保育無償化分で、園庭のない保育園にお砂場セットを寄付した話

10月から始まる幼児教育・保育の無償化。「浮いた分を別のところに」と新設園に寄付しました。日中の長時間を保育園で過ごす子どもたちが楽しく遊び、成長してくれますように。

夫婦共働き、息子はいま4歳の保育園児です。

10月から幼稚園や認定こども園の教育費、保育所の保育料が一部、無償になります。感謝と同時に、「この浮いた分を別のところに」と思い、私は、無償化分を、新設保育園に寄付しました。寄付金は、室内で遊べるお砂場セットに変身しました。日中の長時間を保育園で過ごす子どもたちが、めいっぱい楽しく遊び、成長してくれると良いなと思います。1人でも、2人でも、共感して一歩踏み出してくれる方がいることを願って、経緯を書きます。

保育格差を解消したい

息子は1、2歳の2年間、隣の隣の区の認証園に通い、やっと昨年3歳4月に認可保育園への転園が叶った。第一希望の広々とした園庭がある、歴史ある認可だった。

3年間のいわゆる“保活”を通して、新旧様々な認可、認可外保育園を見てきた。同じ認可でも、園庭の有無、保育士配置の手厚さや専門性、玩具や絵本の充実度など、保育内容の振り幅は大きい。どこに入園できるか運次第で、子どもが過ごす環境にこんなにも差が出てしまうのはおかしい。急ピッチで新設を進めた杉並区は2018年、2019年4月に2年連続待機児童ゼロ(もちろん潜在待機児童はいる)になり、息子もそのおかげで転園できたのだが、有難い気持ちと同時に、保育格差が広がる現状へのやるせない気持ちが降り積もっていった。

息子が認可に転園した1年後の4月に、道を挟んでお向かいに新設の認可保育園ができることになった。いま息子が通っている認可は区内屈指の充実した園庭を誇る。だが、新設園に園庭はない。開園前は、工事が進んでいく様子を眺めては、春からここに通う親子は毎日この保育格差を目の当たりにして何を思うのだろうと考えるとたまらなかった。

そんな心配をよそに、いざ完成してみると、穏やかな色調と大きな窓で中まで光が届く、素敵な場所にそこは見えた。帰りの電車でその新設園に通う親子に会うようになり、子どもは毎日保育園が楽しいみたいと様子なども教えてもらった。園庭はないけれど、良い園なんだということが、だんだんとわかってきた。園のHPものぞいてみる。「子どもの自由な遊びを尊重する自由保育」心惹かれる理念だった。

無償化分を寄付したい

息子がたった1年誕生日が遅ければ、この新設の認可園にお世話になっていたかもしれない(どこにも入園できなかった可能性だってあった。実際に今年も3歳で認可転園できず、隣の区への通園3年目のご近所の知り合いがいる)。既存の保育園を運営しながら新設園の初期投資費用を捻出するのは保育事業者にとっても大変な努力を要する。そんな中で新設に手を挙げてくれることは本当にありがたい。

そうした感謝の気持ちを、何か形にできないか…と考え、この新設園に、10月から保育料が無償化になる分を寄付したい。寄付金を子どもたちの玩具や絵本などに使ってもらって、ここに通う子どもたちの遊びを応援することで、保育事業者にもエールを送りたい。

まずは、寄付金を受け取ってほしいということ、そして、その保育園で何が喜ばれるかは子どもたちを見ている保育士さんたちが1番理解しているから、寄付金の用途は園に決めてほしいという意向を伝えた。最終的に、寄付金は、室内で遊べるお砂場セットになった。

「地域で子ども育てる」今後へ

寄付をさせてもらったご縁で、園内を見学させていただいた。自然光がたっぷり差し込む構造になっていた。クライミングの壁もあって、狭いスペースでも手足を使って遊べる。小さなロフトは子どもたちに大人気だそうで。最初はただただ気がかりな存在だったのだが、この園に出会えて良かったなと思えた。

夏祭りなど行事にお誘いいただく。せっかくご縁がありつながったこの関係を今後も大切にしていきたいと思う。

子どもたちみんなが等しく保育園生活を楽しく過ごせるように、ご家庭ごとの事情に応じてできる範囲で構わない。ここまで読んでくださった方々にも、無償化分の一部で保育園への応援を検討して、ぜひ一歩踏み出してみてほしいと願う。

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最後に、息子に伝えたこと

寄付の件は息子にも説明した。

「パパとママは、○○くん(息子)に保育園でたくさん遊んで楽しんでほしいんだ。○○くんの保育園にはたくさんの玩具があるよね。でも、○○くんの保育園じゃない保育園に通う子どもたちにも、同じようにたくさん楽しんでほしいんだ。だから、他の新しい保育園に玩具をプレゼントすることにしたよ。他の保育園の子どもたちも楽しんでくれたら、嬉しいよね」。

じっと目を見て真剣に聞いて、「うん」としっかり頷いてくれた。彼なりに理解してくれたみたい。息子が大人になる頃には、私たちの世代が保活で奮闘した歴史は風化していると良い。

(2019年8月28日 noteより転載)