小林さんは言う。

「化粧品メーカーの社長である僕がこれを言うのがなかなか微妙な部分がありますけれども(笑)、たとえば、『5万円のクリームを買っていただくよりも、ストレスをなくした方が全然お肌にはいいんじゃないですか?』とかですね...。もちろん高級品を否定するのではなく、1番自分らしいと感じる価値感で会社も社員もブランドもお客様も繋がっていけるといいなと。 本当に美しくなるために必要なのは『美しくならなきゃ』という強迫観念ではないと思うので、別のアプローチで選択肢と価値観を打ち出していきたいと思っています」