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2019年08月26日 05時30分 JST | 更新 2019年08月26日 09時51分 JST

ハイタッチして「ハッピープライド!」🌈中四国でレインボーパレードが初めて開かれた日はこんな1日だった

把握していた参加予定者の数を大きく上回り、当日参加者やスタッフを含め200人近くが街を歩きました。

8月25日、中国・四国地方で初めてのレインボーパレードが香川県丸亀市で開催された。  

Huffpost japan/Jun Tsuboike
丸亀レインボーパレード

事前の登録者やスタッフ、そして当日の飛び入り参加者らを含めて約200人が性の多様性を示す虹色のフラッグを手に沿道を歩いた。

一見すれば地方で開かれたイベントの一つに過ぎないかもしれないが、東京や大阪ではなく、中四国の小さな街でこのパレードが開催できた意義は大きかった。

午後2時、当日飛び入りで想定の倍以上の参加者が

開始予定時刻の午後2時になると、スタート地点の通町商店街にはずらりと長い列ができていた。

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スタート地点の通町商店街に集まった参加者たち=香川県丸亀市、2019年8月25日

参加者は顔に虹のペイントをしたり、フラッグを手にしたり。横断幕や「ありのままの私を世界に発信します」「ひとつでも多くの選択肢がある未来を」などと書かれたプラカードを掲げる人もいた。

「地元では歩きにくい」「家族や職場にバレたくない」と、地方のレインボーパレードは当事者が集まりにくい背景もある。

しかしこの日は、事前の参加申請者が約60人だったのに対し、当日の飛び入り参加が新たに100人以上来るなど盛り上がりを見せた。

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丸亀レインボーパレードで虹色の旗を振る参加者=香川県丸亀市、2019年8月25日

スタート地点の近くを自転車で通った年配の男性は「ここは何をしているの」と記者を呼び止めた。

説明を聞くと「お祭りのイベントで何かしているのかと思ったが、すごい盛り上がっていて気になった。議員や市長がいることにも目が行ったけど、丸亀にも同性愛の人たちがいるんだと思った。あまり知らなかった。明るいねえ」と話していた。

香川県ではこれまで、性的マイノリティを扱った映画を上映する「香川レインボー映画祭」を14年間開催してきたが、街中で多くの人がレインボーフラッグを掲げたり、沿道で同性愛や同性婚について語り合ったりする姿を目にすることはなかった。

参加者たちは通町商店街から、丸亀城に向かう数百メートルの道のりを「ハッピープライド!」と声を掛けながら歩いていた。

道の途中には、パレードの代表をする藍川逸美さんに「丸亀でパレードをしないか」と持ち掛けた地元の丸亀商工会の矢野秀典さんの姿もあった。

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虹色のTシャツを着た矢野さん(左)に沿道で声を掛けられたパレード代表の藍川逸美さん=香川県丸亀市、2019年8月25日

矢野さんはパレードに合わせてレインボーのTシャツを着て、感極まる藍川さんに「きょうのために用意したよ」と笑いかけていた。

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写真に納まる矢野さん(左)と藍川さん(中央)=香川県丸亀市、2019年8月25日

中四国で初めての開催となった丸亀レインボーパレードが実現したのは息の長い地道な活動が県内で続いていたからに他ならない。

藤田博美さんらが始めた「プラウド香川」では、1990年代半ばから性的マイノリティのコミュニティ活動をしてきた。レインボー映画祭の立ち上げも、藤田さんらが主導して毎年の活動につなげている。

また、現在は三豊市の田中昭全さんと川田有希さんが、同性カップルにも異性カップルと同じように結婚の自由が保障されるよう、国を相手取った「同性婚訴訟」の原告として名を連ねている。

2016年には、体は女性で生まれたが性自認は男性である谷昂頼さんと福井瑞穂さんが「あしたプロジェクト」を立ち上げた。

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あしたプロジェクトを立ち上げた福井瑞穂さん(左)と谷昂頼さん

プロジェクトでは教育や行政の現場でLGBTを含む多様な生き方について研修やパンフレットによる啓発活動を続けている。

小学2年生の息子と中学1年生の娘と高松市から来た女性は「きょうはもともと別の予定もあったのですが、娘に聞いたらこちらに参加したいというので、弟も一緒に来ました」と笑顔を見せた。

娘が小学6年生だったとき、あしたプロジェクトの講演が学校であったという。そこで話を聞いたことが、今日のパレードに参加するきっかけになったのだ。

遠方からの参加者もいた。宮城県仙台市から来た大学生は「今年の東京レインボープライドを、参加者ではなく沿道から見ていた。当事者として後ろめたさがあったけど、すごく明るい気分になれた」と話す。

パレードを見たことがきっかけで自分でも活動したいと思うようになり、「せんだいレインボーDay」にスタッフとして参加。大学でもジェンダーサークルが発足し、Twitter運用なども務めている。

「出身の東京ではまだオープンなほうだが、比べると東北は閉じていて、地方ではそういうところがある。そんななかでも明るく生きられたらいいなと思い、夏休みを利用して来てしまいました」と明るく語っていた。

