あの人のことば
2019年08月09日 15時09分 JST

ちゃんみなさん、どうしてそんなに「強い女」でいられるんですか?

ちゃんみなさんにとって、生まれて初めての大きな「痛み」は、小学校時代のいじめの経験だった。

Junichi Shibuya / HuffPost Japan

「ミレニアル世代のカリスマ」と評される歌手・ラッパーのちゃんみなさん。その理由の一つは、媚びずに自分の色を出していく強さが、若い女性たちの熱狂的な支持を集めていることだ。

高校3年生でのデビューから、作詞作曲だけでなくトラック制作、ダンスの振り付けも全てセルフプロデュース。堂々としたパフォーマンスには自信が漲り、MCでは集まったファンたちを「夢に向かって進んでほしい」と勇気づける。

背景にあるのは、幼い頃から日本・韓国・アメリカを行き来し3カ国の文化を自分のものにしてきたこと。その一方で、いじめを受けたことなど、過去の「痛み」を糧にして音楽に打ち込んできたことなのだという。

よく「強い女」って言われるんですよね。でも、「強い」なんて自分で言ったことはない。歌詞でも「私は弱い」って言ってることの方が多いと思うんですよ。

それでも、周囲がそういうイメージを持っているんだとしたら、それを作り出してる元って、私の弱さだったりネガティブなものだと思うんですよ。それが「PAIN IS BEAUTY」で書いたことで。

 

Junichi Shibuya / HuffPost Japan

節目になった曲ばかりを収録したという新しいアルバム「Never Grow Up」(8月7日発売)に収録されている曲の一つが「PAIN IS BEAUTY」。書いたのは二十歳になる直前だった。

昔の悲しい経験、つらかった経験、死にたいと思った経験、それがあったからこそ、今、音楽ができている。そんな思いを込めたという。

Junichi Shibuya / HuffPost Japan

 今は「ルーツを誇りに思う」

ちゃんみなさんにとって、生まれて初めての大きな「痛み」は、小学校時代のいじめの経験だった。

母親が韓国人、父親が日本人のちゃんみなさんは、7歳までは韓国やアメリカ・サンフランシスコで暮らしていた。日本の小学校に入学したが、日本語が不得意なことを理由にいじめられた。暴力を振るわれたり、ランドセルを水に落とされたりと、そのいじめは残酷なものだった。

友達にもなっていない子に「絶交だよ」と言われたこともあった。しかし、それよりも辛かったのは、その日本語の意味がわからずに父親に聞いてしまったことだという。

「絶交ってどういう意味?」ってお父さんに聞いたんですけど、答えてくれなかったんですよ。傷つくかもしれないから。でも、その後で調べてその意味を知りました。お父さんに気を遣わせてしまったこと、いじめられているってバレてしまったこと、すべてが怖くて、嫌でしたね。

Shibuya Junichi / HuffPost Japan

同じアルバムに収録されている「I’m a Pop」で、ちゃんみなさんは初の三カ国語での歌唱に挑んだ。 

その中には、韓国語での「狂いそうでしょ ジェラシー 私よくディスられるのよ」「この才能もうちのママのおかげ」という反骨心をむき出しにしながらもルーツを誇る歌詞や、自分や自分の音楽を勝手にカテゴライズするなという痛烈なメッセージが含まれている。「Pop」ではなくむしろ攻撃的だ。 

昔はルーツを隠したいと思うこともありました。でも、今は「羨ましい」なんて言われたりもする。全然、変わりましたよね。私は自分のルーツをすごく誇りに思っているんです。

いじめに屈せず、それをはねのけて自分だけの世界を貫いて来られたのは、音楽という没入できる別の世界が常にそばにあったからだった。

私の家にはピアノがあって、バレリーナのお母さんがいて、音楽に触れる時間が長かった。音楽をしている時って言語とか関係ないじゃないですか。だから余計好きになったのもあります。

通い始めたダンス教室でも、先生の日本語はわからなくても動きで真似ができるし、褒めてくれる。

音楽やダンスって、寄り添えるし、受け入れてくれるし、素晴らしく自由な、何をしてもいいんだっていう感じ。そういうところがあって打ち込んでいきました。

 

