ビジネスが作る未来
2019年09月25日 07時27分 JST | 更新 2019年09月26日 12時22分 JST

天気の話を手放して、印象に残る会話をはじめられるビジネスパーソンになろう

印象的な会話を始めるコツは「やや遠い世界のストーリー」を共有すること。

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東京もうだるような暑さが終わり、秋の気配が感じられるようになってきた。

アメリカにいるときは、互いの近況をキャッチアップすることから会話が滑り出すが、日本のお客様をおたずねするときは、こんな風に天気の話から始めることが多いと感じる。みなさんは普段、どんな挨拶を交わしているのだろうか。

政治や宗教の話は、日本のビジネスシーンにおいてなるべく避けたほうが無難であると聞いたことがある。政治や宗教の話題に触れることもあるし、一見、ビジネスに関係ないように感じるであろうスポーツの話題もする。天気などの当たり障りのない話よりも、人となりを知ることができる。

天気の話で人となりを知る、あるいは自分を知ってもらうこともできないことはないだろうが、…つまらない。

会話の冒頭から、印象に残るビジネスパーソンであることも一計である。

発明品や美術品が会話を弾ませる

ある日のこと、お客様のところを訪ねると社長室に通された。そこはまるで博物館のようにエジソンの蓄音機ような価値ある発明品や西洋のアンティークが所狭しと並べられていた。

大学で日本の歴史を学んだほど古美術の好きな私は、社長のコレクションに魅了され、あれこれと質問攻めにしてしまった。

美術品、発明品の美しさに心を温めてもらうと同時に、社長とも打ち解けることができて仕事の話も滑らかに進んだ。

私はふと、自分自身も会議室に浮世絵や古地図を飾っていたことに気づいた。

いずれも、オフィスの所在地にちなんだものである。

こうした美術品や価値ある発明品がお客様との会話のきっかけとなり、楽しく会話を弾ませることもしばしばあった。

そしてふと思うのだ。

…お客様と言葉を交わしながら、様々な表情を垣間見ることができるのは、美術品を目の前にしているからではないだろうか、と。

ちょっと遠い存在がいい 

前述の通り、私は大学で日本の歴史を修めたほど、歴史を感じさせるものが好きだ。

古美術や古い道具を手にすると心が躍る。タバコポーチや古銭、浮世絵に甲冑…これを使っていた人は、いったいどんな人だったのだろう。

その人の暮らしぶりや心持ちを想像する。甲冑であれば、戦へ臨むその人のプライドや緊張感。タバコポーチに似たベルトバッグはテキサスにもあるが、似たような暮らしをしていたのだろうかと人物を思い描いて楽しんでいる。

古美術も古道具も言葉を話さないが、それらから伝わってくるストーリーの壮大さ、奥深さが私たちを圧倒するのだろうか。ともに鑑賞した者同士、どこかにつながりを感じ、知らぬ間に連帯感が生まれてしまうから不思議だ。

もう一つ不思議なのが、あまり自分とは直接、近い関係にない古美術に惹かれてしまうということ。先ほど話したお客様しかり、私もそうだが魅了されているのは自国の古美術や古道具ではなく仕事等のかかわりのある場所のものだ。

これは私の実感であってエビデンスのあることではないが、幼少期に祖父母の家にあったものは当然のごとく身近であるけれど、他国のモノなどは、遠い存在である分だけミステリアスで、想像力を掻き立てられるのかもしれない。

作品を前に自然と会話が弾んでしまう。しかも、ビジネス上は繊細に扱う必要がある政治や宗教の話も、古美術であれば時代を遡ることになるため、やや遠い世界の話として語ることができるのは都合がよい。

自由を手に入れて、思い込みを手放す

「古美術や古道具のコレクション?…庶民感覚とは程遠い話だ」

ここまでの話を読みながら、そう思った方もいらっしゃるのではないだろうか。

ビジネスの場で「芸術鑑賞はできるビジネスパーソンのたしなみ」「国際社会において教養は重要である」なんて言われたら、なんとなく拒否感を抱いてしまう人もいるだろう。

それはどこか「やらされている感」が伴うからではないだろうか。

一方ビジネスを離れても、美術館や博物館にいけば、その多くで鑑賞ルートを決められ、自分の好きなように鑑賞できないこともどこか堅苦しさを感じるかもしれない。

しかし本来、芸術鑑賞とは自らの心のあり様を感じる時間ではないだろうか。

さらに言うと美術鑑賞でもハードルが高いのに、古美術なんて言ったら、とても高価なもので、自分には無関係だという思い込みを持っている人もいるように感じる。

しかし、正直を申し上げて、私の大好きな古地図は2万円だ。浮世絵も数千円のものから一般に販売されていて金額に関係なく非常に心揺さぶられる作品も多い。好きなものを手に入れるという行為には、何よりもそれを見つけ出す楽しみが伴うのだ。

そして古美術商などに赴いて、自分の目当てのモノを探す時間は実に自由である。自分の目当てのモノを主人と歴史やそのものに関しての会話も存分に楽しむことだってできる。

 一枚の絵や一つの作品を通じて自らを知る。ともに鑑賞するならば、実物がそこにあるだけで今までとは違う会話が広がる楽しみがある。

天気の話をそろそろ手放して、新たな会話の糸口をみつけてみないか。

(編集:榊原すずみ @_suzumi_s