1人で全部を背負いこまなくていい。助けてくれる存在にも気が付いて

当日は、午前10時から香川のLGBTシーンをけん引するメンバーらのトークイベントも開かれていた。

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パレードに先だって開かれたトークイベント。左から「結婚の自由をすべての人に訴訟」の原告である田中昭全さんと川田有希さん、「プラウド香川」代表の藤田博美さん、副代表の高野晶さん、「あしたプロジェクト」の谷昂頼さん

イベントでは、プラウド香川やあしたプロジェクト、そして同性婚訴訟など、香川県を含む地方のこれまでの動きを振り返った。

パレード代表の藍川さんは、以前付き合っていた彼女の親から言われた記憶に残る一言について「『いつかちゃんと結婚して、子どもを』など、遠回しに『みっともない』と見られることがあった」と言葉を詰まらせる場面も。

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パレードの代表を務める藍川逸美さん

そして「法律婚ができれば、もっと堂々としていられたのに、と思いました」と述べ、2019年2月に全国で始まった同性婚訴訟についても語りあった。

エステティシャンとして働くトランスジェンダーの高野晶さんは、今の職場に転職するときに、高松市のハローワークで「何か問題があったらいけないので」と対応をしてもらえなかった経験を語った。

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「プラウド香川」の副代表を務める高野晶さん

「ハローワークの窓口では最初『面接でご自身で説明してもらえたら大丈夫です』と言われていたのに、上司に理解が無かったみたいで、その後にいきなり対応されなくなった。県外の方や市議から掛け合ってもらい、高松市長にメールができた。そこから対応を変えてくれた」という。

「窓口や担当者が変わればまた戻ってしまうかもしれない。そうならないようにしたい」と語る高野さん。プラウド香川の副代表を務めながら、理解を促進するための講演活動も続けている。

パレードスタッフのすずかさんは、2019年3月に卒業した高校で、在学中に男女別に分かれている制服を変更したという。

「一人で全部やらなきゃいけないと思っていた」というすずかさん。

「クラスの人たちに知識を持ってもらうために、スピーチの授業で話してみたり、学校であしたプロジェクトのはなめがねさんに講演してもらったり。でもその時、意外と手を伸ばせば助けてくれるんだと思った」と驚いたという。

そして「でも、手を伸ばすまで助けてくれるなんて思わなかったし、助けてくれるんだって思えるようになるためには、こういうパレードはすごく大切」と語っていた。

パートナーシップ制度が反対された市内でのパレード。中四国の状況は変わるのか

約1時間の道のりを終え、午後3時過ぎにパレードは丸亀城前に到着した。

参加者たちは互いにハイタッチしあい、笑顔で写真に納まった。

藍川さんは、周りを見渡すと「まさか当日の参加者がこんなに多くなるとは思わなかった」と一言。「言葉で表せないぐらいうれしい」と目を細めた。

パレードは、性的マイノリティの当事者や、その支援者が「ここにいるよ」ということを示す手段の一つでもある。

丸亀でパレードを開いたことについて「社会で声を出さなければ居なかったことになる社会を変えたい。本当は、声を出さなくてもそこにいることが分かり、平等であってほしい。でも社会はまだそこまでになっていない。だから今回みたいなパレードで、まずは周知したい。知ってもらいたい」と語った。

パレードが開かれた丸亀市では、2017年ごろからLGBTへの理解を広げようとポスターを作成して学校や企業に配布している。

同性カップルを結婚に相当する関係と認める「パートナー」として、婚姻届と同等と証明する「パートナーシップ制度」の導入をしている自治体や、当事者団体との意見交換を重ね、2018年4月からパートナーシップ制度の導入を目指して準備を進めていた。

だが2018年に入り、市議会の反対多数により導入に至らなかった。

このパレード開催を機に、もう一度パートナーシップ制度の導入に向け働きかけたいという目的もある。

パレードのために駅前の商店街に集まった参加者の中には、丸亀市の梶正治市長の姿もあった。

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参加者にレインボーの蝶ネクタイをつけられパレードのスタート地点で写真を撮る丸亀市の梶市長=香川県丸亀市、2019年8月25日

梶市長は「こうしたパレードが市内で開かれるのは大変良いことだと思う。市を挙げて支援をしていきたいが、制度が通らなかったのはこうした啓発が足りてなかった面もある」と振り返った。

続けて「当たり前のことだと思っていたら、市議会では当たり前のことじゃなかった。みんな同じ人間で、つらいとかつらくないとかは関係なく、同性同士でも異性同士でも、同じように制度が整っていないこと自体がおかしいと思う」と話した。

今後は、導入が検討されている県内の三豊市などの動きに沿いつつ、再検討の機会をうかがうという。

中四国の自治体では、これまでパートナーシップ制度の導入が無かったが、2019年4月、岡山県総社市が初めて制度を開始した。2019年度中に検討をしている自治体もあり、今後の広がりが期待されている。