枠にはめられることへの憤り

幼年期から歌手デビューを夢見てきたちゃんみなさんは2016年に放送された『BAZOOKA!!! 高校生ラップ選手権』(BSスカパー!)での強烈な印象で世間の注目を集め「JKラッパー」として人気を博した。そして同時期に歌手としてデビュー。

K-POPを中心に、クラシックやバレエ音楽、ポップスも含めて、様々な音楽を幼い頃から身体に取り込んできた。抜群のリズム感覚を持ち、メロディの流れも独特。音楽業界に驚きを持って受け止められた。 

Junichi Shibuya / HuffPost Japan

しかし、「自由」だったはずの音楽で、世間からは思わぬバッシングや反応にさらされた。「死にたい」と思ったのもその頃だったという。 

デビューしてから「これはヒップホップじゃない、ポップスだ」って言われたり、でも人によっては「これはヒップホップだ」。「えっ、何なの?」って。

どんなに否定されても、そんなに枠を限定される音楽を私はやりたくない。ヒップホップって元々ルールが嫌いな人たちが始めたものじゃないの?って思うし、音楽にはルールなんてないはず。 

「こうであるべきだ」とか「ああすべき」とか、そういうことを言われるのが腹立たしいなって思って、それで「I’m a Pop」ができました。

「人は移動した距離分の想像力がある」って言っていた人がいたんですよ。私も想像力が人よりあると思うし、よく考え込んじゃう。それは日本・韓国・アメリカをすごく移動してきたからなのかなって思えるようになったんです。

2019年3月に行われた初の東阪ワンマンライブツアー「THE PRINCESS PROJECT 3」。ゴージャスな衣装でダンサーと生バンドを従えて現れたちゃんみなさんのステージは、ダイナミックなダンスとともに歌われた曲から、エモーショナルなピアノの弾き語りまで、その音楽性の幅の広さを見せつけた。

 

「良いって言ってくれる人の方を信じたい」

3月29日のZeppTokyo。アンコールでラフなTシャツに着替えたちゃんみなさんは「小学校の恩師の『夢をあきらめないでほしい』という言葉があったからここまで来れた」と語り、「みんなも夢を持って」と繰り返し率直なメッセージを発した。

すると、ある観客の女性が「夢あるよ!ちゃんみなと同じステージに立ちたい!」と叫んだ。「待ってるよ」と応じたちゃんみなさんは、「次のワンマンまで、自分の夢に少しでも近付くこと、約束して」と、さらに観客たちに呼びかけた。

一歩踏み出すことに躊躇する人々の背中を優しく、力強く押すような時間だった。 

Junichi Shibuya / HuffPost Japan

同世代の子たちからは、「やりたいことが見つからない」「人の目が気になる」って本当によく聞くんですよ。「太ももが太い」とか「顔が大きい」とか見た目のコンプレックスのことも。

でもコンプレックスなんて、みんなあると思う。

人より色々言われる立場に来た自分が思ったのは、「それがいい」って言ってくれる人が「変だ」って言う人と同じぐらいたくさんいたってことです。だから、私はそれが良いって言ってくれる人の方を信じたい。

そして、目標がある人とない人の差ってすごく大きいんだなって感じることが多くなってきました。だから、せめて私の曲に耳を傾けてくれた人たちの手は離したくない。

今の日本には悪いところもいっぱいあると思うけど、不満を言うだけじゃなくて行動に移せば、時代って動くと思うんですよ。若い世代、私の世代が目標を持って動けば、世界を動かせるんだよって。そういう力がみんなにある。だから失敗を恐れず闘ってほしいなってことを伝えたいんです。

それが、私が信用しているスタッフの人たちがずっと私に言ってくれていることだから、絶対に正しいと思うんです。

どうしてそんなに「強い女」でいられるんですか?

その答えは、痛みを糧に辛い経験を乗り越えたこと、それに加えて、自分や周囲の人々を信じる力の強さにあるのかもしれない。

Junichi Shibuya / HuffPost Japan