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2019年08月26日 12時16分 JST | 更新 2019年08月26日 12時16分 JST

令和最初の夏、彼のいない夏

この1年を振り返ると、アウティング事件が起こった一橋大学でも、同性愛の理解に向けて前向きな動きが見られた。

一橋大学アウティング事件

をご存知だろうか?

もう4年も前のことになったので、もしかしたら知らない方もいるかもしれないので、簡単に説明すると、

一橋大学法科大学院において同性愛の恋愛感情を告白した相手による暴露(アウティング)をきっかけとして、2015年8月にゲイの学生が一橋大学の校舎から投身自殺したとされる事件

であり、その後遺族がアウティングをした同級生及び適切な対応を取らなかった一橋大学に対し裁判を起こしている

(同級生とは和解が成立したが、一橋大学側とは現在も裁判が続いている)

私はこれまで、毎年、「顔も名前も知らない彼」に向けて、ブログを書いてきた。

2016年8月

“レズビアン”の私から、顔も名前も知らない“ゲイ”の彼へ。

2017年8月

彼が亡くなって2年。また、彼のいない夏が来る。

2018年8月

今年もまた、彼のいない夏が過ぎてゆく

 「顔も名前も知らない彼」のために、私が毎年こうやってブログを書くのは、

 「もしかしたら彼は私だったかもしれない」(=私も彼のように死を選んだかもしれない)

 と心から思うからだし、

 幸運にも今日まで生き残っている同性愛者の1人として、

 「二度と彼のような死を遂げる人がいないように頑張らないといけない

 と使命感のようなものを(勝手ながら)感じるからかもしれない。

BalkansCat via Getty Images
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この1年間で、この事件に関して1つ大きな動きがあった。

 彼が在籍していた一橋大学で、プライドフォーラムというプログラムが発表された。

一橋大アウティング事件から4年。LGBTQ当事者を支援する「プライドフォーラム」が同大でスタート

彼はもういないけれど、彼が学んだ場所が、少しでも「LGBTQ当事者の学生や教職員が、安心・安全に過ごす」事が出来るようになったら嬉しい。

 また、もう一つ大きな出来事があった。

日本で初めて「すべての人の結婚の自由」を求める裁判が始まった。

分かりやすく言い換えると、同性愛者やトランスジェンダーなど、これまで結婚したくても出来なかった人たちが、結婚する権利を求めて国を提訴したのだ。

結婚の自由をすべての人に

#結婚の自由をすべての人に

 

Kim Rogerson via Getty Images
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彼が亡くなってから1年と少し、

そして彼の死が報道されてから少し経った頃に、私が地元・名古屋で始めた「名古屋あおぞら部」も、もうすぐ丸3年が経つ。

 名古屋あおぞら部は、LGBT当事者やLGBTかもしれない若者を対象にしており、主に愛知県内外に住む高校生・大学生が参加している。

この3年間で累計参加者数は750人を超え、本当に色んな若者と出会うことが出来た。

希望する性別の制服での登校が認められず、進学する学校を変えざるを得なくなってしまった学生。 

LGBT当事者であることなどから学校やクラスメイトに馴染めず、不登校になった経歴がある若者。

名古屋あおぞら部の会場に着くなり、「人生で初めて自分以外のLGBT当事者に出会えた」と喜び安心し、大粒の涙を流した学生。

「初めて他者に自分がLGBT当事者だと名乗ることが出来た」と喜ぶ若者。

学校の保健体育のテストで、同性愛者であるにも関わらず、教科書通り「思春期になると異性に恋をする」と回答させられた学生。

地元で知らないうちに自身のセクシュアリティが噂され、地元に帰れなくなっている若者。

 これだけ、LGBTに関する報道が増え、パートナーシップ制度などさまざまな取り組みを行う自治体が増えた現在でも、このような若者に出会う機会は残念ながら依然として多くある。

 不登校、引きこもり、リストカット、自殺未遂など、LGBT当事者やLGBTかもしれない若者と関わっていると、こうした辛い状況にいる若者と出会う確率が高いことは、事実だ。

 一方で、若い世代・新しい世代の希望を感じることも多々ある。

校内でLGBTに関する講演を開催してくれるように、生徒たちで学校側に掛け合った学生

「生徒たちに何かできることはないだろうか?」と悩んで相談してくださった学校の先生

全生徒が集まる集会で、LGBTに関する話をしたいと動いた高校生たち

「当社でも何か取り組みを行うように上と掛け合いますね!」と連絡をくださった、大手企業の人事担当者の方

授業の一環であるグループ研究の課題で、「LGBTをテーマに調べて発表したい!」と提案して、私の元へ取材に来てくれた高校生・大学生たち

stock-eye via Getty Images
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もう二度と、彼のような死を遂げる人がいないように

そのために、

私に何が出来ているのだろう、

私にはもっと何が出来るのだろう

そう自問自答しながら、「彼のいない」令和最初の夏を過ごしている。
2019年8月24日noteより転載)